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2015/07/16更新

 

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教えることだけに時間を使っていたのでは、確実に時代遅れになる

清水聡氏(開発グループ マネージャー)

Aimingにとっても、穴吹カレッジにとっても前例のなかった“教員インターンシップ”は、不安と緊張をはらみながらスタートしました。しかし、川下先生と松崎先生は「学生にフィードバックすべき具体的な成果が得られた」と力強く語りました。その言葉を裏付けるように、インターンシップ中の両先生のモチベーションは非常に高かったと、古谷氏はふり返りました。「本来の仕事の時間を割いて、わざわざ大阪まで来たからには、何かを持ち帰らなければいけない……、そんな強い意思を感じましたね」。もちろん、20日間という短い期間でゲーム開発に必要な知見のすべてを吸収することは不可能です。しかも開発現場の技術や考え方は、刻一刻と変化していきます。そのため、今回の成果に満足せず、貪欲に情報を吸収し続ける姿勢が大切だと古谷氏は続けました。「我々開発者でさえ、時代の変化についていくのに必死です。教えることだけに時間を使っていたのでは、確実に時代遅れになります。先生個々人が勉強の時間をもてるように、学校自体が支援することも必要だと思います」。清水氏は学生と接するときにも、自ら率先して学ぶ意欲があるかどうかを重視しているといいます。「勉強会に参加していると、学生から勉強方法についての相談を受けることがあります。技術や開発手法は刻一刻と変化していくので、学校にすべてを委ねるのではなく、自分で最新の情報を取りにいってほしいですね。学校で教えられたこと以外で、どれだけのことを実践しているか、我々はそこに注目しています」。

Aimingでは、今回の“教員インターンシップ”のような試みの必要性を感じており、今後も相談があれば協力していきたいそうです。「どんな手段でも良いので、開発現場の第一線の情報を仕入れて、それを学生に届ける努力が必要です。そのために私たちに協力できることがあれば、ご相談ください。それによって学生のレベルが上がり、ゲーム業界が活性化してくれれば、私たちにとってもメリットとなります。そんな学生の中から、Aimingで働きたいと思ってくださる方が出てきてくだされば、なお嬉しいです(笑)。開発現場のスタッフが学校に出向き、講義や実習をする機会も増やしていきたいと考えています」(森氏)。

穴吹カレッジのように、地理的な不利を抱え、情報不足や教員不足に悩む教育機関は数多くあります。今回の試みは、それらの教育機関にとっても、大いに参考になるだろうと感じました。さらに当事者である教育機関に加え、学生の就職先となる会社を始めとする、相互依存関係にある数多くの組織が問題を認識することも大切ではないでしょうか。そのなかから今回のAimingのように、支援や協力のために動ける組織が1つでも多く出てくるほどに、問題解決の可能性が高まってくるだろうと期待しています。

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尾形美幸

株式会社ボーンデジタル所属。NPO法人 国際ゲーム開発者協会日本 理事。CG分野の書籍制作、雑誌&Webサイト記事執筆などを生業とする。東京芸術大学大学院修了、博士(美術)。CG-ARTSにて教材の企画制作等に従事した後、フリーランスのライター・編集者を経て現職。共著書に『改訂新版 ディジタル映像表現』(2015/CG-ARTS)、著書に『CG&ゲームを仕事にする。』(2013)、『ポートフォリオ見本帳』(2011/ともにエムディエヌコーポレーション)がある。