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繰り返し学び続ける

ー 受験してよかったことや、気づいたことがあれば教えてください。

磯野:勉強不足だったので、厳しい問題もありましたが、直前の猛勉強のおかげで何とか合格ができて、よかったです。

須藤:自分の知らない範囲があったことに気づけてよかったです。

奥田:検定受験は、小学校、中学校で基礎教科を学ぶのと同じことなんじゃないかな。物理を知らなくても生活はできるけれど、でも知っていればいつか何かの役に立つ。そんな風に思いました。

杉山:知らないことが意外に多かったです。でも、新しいことを覚えるのは楽しいですね。この業界は、新しい技術がどんどん出てくるので、一生勉強が必要ですし、覚える速度を速くしていかなくてはいけない。本や実地、Webなど何でもいいので、情報を吸収し、覚えて、繰り返し学び続けることが大事です。今回の受験で、学ぶことは楽しいことだとあらためて実感しました。

奥田:試験のために勉強して覚えた知識は、試験後にもし忘れてしまったとしてもいいんです。でも勉強して得た知識は、きっと頭の片隅には残っているはずなので、例えば制作業務の過程で、ふっと思い出し、役に立つことがあると思います。もちろん試験勉強で得た知識だけでなく、本でもネットでも何でもいいので、視野を広くして情報、知識を得て、引き出しを沢山もっておくことが強みになります。アーキテクチャのことなんて知らなくても問題ない、と思っていたとしてもゲームの最適化のためには必要になってくる知識なので、正確な理論はわからなくても、一度はどういったものかを知ることが大事だと思います。そうすれば、必ず何かのときに役に立ちますから。

磯野:3D回転には行列が必要なことを知っている人が少ないです。でも一度勉強していれば、たとえ忘れてしまっていても、必要になったときに一から勉強し直すよりもずっと楽に思い出せますよね。例えば、モデルのコンバータを作れと言われたとき、どこから手をつけていいのかわからない状態になってしまったとしても、これまでに得た知識のなかから必要な知識を組み合わせて、調べ直すことができると思うので、皆さんが言われているように、絶対に何かの役に立ちます。あと、検定に合格している方は、きちんと勉強した人なんだな、と思います。

奥田:そうですね、合格していると勉強をしたという証になりますね。学歴とか実際はあまり関係ないですが、でも多少なりとも気にすることはあるので、検定を合格していれば、ある意味、学歴的なものに相当するんじゃないかな。

須藤:うちの新人スタッフにもベーシックのほうですが、合格者がいました。しっかり勉強したんだな、って思いました。

奥田:社会人になる前にエキスパートを取得していたら、CGの知識を習得している証明になるし、意欲のある子なんだと思います。

磯野:入社してからも勉強する姿勢を持ち続ける子ですね、きっと。たとえ検定受験のために短期間だとしても、勉強したという事実が大事です。先ほども言いましたが、勉強したことは身になるし、検定試験に出題されるような基礎的なことは、いつか必ず役に立ちますから。

理論だてて理解することの大切さ

ー この業界を目指す方へのメッセージをお願いします。

杉山:日進月歩な業界だし、お客様やクライアントの好みも多種多様になってきているので、日々意欲的に新しいこと、難しいことに挑戦し続け、知識を習得することが大事です。挑戦と克服の繰り返しが、フィールドを広げてくれます。どんなことにでも学ぶ姿勢を心掛け、学んだことを仕事に活かしていくループを身につけてください。エンジニア職の人が、自分のフィールドだけに特化せず、Webデザイナー検定でもCGクリエイター検定でも異なる分野の勉強をすることは身になるので、是非いろんなことに挑戦してください。

磯野:杉山さんもおっしゃっているとおり、エンジニアだからといってCGエンジニア検定に限定するのではなく、Webデザイナーや画像処理エンジニアなど他分野のエキスパート検定を受験してもいいと思います。受験のために勉強したことは、必ず力になりますよ。けっして無駄にはなりません。そこで得た知識は、枝葉となって自身の世界を広げてくれます。デザイナー志望であっても、CGエンジニア検定のエキスパート合格者とか、全検定取得した人がいたら、即採用です。そういった意欲のある人は、就活に有利だと思いますよ!

杉山:そうですね、全検定取得していたらすごいですね。かつ、作品づくりもしていたらベストかな。知識の学習と作品制作の両方に取り組む熱意を持っていてくれたら、いいですね。

奥田:コンピュータグラフィックスをやっていて、検定試験のような体系的な基礎知識があるのとないのとでは、アウトプットが全然変わってくると思います。特にCGは、感性で作るものではなく、理論立てて構築していく方向に変わってきているので、基礎知識がない人は淘汰されていくのではないでしょうか。今はリアル系のグラフィックスになってきているし、カートゥーンものでもリアルなものを一旦作ってから崩していくような作り方をしているので、何となくの感性だけではつくれなくなってくると思います。

磯野:そうですね。やはりパラメータも何となく動かすだけではなく、レンダリングの理屈を知っている上でパラメータを動かせると、作品の完成度にも違いが現れると思います。

奥田:ディレクターが、シーンの明るさの調整をアーティストに直させることがあるんですが、単純にライトのパラメータを上げて明るくして終わり、みたいなことがありまして…。本来は、シャッタースピードを遅くして絞りを開放して、露光を上げてシーンを明るくレンダリングし直すのが正しい方法なんですが、絞りを開放しようとかそういった方法に辿りつけないんですよ。そこに辿りつくには、知識が必要なんです。

須藤:ゲームプログラマーを目指している方が、検定で問われているような知識をもっていれば、いろんな話をする素地となるし、かつ合格していれば基礎知識をもっていることの証になるんじゃないでしょうか。やみくもに勉強するよりも、まずは検定合格を目指して勉強してみてはいかがでしょうか。

奥田:数学や物理などは、先人が積み上げてきたもので学問という長い歴史があり、その同じルールのなかで力を競ったりするわけですが、そういった学問と比較するとCGの歴史は、まだまだ浅い。そんななかで、我々は数十年かけて世の中の進歩に合わせてCG技術を学んできましたが、世代によっては、既にあるツールを用いて学習してきているわけで、そういう状況で我々と対等に戦っていかなければいけないことを理解することが大事ですね。我々がCGを始めたころは、大域照明計算などはなく、研究していくなかで今スタンダードになっている技術が生まれてきました。そういった渦中のなかで人生をかけて学べたことは今の自分の糧になっています。ですから、これからCGを学ぼう、この業界でやっていこうと思っている人達には、我々に追い付き追い越してもらうために、スピードを加速して、沢山の知識を吸収していってもらいたいですね。そのためのブースターとして基礎知識を身につけて、課題制作や業務のなかでの成功や失敗など経験したことを吸収しやすい土台をつくっておくことが必要だと思います。もちろん、我々も先輩達に追い付き追い越していかないといけないので、今以上のスキルと能力を高めるために、日々、研鑽を積んでいます。

磯野:僕らの時代には、CG技術の本といえば洋書がほとんどでしたけど、今はいいテキストがありますしね。CG-ARTSさん発行のテキストは、体系的によくまとめられていますね(笑)

奥田:フォンシェーディングまでしか書かれていないような時代でしたからね(笑)レイトレーシングなんて、リアルタイムではできませんでしたし、一晩、へたしたら1週間、レンダリング待ち、という時代でした(笑)

杉山:近年、CG技術の進歩はどんどん成長を続けているので、5年位で改訂してもらえるといいですね。

須藤:とにかく、本当にみんな合格してよかったです!

取材:CG-ARTS 篠原たかこ テキスト:影山由夏 写真:黒川崇史

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