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2018年に設立され、世代を超え人々の心に残る作品作りを目指し、3DCGアニメーションで世界に挑戦する、モンスターズエッグ株式会社
今回は、制作進行スタッフにCG-ARTSのCGクリエイター検定の受験を推奨している同社に、取締役COO 奈良岡智哉氏、制作デスク 高山明人氏、制作進行 菅原駿氏にご受験いただき、受験された感想、気になる問題、制作進行が受験する意味、業界を目指す方へのメッセージなどをインタビューしました。

MONSTER'S EGG
取締役COO 奈良岡智哉氏
制作デスク 高山明人氏
制作進行 菅原駿氏

ー ご経歴と現在の仕事について教えてください。

奈良岡智哉氏(以下、奈良岡):モンスターズエッグ株式会社で取締役COOとして、全体のマネジメントやプロデュースを担当しています。 以前は他のアニメ系CGスタジオでプロデューサーやチームの部長を務めており、その後モンスターズエッグに参加しました。21歳からずっとアニメ会社にいるので、この業界には20年ちょっといることになりますね。

高山明人氏(以下、高山):私は制作デスクをしています。制作進行スタッフのサポートや、案件をまたいだ調整をしており、現在の担当は7本です。いまは制作進行スタッフと一緒に、クリエイターのスケジュール管理や、全体の進捗管理なども担当しています。

前職では、映像制作、写真撮影、インディーズアーティストの音響の仕事など、いろいろな経験をしていました。でも新型コロナウィルスの影響で、音楽系のイベントができなくなり仕事が激減…、就職先を探すことになりました。どうしてもクリエイティブな仕事に携わりたい!という気持ちが強かったので、そういう仕事を探していて、この会社にご縁をいただきました。39歳で入社し、今は入社1年目です!

奈良岡:即戦力で、ほんとうに素晴らしい出会いでした。

菅原駿氏(以下、菅原):私は制作進行をしています。スケジュール管理、取引先との受発注のやり取りの部分も含めて、さまざまな調整を行っています。入社2年目になります。前職では飛行機のエンジンを作っていました。

ー えっ!飛行機のですか!?

菅原:はい。飛行機のエンジンを作っている工場で、4年ほどエンジニアとして働いていました。小さいころからゲームやアニメが好きだったのもあり、その時はCGの知識もありませんでしたが、未経験可とのことで思い切ってこの会社に応募しました。

奈良岡:アニメ業界が大変だといわれている中で、わざわざ来てくれる転職組、大好きです(笑)。

ー 制作進行のやりがいを教えてください。

高山:私は、制作期間を自分で設定して、自分の段取り通りに流れていくのを見るのが好きなんです。スケジュールが迫ってきてみんなの目が変わる瞬間が面白いと思っています。ほんとは切羽詰まってはいけないですが(笑)。段取りに終わりはないです。

菅原:大変な時期を乗り越えみんなで1つのものを完成させる。完成したものをみると喜びが感じられます。

ー この企画を受けてくださったときの感想をお聞かせください。

奈良岡:ぼくが制作進行に検定の受験をすすめている理由は、クリエイターがどのように仕事をしているのか知って、現場に寄り添えるようになってほしいからです。あと、他社さんが制作進行に受験させていると聞いて、それは良い!うちでもやってみようと思いました。
ちなみに今回は二回目の受験になります。悲しいことに、一回目は全員落ちてしまい…。だから今回は、私と代表も受けることにして、社員の気持ちを引き締める作戦にしました。
受験当日は緊張しました!だって私が落ちるわけにはいかないですからね(笑)。代表は試験日に都合が合わなくて受験を断念したのですが、しっかり事前に公式問題集を解いて勉強していましたよ。

高山: CGに関して分からないことがたくさんあったし、奈良岡さんがおっしゃるように、クリエイターと接する上で、ある程度知識がないといけないなと思っていました。会社から受験のことを聞いた時は、これを機に勉強できる!いい機会だな、と思いましたね。

菅原:この話の流れで言い出しにくいのですが、実は昨年受験して落ちた組でして…。今回は受かるよね?というプレッシャーも感じつつ、今回はリベンジのつもりで受験しました!

ー 試験会場の雰囲気はどうでしたか?

奈良岡:思ったよりたくさんの方が会場にいました。ものすごい人数が受験されてるんですね。CG業界を志す方がたくさんいると分かり、嬉しくなりました!

高山:学生さんが多かった印象です。学校で団体受験している方も多いのかな?緊張感のある雰囲気で、気持ちが引き締まりました。

菅原:会場に行って試験を受けたのは、学生ぶりの経験でした。たしかに気持ちが引き締まりましたね。

実際の受験風景(左から菅原さん、奈良岡さん、高山さん)
受験会場で試験を終えた奈良岡さん、菅原さん

 

ー それではいよいよ試験結果の発表です。
皆さん事前に合否結果はわかっていると思いますが、今回は点数も発表します。
まず合否ですが、皆さん合格です。おめでとうございます!
そして点数ですが、100点満点中、奈良岡さんが90.0点で1位でした。高山さん、菅原さんは82.5点で、同率2位でした。

奈良岡:満点を取る意気込みだったので、思ったより点数が低かった!

何を間違えたかな?第3問aですね!鏡面反射光って、いまのソフトウェアではあまり使われないですよね?そういうのも戸惑う原因になるのかな。これ正解は「ア」だったんですね。

※クリックして拡大

高山:私の場合、鏡面反射光はスペキュラーって勉強したので、単純にスペキュラーの色のみ変更されている「ア」と、素直に答えられました。

奈良岡:ああそうか。ぼくは“金属的な質感に近づける”というワードに引っ張られて、考えすぎてしまったかも。あとは、第5問bも間違えてしまいました。

ー 被写体を追いかけることを何というか?という問題ですね。

奈良岡:正解はパンだと思いましたが、パンの選択がないから、ティルトにしちゃいました。悔しい!

※クリックして拡大

高山:正解はフォローですね。フォローって、アニメ業界だと実写映像とは違う作り方をします。実写映像では、被写体をカメラで追いかけることを指すので、パンでもトラッキングでも、キャラクタを追っていればフォローといいますよね。一方、アニメ業界では、被写体もカメラも動かさず、背景画だけをスライドさせて表現することを指すことが多いので、この問題はずっとアニメ業界にいる方は混乱するのではないかと思います。私は実写映像業界にいたことがあるので正解できました!

ー 業界をまたがると、カメラワークの指示の名前が違う。問題制作で気をつけないといけませんね。参考になります。他にご感想や、面白かった問題などはありますか?

奈良岡:著作権の問題は、映像制作の仕事をしていくうえでは、とても大切ですよね。ここを間違えるわけにいかなかったから、全部正解して良かったです!パブリックドメインの問題とか重要ですよね。一方、分かりにくい問題もちらほらありました。もう現場で使われていない概念は出題しなくていいかなと…。間違えたので言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが、Blenderを使っている人が鏡面反射光とか意識しているのかな?とか。マテリアルの作り方の概念がそもそも変わってきていますよね。たとえばフォンシェーディングとか、今のCGやっている人はあまり知らないだろうなぁ。

高山:受験する方によって目的が違うと思いますが、私は、どういう段取り・工数でCGができているのか?ってところをもっと知りたいという気持ちがありました。CGの基礎に加えて、そういった部分をもう少しテキストブックや問題にも加えてもらえると良いなと思いました。

菅原:私は総合的に勉強できてよかったという意見です。クリエイターとのミーティングに参加していても、話が分かって聞けるようになってきました。

ー 教科書の改訂の時期に、ご意見参考にさせていただきます。
それでは、受験までの学習について教えてください。

菅原:私は一週間前くらいから勉強を始めました。公式問題集を解いて、わからない単語は教科書やWebで調べて、一問ずつかみ砕いて理解していきました。勉強時間は1日1時間くらいです。トータルだと7、8時間になると思います。

高山:テキストブック(『ディジタル映像表現』)を見てみたところ、単語がよくわからなかったので、まずは公式問題集を解きました。カメラのことはもともと知っていたのもあり、問題集を何回分か解いたところ、これならいけそうだ!という自信があったので、あまり勉強はしなかったです(笑)。

奈良岡:私も、問題集を見て多分大丈夫と思ったから勉強しなかったです。でも意外と間違えが多かったので…、これから受験される方は並行して教科書を見ながら勉強したほうがいいですよ!

ー 受験してよかったことを教えてください。

菅原:CGを知るひとつのきっかけになりましたし、自分の知識を確認できました。今後クリエイターへの理解がさらに深まると思うし、クリエイター同士の話にも入っていきやすくなると思います。

高山:業界で求められるCGの知識の基準が知れました。自分の知っている知識、知らない知識が明確になったのが良かったと思います。

奈良岡:これからも社員に受験させていきたいです。検定の内容もみんなで進化させていきましょう!

ー 最後に業界を目指す方へアドバイスをお願いします!

高山:制作も進行も、信念や意欲がある人じゃないと続かないし、それがある人は続きます。自分は作る側ではなくお願いする側ですが、私の中にも作りたいものや、出したいクオリティがあります。信念や意欲がある人は、最初は技術がなくても成長していくと思います。

菅原:この業界に入る方はもともとアニメやゲームが好きな方だと思うので、自分の夢を叶えるためにもしっかり学んで、業界を盛り上げていく人たちになっていってほしいです。日々ツールが進化していくので、より良いものを作るためにアンテナを張って、広げて、吸収していってほしいと思います。

奈良岡:まず目標を定め、目標を達成するために勉強してほしいですね。
学生さんを見ていると、自分の憧れのクリエイター達が、どのように制作しているのか知らない・調べてない人が多いように思います。先輩クリエイター達が研鑽の末編み出したノウハウを、様々な場所で公開しています。数学の問題を解くためには、まず公式を覚えますよね。クリエイティブの技術にも同様に技術の公式があるので、これらをうまく活用して、ディレクター・プロデューサークラスの人ほど、勉強しています。ぼくだってつまらないことでつまずきたくないので、わからないことはすぐに調べます。いいものをつくるために、勉強をしてください。

今回は、CG制作現場に携わるプロにCGクリエイター検定を受験いただき、現場で求められている知識やレベルについて、制作管理の視点から貴重なご意見をいただくことができました。クリエイティブな現場でより広く検定・教材をご活用いただけるように、今後も体系的な知識を網羅できるように、内容をアップデートし続けて参りたいと思います。

今回取材にご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。

聞き手:篠原たかこ テキスト:宮内舞 カメラ:小澤賢侍