編集長インタビュー

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編集委員長 藤代 一成 奥富 正敏
このテキストは、手短にいうとどんな本でしょう? ポイントは何ですか?

藤代:一言で言うと、コンピュータグラフィックス(以下CG)や画像処理を初めて学ぶ人に向けた入門書です。従来、「CG」と「画像処理」は独立したものとして扱われていて、それぞれ別個に入門書が出ていました。それらを、視覚に関する情報をコンピュータで処理する『ビジュアル情報処理』という視点で統合して、一冊の本で扱っているところが特徴です。CGと画像処理の関係について冒頭のチャプター(以下 章)などでしっかり解説しながら、それぞれについてわかりやすく説明しています。


CGと画像処理の内容を一冊に盛り込んだメリットとは何なのでしょう?

藤代:画像処理とCGは密接な関係にあります。画像処理は、人間の視覚情報処理にたとえれば、外界のシーンを取り込んで理解する「目」、CGはイラストなどを描いて他者に伝える「手」だといえるんですが、人間は両者をうまく連動させて、視覚的な判断やコミュニケーションを行っているわけです。コンピュータも同じで、より高度な処理をさせようと思ったら、手と目の働きをするプログラムがばらばらにつくられていてはだめなんです。


CGと画像処理の関係について、もう少し詳しくお話いただけますか?

藤代:人間の知的な活動というのは必ず帰納と演繹、解析と合成という2つの面を持っています。たとえば自動車のエンジン。他社製品を分解して設計のポイントを探りますよね、それが今お話している「画像処理」です。一方、実際に目標とする高度なスペックを満たすようなエンジンを設計する、これが「CG」です。両者は表裏一体の関係といえます。


CGと画像処理は両方を学ばなければならないでしょうか?

奥富:このテキストはCGと画像処理の内容を合わせて盛り込んでいますが、この2つは目的が違う行為ですから、もう一方をそれほど深く学ぶ必要はないと思います。しかし非常に似て見える分野ですし、基盤となる考え方とか理論はかなり共通している部分もあります。勉強の最初の段階で、両方を紹介したテキストがあって、両方の関連をつけながら、その後の指針にしていくということは、新しい試みでたいへん大きい意味があると思います。


テキストの構成上のポイントを教えてください。

奥富:CGと画像処理を共通の視点から解説しているこの本に特徴的な内容として、第1章の「ディジタルカメラモデル」というものがあります。ディジタルカメラの撮影の手順を通して、人間がどういう仕組みで実際に「像」を得ているかを説明しています。これは同時に、CG分野から見れば実際のカメラによる撮影過程をコンピュータを使ってシミュレーションしているという意味があります。一方、画像処理にとっては、その処理の対象としている画像が、どういう過程を経て生成されるかを理解したり、その過程をモデル化することによって逆に像からどのような情報が取得できるかということを理解するのにも役立つと思います。


内容の点でユニークなものはありますか?

藤代:第1章の「ディジタルカメラモデル」は、内容の点からも特徴的ですが、ヒアリングの際にも、こういうものが欲しかったと、多くの方に言っていただきました。

奥富:第2章は「画像の濃淡変換とフィルタリング処理」という内容ですが、Photoshopのヒストグラムやトーンカーブの説明、さまざまなフィルタの裏側で行われている処理や理論について解説しています。技術系で画像処理ソフトウェアの開発を志す方はもちろん、クリエイターの方が読まれても、勘や経験だけに頼らないソフトウェアの習熟に役立つと思いますよ。


編集上の特徴や工夫を教えてください。

奥富:親しみやすくわかりやすくするために、いくつかの工夫をしています。全編フルカラーであること、図版がたいへん多いこと、私たちが傍注と呼んでいる、本文脇の広い余白スペースでの注釈にいくつもの重要な役割を負わせているところ、などです。傍注の役割には、たとえば、本文中で説明するとややこしくなる補足的な説明や数式の説明をするとか、関連する技術の説明箇所へのポインター(参照)をつけるなどがあります。また画像処理やCGは様々な応用分野で独自に発展してきたので、用語の不統一がありますが、それに対する注釈も行っています。細かいことですけれども、こういったことの積み重ねが、この本ならではのわかりやすさ、使いやすさにつながっていると思います。


入門書ということですが、CGや画像処理を初めて学ぶ学生以外にも利用できますか?

藤代:CGと画像処理の2つについて関連を示しながら、平易に記述されているので、たとえばCGの勉強をしていた人が、画像処理も少しのぞいてみたいと思ったとき、いきなり難しい本を読まずに入門編である『ビジュアル情報処理』の画像処理に関係する章からスタートするというブリッジ的な使い方もできます。また、コンテンツクリエイターが、自分が表現したいものをどのように表現したらいいか、どういう技法があるかを調べる事典的な使い方もできるでしょう。マルチメディア教育を目指す方にとっても、必要最低限の事項は書いてあると思います。


入門書としてこのテキストを使うことで何が変わりますか?

藤代:より高度なことをやろうと思えば、周辺領域に対しても広く見識を持ちながら、より深く勉強を続けていくという態度が非常に重要だと思います。その意味では、CGと画像処理を共通の視点から説明した、この『ビジュアル情報処理』を皮切りに、CGと画像処理、両方の技術に目を向けたエンジニアが育っていって欲しい。これからさまざまなサイバーワールドを切り拓いていかなくてはならない若い世代のなかから、合成技術(CG)と解析技術(画像処理)の双方に長けている、そういう新しいポテンシャルを持った人たちが、たくさん生まれてくることを期待したいと思っています。