今年で35回目を迎える世界最大のコンピューターグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議SIGGRAPH2008。今年は“EVOLVE”(進化・発展)をテーマに掲げ、2008年8月11日から15日まで、アメリカ、ロサンゼルスで開催されました。 
        これまでの伝統的なプログラムの境界をなくし、より流動的で国際的な学術会議へ生まれ変わった新しいSIGGRAPHは、会期中87ヶ国から28,432名の参加者を集め、エキシビジョン(機器展示会)には230以上の出展がありました。 
       
        CG-ARTSでは、文化庁と国立新美術館とともに主催している文化庁メディア芸術祭の優秀作品をSIGGRAPH2008コンピューターアニメーションフェスティバル(CAF)の正式プログラムとしてノキアシアターで上映したほか、アート&デザインギャラリーにおいてアート映像のモニター上映を行いました。 
          
        ■開催情報 
        
          
          
        【コンピューターアニメーションフェスティバル】 
           “EVOLVE”というテーマのもと、進化・発展するSIGGRAPHの中で一番大きく変化したのが、コンピューターアニメーションフェスティバル(CAF)です。 
          従来のコンファレンスの一部ではなく、独立した映画祭方式を導入し、上映はコンベンションセンターに隣接するロサンゼルス最大の劇場「ノキアシアター」で行われました(一部作品除く)。 
           
          また、CAF専用の入場パスを、フルコンファレンスパスよりも手頃な価格で購入することができるようになり、アニメーション目的の参加者にとってSIGGRAPHのCAFがますます身近になったと言えるかもしれません。 
           
          今年のCAFのメインイベントは3日間連続して行われた、「プロダクションスタジオナイト」でした。ピクサーアニメーションスタジオ社、ソニーピクチャーズイメージワークス社、ルーカスフィルム社といったアメリカ大手の映像プロダクションがさまざまな作品の制作過程などを監督やCGクリエーターをむかえてプレゼンし、その上映も行いました。最終日のルーカスフィルム社は、全米公開に先駆けて「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」の上映を行いました。 
          
        昨年までSIGGRAPHのメインイベントの一つであった「エレクトロニックシアター」は、今年からプログラムの異なる7回の「コンペティション」として、12日〜15日にわたって上映されました。
          このコンペティション上映では、作品を鑑賞した観客が携帯電話を使って、ベストと思われる作品に投票することができました。投票は5回の上映が終了した段階で締め切られ、一番多くの票を集めた作品が「Audience Prize:観客賞」に選ばれる、オンデマンド方式が採用されました。         
        投票締め切り3時間後にはノキアシアターで授賞式も行われ「Best in Show:最優秀作品賞」、「Best Student Prize:最優秀学生作品賞」、「Jury Award:審査員賞」、「Best Well Told Fable Prize:脚本賞」とともに「Audience Prize:観客賞」が発表されました。 
            
        今年の受賞作品は5部門の内、4部門がフランスからの受賞となりました。 
          「Best in Show:最優秀作品賞」と「Audience Prize:観客賞」のダブル受賞に輝いた『Oktapodi』の制作チームは現在、インドのバンガローでドリームワークス社の新作アニメーションの制作を手がける、期待のアニメーターたちです。 
          この作品は地中海を舞台に2匹のタコがレストランのコックから助け合いながら逃げるドタバタCGアニメーションで、ANNECYやSICAFなど数々の国際フェスティバルでも受賞しています。 
          また、「Best Student Prize:最優秀学生作品賞」に選ばれた『893』の制作者は日本文化の大ファンで、作品全体が日本のエスプリに溢れ、タイトルの『893』は日本語の「ヤクザ」を意味します。受賞式後には、今年のメディア芸術祭にこの作品を応募し、本家日本の審査員の方々に審査してもらいたいと日本語でお話していました。 
                    
          ■コンピューターアニメーションフェスティバル受賞作品一覧 
          Best in Show :最優秀賞 『Oktapodi』 
          Best Student Prize:最優秀学生作品賞 『893』 
          Jury Award:審査員賞 『Mauvais Role』 
          Best Well Told Fable Prize:脚本賞 『Our Wonderful Nature』 
          Audience Prize:観客賞 『Oktapodi』 
          
        ノキアシアターでのCAF上映は8月12日の午後12時30分から始まりました。その最初の上映を飾ったのは第11回文化庁メディア芸術祭の優秀作品でした。幅約21mの大型スクリーンに映し出された迫力の映像に、集まった500人ほどの来場者は圧倒されていました。 
          上映された作品の中でもアニメーション部門推薦作品に選ばれた竹清仁氏の『放課後MIDNIGHT』やRYUKYUDISKO/小島淳二氏の『琉球ディスコ / ナイスデイ フィーチャリング ビート・クルセイダース』などは多くの来場者の笑いを誘っていました。 
          
        ■アニメーションフェスティバル上映作品 
          『ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE.』佐藤雅彦+ユーフラテス 
          『放課後MIDNIGHT』竹清 仁 
          『ムサシノ プラトー』高橋信雄 
          『Le Musicien』Kinda 
          『「大日本インキ化学工業株式会社」CMシリーズ』森本千絵 
          『20010218-20060218』藤井史朗 
          『琉球ディスコ / ナイスデイ フィーチャリング ビート・クルセイダース』RYUKYUDISKO / 小島淳二 
          
          
        【アート&デザインギャラリー】 
          昨年まで入賞したアート作品の展示を行っていた「アートギャラリー」では、今年から「アート&デザンギャラリー」として、「Slow Art」と「Design & Computation」という2つのテーマに分かれ、45の作品展示が行われました。 
          「Slow Art」は、入賞したアート作品の展示をメインに、大きく4つの構成に分けて展示されました。 
          
          
          
	    《ハイブリッド》 
	      ユニークな作品の特質を組み合わせた個性の強さをテーマに、ノスタルジックで斬新な作品や、ナチュラルで人工的な作品、よく知られている作品と未知な作品を展示。 
	        
	      《エロージョン:侵食》 
	      素材の自然な変化に注目し、時間の経過、崩壊、エントロピーについて考察した作品を展示。 
	        
	      《リズム》 
	      リズムを音としてだけでなく、遊びにも応用している作品を展示。破壊的でありながら希望的なリズムは時間と空間についての新たな解釈の可能性を与えてくれます。 
	        
	      《トラバーサル:往来》 
	      歩く、運転する、自転車に乗る、どこへ行くか、どこに行くべきか、私たちの身体とそれを取り巻く環境について考察した作品を展示。 
	      
	    ■作品紹介 
	    
          
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                | Fold Loud | 
               
              
                | JooYoun Paek | 
               
              
                | Eyebeam Resident | 
               
              
                | New York, New York USA  | 
               
              
                折り紙の様に紙を折ると優しい声が聞こえ、折るたびに違った声がハーモニーをつくりだします。実際に手で触れることにより、折り紙と音のハーモニーを楽しむスローな時間をつくりだします。 
折り紙と音を使った、伝統的な遊びとテクノロジーを融合させた作品です。 | 
               
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                  | Phantasm | 
                 
                
                  | Takahiro Matsuo | 
                 
                
                  | Monoscape | 
                 
                
                  | Fukuoka, Japan  | 
                 
                
                  輝く球体を手に持つとどこからか白い蝶が表れ、蝶はゆっくりと舞いながら球体を追いかけます。 
球体を動かすことによって、かつて蝶を追った懐かしい体験を思い出させる、小さな夢のような空間を体験できるインタラクティブなインスタレーション作品。 | 
                 
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                  | Wonderland (2007) | 
                 
                
                  | Hye Yeon Nam | 
                 
                
                  | Georgia Institute of Technology | 
                 
                
                  | New York, New York USA | 
                 
                
                  | 作者が歩いているのはニューヨークの街。足早に歩くニューヨーカーだけでなく、車、電光掲示板など、作者以外の全てが逆に動いていく。見ている者を不思議な世界へ誘う作品です。 | 
                 
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	    第11回文化庁メディア芸術祭アート部門の優秀映像作品も展示作品の一つとしてモニター上映されました。 
	      
	      ■アート&デザインギャラリー上映作品 
	      『nijuman no borei (200000 Phantoms)』 
	      『ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE.』 
	      『Super Smile』 
	      『20010218-20060218』 
	      『Aperspectival House』 
	      『electric life line 』 
	      『SHATTER』 
	      『Sweet Dream』 
	      『Waxx』 
	      『空層』 
	      『ムサシノプラトー』 
	      
	     「Design & Computation」は、解析と生成の手法を使った様々な作品と、デジタル製造の技術を使ったデザイン作品で構成された企画展でした。 
	    かつて、SIGGRAPHに参加していた建築家やデザイナーを再び呼び戻す試みとして、幾何学をベースにしたテキスタイルや建築、デザインオブジェなどが展示されました。デジタル情報が、今後どのように、新しい表現方法やマテリアルをもたらすかのショーケースとして、多くの来場者の関心を集めていました。 
	        
	      
	      
	      
	      
	      
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