MUJYO TYPES

字が下手な人が書く字はたまに読めない。字が上手すぎてもそう。体操着に記された自分の名前も日焼けで消えてしまったし、そういえば自分はタイ語をぜんぜん読めない。人がどれだけ頑張って思考を文字へとエンコードしても、それを読む人が適切にそれをデコードできなければ、その「文字」と呼ばれるものはただのノイズにしか過ぎない。また、それらが定着するメディウムのコンディションによっても大きく作用される。本作は、そうした記号自体が持つ本質的な脆さ、そしてコーデックが適切に作動した時に立ち現れる知覚のうねりのようなものを、文字が織り込まれたテキストではなく、フォントそのものの形態によって自己言及的に表現している。揮発した石油の匂いが鼻を突くような、そうした静かな、しかし危ういインパクトがある。
(渡邉朋也)

馬場 一萌
多摩美術大学
インスタレーション