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現場の第一線で活躍される制作会社の代表、業界へ一流の人材を送るために日夜努力されている教育機関の講師陣の方々にCG-ARTSのマルチメディア検定を受験いただき、制作現場と教育現場において検定内容は役に立つのか、受験する価値はあるのか、それぞれの立場、視点でお話しいただきました。

今回ご協力いただいたのは、「自分たちの理想とする開発者集団を自分たちの手でつくろう」という信念のもとにゲーム開発を手がけている株式会社リズの磯野社長。デジタルコンテンツを通じて、感性豊かな社会の実現に貢献することを掲げる株式会社ハ・ン・ドの竹本マネージャー。そして、教育機関からは北海道で開校51年の歴史を誇る老舗、北海道情報専門学校の川村先生。豊かな人間性と専門性の高い人材を育成する吉田学園情報ビジネス専門学校の千葉先生。以上の4名の方々と、取材会場のご提供として北海道情報専門学校様にご協力いただきました。

初の産学による検定受験対決!その結果は…

ー ご自身の現在のお仕事と、この企画を受けてくださったときのお気持ちを教えてください。

北海道情報専門学校
川村先生
吉田学園情報ビジネス専門学校
千葉先生
株式会社リズ
磯野社長
株株式会社ハ・ン・ド
竹本マネージャー

川村弘司 氏(以下、川村):北海道情報専門学校でクリエイター系学科の責任者をしています。そして担任業務、就職活動の支援にも携わっています。今回の企画を受けたきっかけとしては、4月に札幌で行われましたG-DREAMS終了後の企業との情報交換会で資格検定の話題がでまして、普段検定を推奨する教師としての立場から、受ける側の機会を体験されてはどうか、というお誘いを受けたのが始まりです。その後、話が拡がって対決という企画になっていて驚きましたが(笑)。

千葉於利衣 氏(以下、千葉):吉田学園情報ビジネス専門学校でゲーム学科のプログラム、ゲームエンジンの授業を担当しております。今回はこの企画を学校側にいただきました際に指名を受けまして参加いたしました。認定教育校で元々検定にも興味がありましたので、この機会に体験してみようと思い、受けさせていただきました。

磯野貴志 氏(以下、磯野):デザイナー、3Dのグラフィックもやっていましたが、現役としてはだいぶ前に引退して会社経営をしております。学校の先生方とお会いしながらリクルート活動もやっています。10年前くらいにCG-ARTSの検定試験を受験して現役の人や業界の社長達と対決がしてみたい、という話をしたのがきっかけで当初はCGクリエイター検定からスタートしました。最近ではCGエンジニア検定、Webデザイナー検定の受験を経まして、ここまできたら全部やるしかない!と思い、マルチメディア検定を今回は受験しました。

竹本寛 氏(以下、竹本):元々はプログラマーとして仕事をしておりましたが、現在はスタジオマネージャーという職に就いておりまして、おもにプロジェクトのマネージメントをしております。今回は上司から突然、おもしろい企画があるからと声をかけられたのがきっかけでして、ぜひチャレンジしてみようと思いました。

 

ー 実際に試験会場で受験した感想を教えてください。

川村:僕は自分の学校で学生に混じるかたちで受けました。認定教育校なので、いつもは試験運営を監督する側なのですが、受験者側の席には座ったことがありませんでした。実際に受験をしてみて僕が一番初めに感じたことは、学生はこんなに狭い席で受験しているんだな、ということでした。

一同:(笑)

川村:黒板に向かって座ることが久しぶりですし、今まで味わったことのない、ちょっとした緊張感を感じることができました。

磯野:周りはみんな学生さん達ですよね。

川村:みんな僕の方をチラチラみてくるんですよ。

一同:(笑)

千葉:私も自分の学校で受けましたが、席が一番前でしたし、試験官も同僚だったのでとても緊張しました。受験自体がすごく久しぶりだったので緊張のあまり、途中でシャープペンシルを落とすというハプニングがありました(笑)。

竹本:もっと受験者が少ない検定だと思っていましたが、思ったよりも受験者が多くて関心度が高い検定なんだと感じました。こういうシチュエーションは久しぶりなのでおもしろかったですね。

磯野:正直、受験にはもう慣れちゃいました(笑)。前回は時計が見えない席での受験だったので、時間がわからないまま不安な受験になりましたが、今回は時計を持参したのでこれで大丈夫と思ったら、今回は目の前に時計がありました!

竹本:私も時計はいつもスマートフォンで見ていますので、すぐ閉じなければいけない事態になりました。

磯野:受験するみなさん、時計は忘れないように!そして、みなさんに質問ですが、マークシートの解答方法について記入箇所を間違えず、スムーズに解答できましたでしょうか。前回の企画では記入箇所を間違えてしまって、不合格になってしまった方もいらっしゃいましたので。

川村:毎回学生には解答方法については注意をしています。確かに過去に何人かは記入ミスで不合格になった学生もいました。

竹本:共通問題の記述箇所はわかりましたが、全体を見直しするときに設問箇所がわかりづらい印象はありました。

川村:問題冊子は全検定が一緒になっていてもいいんですが、解答用紙は検定ごとに分けるのもいいかもしれませんね。

磯野:今回は試験監督が最初の説明部分で記入箇所には特に注意するようにと、念入りにアナウンスをしている場面が見受けられましたが、引き続きこれからも受験者が試験を受けることに集中できるしくみの改善をCG-ARTSには心がけてもらいたいと思います。

 

ー はい、これからも改善に努めさせていただきます。それでは、みなさん試験結果が気になっているころだと思いますので成績順位を含めて合否発表させていただきます。1位は川村先生、2位は磯野さんと千葉先生、3位は僅差で竹本さんという結果になり、みなさん合格されていました。おめでとうございます!

磯野氏の今回の学習ノート

川村:対決なので1位を獲るつもりでいましたが、試験終了後に間違えたところがいくつかあったことに気づいてしまいました。前回、磯野さんが受験勉強用のノートを作られていたり、ものすごく勉強をされていることを知っていましたので。今は勝ててほっとしているところです(笑)。

千葉:とりあえず合格できてほっとしています。カテゴリ別にグラフを出していただいているので、見直してみて怪しいところは勉強し直しだなと思っています。

磯野:実は今回はあまり勉強をしていないです。反省点は毎回出題されるのに共通問題(知的財産権)が満点をとれていないところですね。ただ、今回は新しい問題も出ていましたね。

川村:知的財産権については法改正の通知がCG-ARTSからきていましたので、これは出題範囲になるだろうと思って勉強していました。学生にも事前にアナウンスできていました。

磯野:さすがです!

竹本:思った感じの結果だったと思います。自分の弱点が反映されている結果だと思いますね。

高難易度!?マルチメディア検定エキスパート攻略のカギ

ー 試験問題の内容について、良かった点や不明だった点などありましたら教えてください。

川村:第4問の設問aに出てくるA/D変換の問題ですが、全員不正解でしたね。

磯野:CG-ARTSの検定は解答文章の正誤を問う、ひっかけのような問題もあります。

川村:長さはサンプリング間隔時間だから、それはサンプリング周波数じゃない。ということですね。

千葉:見事にみなさんひっかかってしまいましたね(笑)。

※正解答はウ

川村:確かにCG-ARTSの検定は適切でないものを選べという形式もあるため、問題、解答を全部読まないと答えられない問題が多いかもしれません。

磯野:こういったひっかけ問題で不正解になっても、通常の問題を解けている人は7割は取れているんじゃないかと思います。ひっかけ問題を解答できている人は注意深く試験に臨めている人ですね。その差がすごく出やすい検定だと思います。

竹本:ネットワークと通信の問題が苦手でした。

川村:うちの学生はこの辺は得意分野ですね。学校ではマルチメディア検定だけではなく、他検定で出題される分野も勉強しているので、カバーはできています。

竹本:会社では情報システムを担う担当者がいますから、業務のなかではあまり関わることがない分野なんですよね。

川村:僕も最近は最前線というよりは少しだけ現場から離れた立場にいますので、新しい用語は疎いため勉強をし直しました。

 

ー 第5問、第6問のコンピュータのしくみと技術はみなさん正答率高いですね。

竹本:さすがにCPUは何でしょう、という問題を間違えたらやばいですからね。

川村:最近はコンピュータのしくみを知らないまま入学してくる学生も珍しくありませんよ。普通の高校生、大学生も知らない子は多いと思います。

磯野:IaaS、SaaSとかは全然知らなかったですよ。

川村:最近はクラウド関連のキーワードが多いのでIaaS、PaaS、SaaSに関してはお決まりのキーワードになりつつあります。

川村:磯野さんはさまざまなCG-ARTSの検定を受験されていますが、どの検定が一番実務として役に立ちそうだなと思いましたか。

磯野:業種にも寄りますが、前回受けたWebデザイナー検定は自社のWebサイトが良いか悪いかの指標を学ぶことができたので役に立ちました。前回一緒に受験した、株式会社ランド・ホーの塚原さんはその後、自社のWebサイトを作り直すとおっしゃっていましたよ。(リニューアルサイトは10月公開予定)

 

ー マルチメディア検定ではコンピュータのしくみやITリテラシーを問う問題が多いのですが、川村先生が先ほどおっしゃっていたように、若い方々がこういった知識を持たなくなってきている印象があります。この辺りについて、いかがでしょうか。

磯野:マルチメディア検定という名称から受ける印象と中身が違うことに気づきました。どちらかというと総合IT技術という内容で、当初は一番受けなくても大丈夫かなと思っていた検定でしたが、実際受けてみると幅広く網羅していましたので、学生さん達にはなるべく早く受験してもらって、IT業界の全体像を掴んでもらいたいと思いました。

竹本:僕も最初にマルチメディア検定と聞いた時の名称のイメージと、実際のカリキュラム内容がかなり違いましたので、これはヤバい!と焦りました。うちの会社のケースでしたら、テスターとかアルバイトの段階から仕事をしているスタッフもいて、こういった知識が不足している場合もありますので、これで勉強をさせてあげたいです。

川村:ゲームやCG、Webにおいても全般的に必要な知識が網羅されている感じがします。

竹本:まじめに満点取ろうと勉強するとしたら、かなり深いところまで掘り下げないと満点とれそうにないですね。

川村:満点取ろうと思ったんですけどね(笑)。

一同:(笑)

 

ー 今回の結果を振り返りながら、受験までどのように学習を進めてこられたのか教えてください。

竹本:ベーシックだけを眺めていたら、このくらいのレベルかと余裕のつもりでしたが、一か月くらいたってからエキスパートみて、これはアカン!と(笑)。普段はテキストのキーワードを書き出して整理して覚えるという流れでやっていたのですが、時間もなく出題範囲が広いので、何度もキーワードを指でなぞって印象づけながら読んで覚える。そして、テキストを一通り読んで何回も過去問題集で練習問題を解くといった勉強法でした。仕事が終わって帰宅してからの勉強でしたので、睡魔との闘いでしたが、毎日1時間~2時間は勉強したと思います。勉強した期間のなかでも2週間は本気で受験勉強に取り組んでいたと思います。

千葉:一ヶ月間の間、授業と授業の合間の10分休憩を使ってテキストを読みつつ、過去問をひたすら解いていました。弱い部分はテキストを集中的に読み、それでもピンとこないところは近くにいるデザイナーや画像処理ができる方に聞いたりしていました。プログラマーとして学習済みの部分もありましたので、関わりのなかった分野を中心に学習を進めました。

磯野:僕の場合は試験に慣れてきていることと、これまで受験した検定と重なっている領域もあり、傾向と対策がわかっていたので1週間くらい前から勉強し始めました。まずは過去問題集の練習問題を1セット、なにも勉強していない状態から始めました。結果は6割くらいでした。過去問題集には解答解説が詳しく載っているので不正解部分を確認し、間違ったところをテキストのチャプターから探して読んでいきました。その後、再び過去問にチャレンジすると7割を超えるくらいになりましたので、これを繰り返していきました。試験前日には12時間勉強しました。今回もノートを作りましたが、やはり実際に手を動かして書くと覚えられます。

川村:僕も学習期間は短かったです。まじめに勉強したのは2、3日間くらいだったと思います。なぜかというと、エキスパートの過去問題を最初に解いた時点で正答率が9割を超えていましたから。

一同:すごい!

川村:間違っていた箇所が新しい用語部分だったので、今年のキーワード集をベースに学習すれば大丈夫だと思っていました。ただ、試験を受ける2,3日前に再びやってみたら点数が下がりましたが(笑)。ですので、キーワードを全部洗い直してマーカーで引き、自信のある分野、ない分野に分けながら自信のない用語に関してはまじめに勉強したつもりです。今回1位という結果でしたので校長には胸を張って報告できると思います(笑)。

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