第9回学生CGコンテスト ■動画部門■インタラクティブ部門■U-18賞
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静止画部門 受賞作品

最優秀賞
「花」
  花岡 正樹 (東北芸術工科大学 大学院芸術工学研究科 修士課程 1年)  
 
花 花 花
 

[講評]
3DCGが3DCG表現であるべき理由は、おそらく数多くある。作者は「質感」をその理由の一つに位置付け、3DCGの世界にのみ存在する独特の香りを探し求めている。解釈する理屈を超え、見る者を3DCGの純な世界に瞬間的に引き込む力を十分に持っている。質感を味わう感覚は、視覚・触覚など、さまざまな過去の「実物体験」にフィードバックされる。 しかし3DCG特有のプロセスにより生成される質感は、その個人の蓄積された記憶・感覚の境界を越えてしまう可能性を持つ。本作品の延長線上に来る次作を期待する。

[受賞コメント]
この度は、このような素晴らしい賞を頂きありがとうございます。フォトリアルな3DCGとは又違った、3DCGの世界のリアル。そんなものを追い求めています。この作品で少しでもそれを感じて頂けたら幸いです。

優秀賞
「HYMNE」
  前田 昂 (東北芸術工科大学 デザイン工学部 情報デザイン学科 3年)  
 
HYMNE
 

[講評]
絵画は絵画であり、写真は写真であるべきである。これが現在までのメディア表現の王道であり、この姿勢は当然3DCGも継承し、従来のメディアでは成し得ない表現にCGたるべき価値を求めてきた。この作品に見られるモデリングの正確さ、高度なレンダリング技術から伺えるように、作者は、CG制作プロセスを十分に理解しているうえで、敢えて、これまでのCG表現の姿勢に疑問を投げかけている。今まで当たり前のように捉えられてきたメディア表現の価値を「ひとつの垣根」と捉え、それをも越えられる可能性をCGの中に見つけようとしている。今後の作品に注目していきたい。

[受賞コメント]
このような過分な賞を与えてくださり恐悦の極みであります。狭間の領域と本質との間で葛藤を続けていく、素晴らしき励みとなりました。今後とも内容や完成度を更に高め、可能性を追求し精進していく次第であります。誠に有難うございました。

優秀賞
「sprout of cosmos」
中山 雅紀 (慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 2年)
 
sprout of cosmos

[講評]
フラクタル理論は、数学では解明できなかった自然界の形状を理論的に作り上げる数学理論である。デジタルで初めて作り上げられる形状であり、この作品における作者の技術レベルは高く評価できる。今後の期待として、自然界に有る形状を、このソフトで挑戦してほしい。CGは、リアルと超現実を結びつけることのできる表現手法なので、現実に存在する自然形状の作成が期待できる。

[受賞コメント]
僕は現在、大学院でCGの至って技術的な研究に従事しています。しかしその原動力は、アルゴリズムという理論的な法則によって、自然界の“美”を表現することへの憧れに他なりません。僕のCGにおける歩みは、中学生時代に出会った"フラクタル幾何学"という数学分野に端を発します。そこで僕は、自然の中に潜む数理構造の美しさを知り、それを逆に映像として還元するCGという分野に魅せられていったのです。今ではその構造を解き明かす科学そのものへの感銘も混じり、僕の活動スタンスとして心の奥底に根付くことになりました。今回の作品は、そんな僕自身への回帰として、想像の中にしかなかった立体的なフラクタルを具現化させたものです。研究によって培った技術をフル活用して、自然の数理構造の美しさ、強いては科学の面白さまでも集約したつもりです。花のように芽吹いて生まれた小さな宇宙に、遍在する純粋な摂理を感じて頂ければ幸いです。
 

佳作
「cloud stream」
小林 和彦 (東北芸術工科大学 大学院芸術工学研究科 修士課程 1年)
 
cloud stream

[講評]
この作品は複数のメディアをまたがることにより成立している。ビデオ映像、コンピュータ編集による構造的な分解そして再構築、そして紙媒体への出力。そのプロセスが、あまりにも明解なるゆえに応用できる表現範囲は広い。言い換えるならば、作者は、移動する物体をスリット・スキャン撮影する映像装置を開発したと言っても過言ではない。この装置により既に制作された対象は今回の「空を流れる雲」のみではなく、さまざまにわたる。これらは完成イメージが先行するのでは決してない。動いているモノを撮影記録してみる。 感性ではなくまず撮影が先行し、そして特定な制作プロセスを経た結果として、興味深い映像を発見している。

[受賞コメント]
これまでフルCGアニメーション作品を主に制作していたのですが、大学院に進学してデジタルカメラを使い始めてから実写とデジタル技術を融合させた作品に興味を持つようになり、今回は実写の空をベースにした静止画作品という今までとは違う表現に挑戦しました。今までとは違う試みだったのでどのような反響があるか不安な部分もありましたが、今回はこのような素敵な賞をいただけて光栄です。ありがとうございました。
 

佳作
「しがらみ」
福田 陽子 (東京大学大学院 学際情報学府 修士課程 1年)
 
しがらみ しがらみ

[講評]
アルゴリズムベース作品である。アルゴリズムによる作品は制作プロセスが厳密に記述されているので、パラメータの変更だけで多様なバリエーションが自動生成できるだけでなく、将来のコンピュータ環境の変化、例えばピクセルの高分解能化などに柔軟に対応できるという大きな利点がある。この制作姿勢は高く評価したい。本作品は作品の一部にアルゴリズムを利用しているだけであるが、作品全体のアルゴリズム化にも挑戦して欲しい。

[受賞コメント]
本作品では、生物的な数理モデルに基づき生成させたテクスチャを静止画に取り入れました。一見不規則だった模様がアルゴリズムに従い水玉模様、縞模様などへ変化していく過程を、静止画中で表現しました。これは、生物的な数理モデルを用いて仮想的な生物を生成する試みの一環です。現在、外界の変化に反応する動的なテクスチャをいかに生物的に表現するか、その生成アルゴリズムを模索しながら作品制作に取り組んでいます。
 

佳作
「PATTERN」
安藤 伸樹 (日本工学院専門学校 マルチメディア科 2年)
 
PATTERN
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[講評]
大所から見た形と、詳細に見る形とは、一般的には同時には見ることができない。これを、表現することができるのも、CGであるデジタル表現技術の特徴である。この作品は、この特徴を最大限に引き立てようとした意図があり評価できる。できれば近くで見ても内容のある形が欲しかった。また、全体の形を見せる時の陰影の強調にも、わかりやすく見える様に、もう一工夫ほしい。

[受賞コメント]
この度はすばらしい賞をいただきありがとうございます。まさか入賞するとは思ってもいなかったので大変おどろいています。今後も自分の表現の幅をさらに広げて頑張っていきたいと思います。
 
PATTERN拡大

佳作
「piN=pai」
水科 忠彰 (東北芸術工科大学 デザイン工学部 情報デザイン学科 研究生)
 
piN=pai

[講評]
個人の世界はメディア表現の中で育っていく。頭の中にイメージがあり、それをメディアで表現するのではない。 思考するには言語を必要とするのと同じく、イメージとはメディアが作りあげるものである。表現技術が向上することでイメージも膨らみ変化していく。作者は2年以上同じ姿勢で作品制作を続け、個人世界のイメージを大切に育成してきた。 この作品は、熟成年月を持っている。さらなる技術の磨きともに、この作者独自の世界を発展させていくことを期待する。

[受賞コメント]
この度は、静止画部門「佳作」という、大変嬉しい評価をいただいてありがとうございます。これからも自分の世界観を追求していき、いい作品を制作していきたいと思います。
 

佳作
「Limage [self-portrait4.5]」
小田原 雄哉, 中島 涼子 (筑波大学 芸術専門学群 3年)
 
Limage [self-portrait4.5] Limage [self-portrait4.5]

[講評]
イメージの中に、線のメディアを融合させようとする挑戦である。試みの意図はわかるが、境界の線の表現が希薄でイメージの中に白い面として埋もれてしまっている点がやや残念だが、出来上がりの作品としての面白さはある。

[受賞コメント]
この受賞に対し大変喜ばしく思っています。写真と線画が対話することから成り立つこの作品はコンピュータを用いることで実現出来たものです。異なるメディアを同じ画面上に融合させることは、対象をデジタルデータとして変換させたコンピュータならではの表現方法ではないかと思います。まだこの取り組みは始まったばかりです。この作品を認めて頂いたことを励みに、これからも作品を作り続けていきます。ありがとうございました。