第15回学生CGコンテスト受賞作品展は、文化庁メディア芸術祭と共に2月3日から14日まで、六本木にある国立新美術館にて開催されました。
次世代を担う若い才能の発掘と作品発表の場を提供することを目的として、1995年からスタートした『学生CGコンテスト』。
第15回というひとつの区切りを迎えた今回は静止画、動画、インタラクティブの3部門をあわせて1,173作品の応募をいただきました。多くの応募作品の中から受賞を果たした32作品と、最終審査会にノミネートされた28作品をあわ併せた60作品を展示・上映しました。
会場には過去最多となる63,348名もの方々にご来場いただき、盛況のうちに作品展は終了しました。
2月6日に行われた表彰式・授賞記念パーティーとあわせて、受賞作品展の様子をレポートします。
静止画部門では受賞作品すべてを壁面にパネル展示し、推薦作品はモニターにて紹介しました。最優秀賞の『進化の想像』や優秀賞『四神』など、大きな組み作品はそれだけで会場の注目を集め、遠ざかって全体像を捉えようとしたり、作品に近寄ってラインの繊細さやテーマとなっているモチーフを眺めたり、足を止めて鑑賞している方たちの姿を見ました。




受賞作品10作品は、50インチモニターでの上映と、メニュー画面から希望の作品を選択して見ることができる方法で展示が行われました。
手描き、フルCG、短編作品から20分を超える長尺の個人作品まで、テーマも、作品形態もさまざまな作品が並びました。
動画部門の最優秀賞に輝いた『Lizard Planet』は、地球をテーマに作成された作品です。台詞はありませんが、周りに流されて生きていた主人公のトカゲが、自分の意志を持って生きていくまでを、観客の方も真剣に見守っていました。優秀賞 『中学星 chu-gakusei』はひたすら笑えるショートストーリーです。あまりの脱力感、でも、この次は、次は、と思わせてくれるセンスの良さで、来場者の方を笑いの渦に巻き込んでいました。優秀賞 『ひとりだけの部屋』はヨーロッパの伝統的なアートアニメーションを思わせる古風な雰囲気をもちながら、実はCG技術を駆使したフルCG作品です。その独特な世界観に魅せられた方も多いようでした。

インタラクティブ部門は、受賞作品10作品のうち1作品以外、すべて作品を展示紹介しました。体験型の作品が多いため、会期中、観客の方々が途切れることがありませんでした。 最優秀賞に輝いた『Urbanized Typeface : Shibuya08-09』は、展示されているキーボードのアルファベットを押すと、渋谷全域を移動した、移動の軌跡から形作られたフォントと、実際にその形に走破している過程を撮影した映像が映し出される作品です。作者が渋谷の街全体を移動してA~Zすべてのフォントを制作したと知ると、誰もがそのアイデアとスケールの大きさに感心していました。

子供たちから支持されたのは、優秀賞 の『Jamming Gear』。歯車(Gear)をモジュールに取り付け、その歯車同士をつなげることによって音楽が生まれる作品です。おもちゃとして作られただけあり、夢中になって歯車を付け替ている光景が見られました。

優秀賞 『Rokuro-2』は、光ファイバーを高速回転させている作品です。視覚的に美しい上、表れた光の造形に手で触れて形を変えることができ、作品名を知らずに体験していた方が「ロクロみたい!」とつぶやいている様子が印象的でした。

PC上で展開する作品としては、デスクトップのゴミ箱を空にすると中身が花火になって打ち上がる、優秀賞 『Pyro Directory』。昨今流行のネイルアートのシュミレーションソフト『キラキラデコレーション』(エンターテイメント賞)。同賞『NEO AQUARIUM -甲殻王-』は、甲殻類たちの対戦アクションゲーム作品など、それぞれに工夫を凝らした、さまざまな作品にあちこちで熱中される姿が見られました。

展示作品の中には、文化庁メディア芸術祭でも受賞、または推薦作品に選ばれていたものもあり、学生でありながら高いクオリティを持った作品に来場者の方から高評価をいただくことができました。
今後も学生CGコンテストを継続していくことによって、さらに素晴らしい未知の才能、作品との出会いを期待したいと思います。
受賞者、来場者、審査委員の先生方をはじめ、今回の学生CGコンテストにご協力して下さったすべてのみなさまに心より御礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。

2月6日土曜日に表彰式と受賞記念パーティーが行われ、学生CGコンテストの受賞者が一同に会しました。審査委員の先生方、受賞者のご家族、友人、また、協力いただきましたキヤノンマーケティングジャパン株式会社様、日本AMD株式会社様、日本シーゲイト株式会社様など多くの方々が受賞されたみなさまを祝福しました。
受賞者はそれぞれの作品名に名前を読みあげられると、進み出て、CG-ARTS理事長の岩木肇と各部門の審査委員の先生方より、表彰状と賞品目録を受け取りました。その後、各部門の審査委員の先生方から講評と受賞者の方々へのメッセージが贈られました。また、各部門の最優秀賞受賞者からも受賞コメントをいただきました。
高校2年生で受賞された市川さんは「この受賞をきっかけに、プロアーチストを目指して活動していくことを決意しました」と述べられていました。
2回目の受賞となった上甲トモヨシさん。「これからも表現の場を広げて創作活動を続けていきたい。」
このコンテストに再挑戦いただいた山口崇洋さん。「2年前は佳作しか受賞できずに悔しい思いをしましたが、今回、最優秀賞を受賞することが出来たことに感激しています。」

審査委員長の原田大三郎委員は「昨年度の学生CGコンテスト受賞者が、今年の文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞していますが、これは学生CGコンテストのレベルがメディア芸術祭にも通じる証明だと思います。これからはみなさんの時代ですから、日本のメディアアートや映像などを支えていってください」と述べられていました。

表彰式の後は会場を移し、受賞記念パーティーが行われました。先ほどの表彰式の緊張も解け、和やかなムードの中で受賞者と審査委員の方々の間で交流を深められていました。内田まほろ委員は、今回の受賞作品は作り手の人たちがどういう生活をしてどういう物が好きか、など想像できる作品が多かったため、実際にどんな人たちが作っているのか会えるのを楽しみにしていたそうです。作者の人たちを見つけては、さまざまな質問をされていました。
インタラクティブ部門優秀賞の大貫真史さんは、審査委員の山路和紀さんとゲーム制作の話で盛り上がり、会社へ遊びに来てみませんか、とお誘いを受けていました。

受賞者同士でもお互いの作品を見せ合ったり、受賞作品の制作方法について質問したり、初対面同士でも作品を制作する者同士、すぐに親しくなり、交流を深めていたようです。

2時間という限られた時間でしたが、この受賞記念パーティーでの多くの出会いが、受賞者たちにとって、今後有意義なものへと繋がっていくことを願っています。