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Vol.31 クオリティへの自信は100%!『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』が目指した世界観とは

フルCGアニメ映画として、そのクオリティの高さが話題を呼んだ『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』。先月開催された東京国際アニメフェアで、その制作過程を紹介するシンポジウムが行われ注目を浴びた。
今回CG映像を担当したのが、日本ではCGの創始期の1983年に設立された老舗のスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズだ。国内では有数の大型スタジオで、現在は120名以上のスタッフを抱えている。『Dancing Sony』『イワトビペンギン』『デジタル所さん』など独創的なキャラクターを数多く世の中に送り出している。
 
「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」というビジョンを掲げるポリゴン・ピクチュアズが、『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』で見せた臨場感溢れるCG映像について、ラインプロデュースを手がけた牧野治康氏、CG監督の長崎高士氏、制作デスクを担当した高久美知子氏にお話を伺った。

 
映画1本のCGディレクション全てを任されることへの意気込み

プロダクション I.Gの石川社長から直々に長崎さんにCG監督をお願いしたいと依頼があったのは、ちょうど本作が公開された8月22日のちょうど1年前。事前には、全体のCG部分の約半分700カットを担当すると聞いていたという。
「制作に1年しかないのか・・・。でも半分の700カットなら、なんとかなるなと思っていました」と話すのは、ライン・プロデューサーの牧野さん。それが1,400カット全ての管理を任されることになったので、正直慌てたという。「7月に事前に話をいただいた時に、デザイン画とシナリオを見せてもらいました。とても心惹かれる内容でしたので意気に感じ、私も長崎もすぐにやりたい!と思いました。そういう想いがあったので、90分1,400カットの総合CGディレクションのお話をいただいた時も、驚きはありましたが、やってみたいという気持ちのほうが強かったです」
これまでのアニメ映画制作では、CG部分を一部請け負うという形が主流だったため、今回のようにまるごと映画1本のCGディレクションを任されるという経験は、初めてだったという。
映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』でもプロダクションI.Gと組んで、CGを担当した同社だが、今回はその4倍のカット数、そして『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のCGは映画全体の3分の1だったが、今回は90分フル3Dの作品だから規模が違う。




日本のプロダクションが集結した映像制作。体制づくりが肝心!

ポリゴン・ピクチュアズがIGFX(プロダクションI.Gの3Dチーム)との混成部隊として実際に担当したのは、1,400カットのうちの約1000カット。その他400カットを、6社の制作会社がそれぞれ担当する。この1年という短期間で納得のいく映像を仕上げることが最優先なので、新技術の開発を試みる場ではなく、各社の持つスキルを最大限に出し合って集結させる場にすべきだと考えたと牧野さんは話す。

「まず、工程ごとにスーパーバイザーをたてました。スーパーバイザーが、各社で進めている制作のクオリティ管理を徹底して行いました。システムにおいても、データベースを共有できるように一日に一回はデータの同期を図りました。PPI社内では1日に300以上のメールが飛び交いましたが、他社さんとの情報共有にはI.Gさんがウェブ上に立ててくれた「Xoops」というサービスによるリアルタイムな情報共有やスケジュールと進捗管理が効果的だったと思います」

夏からはじまり、年末まではルール作りと制作準備などのプリプロダクションに費やしたというから、制作体制を整えることの重要性が伺える。
「絵コンテを何度も何度も見直してキャラクター数、動きとカット数、作業分担とスケジュールの作成など、なかなか捗らない作業を毎日コツコツと…焦りながら進めていました」とCG監督の長崎さんは牧野さんと顔を見合わせながら当時を振り返る。このプリプロ段階でアニマティクスを完成させ、年明けからプロダクションが本格的に始動した。


スタッフの意思統一と能力が活かされる人員配置

体制の構築とともに大切なことは、スタッフの意思統一だ。CG監督は、作品のクオリティを保つために、この作品の目指すところを正しく伝え、意図を理解してもらう役割を担う。
今回のCG監督をつとめた長崎さんは「制作に携わるスタッフは、職人気質な方も多いので、如何に作品意図を理解して制作に打ち込んでもらうかが成功の鍵になります。そのため時間を惜しまず、各社を飛びまわりましたね」と今回の役割を話す。
「一番苦労したのが、腕のたつアニメータを集めることでした。国内には有能な手付けのアニメータが少ないので大変でした。そこで今回はプライマリとセカンダリにアニメーション作業を分担して進めることを試みたんです」顔やボディの動きは熟練したアニメータ(プライマリ)が担当し、布や髪などの揺れるものの動きは、若手のアニメータ(セカンダリ)が担当した。ちなみに、プライマリとセカンダリに費やされた時間は、ちょうど同じぐらいだったという。


今回、全体のラインプロデュースを行った牧野さんも「それぞれのスタッフの能力を生かすための人の配置に一番苦労しました。実際にスタッフを動かしてみて、状況とマッチしているかをチェックし、必要ならば改善策などを検討しました。常にスケジュールとお金の問題が隣り合わせという状況で調整していました」と体制づくりと進行の苦労を語った。
きちんとした体制の上に適材適所に人が配置され、意思統一がなされること・・・言葉にすると当たり前のように聞こえるが、一方ならぬ努力と苦労がここにはある。




成功の秘訣は、責任者が世界観を共有することにある

『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』は、作業効率を高めるためにもプロダクションI.Gの3DスタジオIGFXに、制作協力としてポリゴン・ピクチュアズが全面的に参加し、制作された。2Dアニメのプロダクションとの共同制作ということで、新たな発見も多かったという。今回の監督は、実写の映画監督の佐藤信介さん。演出はプロダクションI.Gの塩谷直義さん、美術監督はアニメーション背景・設定デザイン制作などを手がける美峰の野村正信さん、そしてCG監督がポリゴン・ピクチュアズの長崎さんとなっている。

今回の布陣について長崎さんは「同業者からはよく、どうやってクオリティを統一したのかと質問をされるんです。たとえば、背景に関しますと、3割が2Dで7割が3Dという区分けの中、美術監督の野村さんが2D3D問わず全ての背景を監修することによってクオリティ・テイストを統一することを目指しました。また、動きの演出は塩谷さん、CGは僕という風に・・・」。それぞれが目指すクオリティと世界観を信頼し、尊重しあって仕事ができたという。この三者の目指すイメージが共有できていて、想うクオリティの高さも自ずと一致していたようだ。

成功の秘訣は、それぞれの責任者に権限があること、そしてコミュニケーションがしっかりとれていることだと牧野さんは加えた。


また、牧野さんは、2Dと3Dの制作方法の違いについて、キャラクターと背景制作の進め方を一例にあげてくれた。「CGの制作現場では、キャラクターも背景も同時にレンダリングするので、背景を確定することにあまりこだわりませんが、2Dの場合は背景とキャラクターは完全に別なので、背景画を先に確定させます。今回も野村さんの徹底的な背景映像のチェックがありましたから、2D・3Dに関わらずクオリティも統一されましたし、先に仕上げることもできました。この制作フローは演出の塩谷さんからの強い要望でもあったんです。」
3Dの制作では、ライティングやコンポジットなどの最終工程に入ってからも手戻りが発生し、モデリングまで戻る場合も少なくない。今回は先に背景映像の確認が終わっていたので、安心して手戻りせずに進行できた。この制作方法が、最終的には良い結果を生み出したという。




 



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