1912-2012 vol.2
1912-2012 vol.1
ゲームβ
おたっしゅ!!
寝るる
(5作品)

普通の風景の中に見慣れたスマートフォンが2台。既存の映像がザッピングされた画面にシンクロしようと、律儀に奮闘する作者の行為が映し出されたもう一つの画面。この二つの画面の関係にいつの間にか見入ってしまい最後には笑いが込み上げてくる。ザッピングされた映像の持つ状況?世界?を作者のプライベイトな空間で模倣しようとする行為が結局は破綻し溶け出す。その微妙なズレ?差異?が生み出す不思議な感覚がこの作品の魅力だ。
(原田大三郎)

映像に呑み込まれがちの時代において、逆に映像を呑み込んでやろうという試みに思えた。しかも、自分でルールを勝手に設定した自分の土俵に無理やり引きずり込んでのことなので、絶対に負けることのなく。『1912-2012』のシリーズは、選ばれている映像がその時代を必ずしも象徴するものではない、検索のランダム性を取り込んでいるように思えるのがよかった。『おたっしゅ!!』や『寝るる』は、本当に真似する気があるのか分からない暴力的な模倣によって、美少女キャラたちが非常にやりにくそうにみえてくるのがよかった。つまり、本来成立するはずのないコミュニケーションが成立しつつあるように感じたのだ。『ゲームβ』でも初音ミクに妙な生々しさが無理やり付与される。総じて、作り手側のリズムが観客を踊らすミッキーマウシングの時代はもう終わったのだなと素直に思わされた。受け手の側が、自分が勝ったと思えれば、それでいい時代なのだなと。
(土居伸彰)

「今の若い人はジャンルや年代に関係なく、色んな音楽を聞いていたりするよね」と、2まわりほど年長の方に言われたことがあります。そんな印象を彼らに与えている要因はいくつかあると思いますが、中でも最たるものは、無料で、いつでもどこでも、膨大なデータベースにアクセスできる環境が、若い世代にとっては当たり前のものとなっている点でしょう。本作は、時代を越えたいくつものコンテンツが手軽に利用できる現在の情報空間を描いています。かつて撮影された映像を、おそらく自宅だと思われる環境の中で、できる範囲で模倣するということ。それがいわゆる「やってみた」系の動画のように、ラフなレベルで出力されていることが、さらにリアリティを高めていると感じました。
(武田俊)

中村 将志
東京藝術大学大学院
映像