Bridging the Gap: Academic Education and the Real Worldをテーマに5つのワークショップを行った。欧・米・アジアからの参加者も多いので、日本独自の教育文化を知ってもらうことも目指し、日本のゲーム会社のトレーニング、パントマイムを利用したアニメーション教育、キャラクターメイキングの新手法を取り上げた。また、3次元CG教育についてはルーカスフィルムアニメーションの教育システムを紹介した。狙い通り、ゲーム会社やCGプロダクションの業界人、学生など、これまで参加してもらえなかった多くの方々にも出席してもらうことができ、会場に入りきれず人が溢れる場面が見られるほど盛況となった。
http://www.siggraph.org/asia2009/jp/for_attendees/educators_program/education_workshops/
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<5つのワークショップ>
- CGクリエイターのためのパントマイムワークショップ(荒木シゲル)
- ゲーム業界で生き抜くための陰の立て役者?セガの社内トレーニング(セガ 康日準・麓一博・築島智之)
- ディジタルキャラクターメイキング ワークショップ(東京工科大学大学院 金子満)
- ティーチングティチャーズ:プロダクションの制作プロセスに対する理解を教育者に与えること(Lucasfilm Animation Singapore Tad Leckman)
- グラフィックエンジン MAJUA を活用した実践的次世代ゲームクリエイター育成(プレミアムエージェンシー 川島基展・山路和紀)
ここでは、2日目に開催された株式会社セガのゲーム開発者による社内教育を紹介するワークショップを紹介する。
このワークショップでは、R&Dや制作に関わる康日準氏、麓一博氏、築島智之氏が講師をつとめ、実際にセガで行われている新入社員研修のなかから、3次元CGのアニメーションやプログラミングに関するトレーニング法や、学習効果をあげる試みが具体的に紹介された。
教育関係者のほか、ゲームや映像制作関係者、学生も多数参加し、セッションは最後まで満員の状態となり、ゲーム制作教育への感心の高さを伺わせた。


康氏は最後に、「インターネット上の情報の80%は英語で発信されており、ゲーム制作関連の情報やツールのドキュメントのほとんどが英語だ」と述べ、「学生の皆さんには、情報取得手段としての英語の重要性を考えてほしい」とアドバイスした。


麓氏は、「シェーダを書けなくても、基本を理解していればプログラマとのコミュニケーションも円滑になる。その結果、高度な表現ができるようになる」と述べ、クリエイターを目指す学生にもシェーダについて勉強することを薦めた。

最後の築島氏の講演では、「クローンモニタリング」と「アニメーションテンプレート」と名付けられた、比較的簡単に試せる学習方法が具体的な例を挙げて説明された。はじめは誰でも意欲的に取り組むものだが、しばらくすると慣れや学習の機会が減少することにより意欲、学習効果が停滞したり、アニメーションの動きをつけるコツがつかめなくて上達しないなど、ゲーム制作やアニメーションの学習で誰でも陥りがちな問題を解決する試みだ。築島氏はアイデアをエクストリームプログラミングや伝統的な美術工芸、2Dアニメーションの制作現場から得たという。

アニメーションテンプレートは、既にモデルに設定された3Dアニメーションを同じシーンのなかでもう一つのモデルにコピーする。2Dアニメーションで動画を描く人が原画を見ながら作業して学ぶのと同じように、既にあるアニメーションを参考にしながら制作することで上達していけるのではないかというアイデアだ。「ロトスコープやビデオを見て動きをコピーするのは、データが多すぎ、初心者にはよい学習の方法だとは思いません。実際に手で付けられたアニメーションからなら、キーフレームのタイミングなど、多くのことを学べるこの学習方法のよい点だ」と築島氏はいう。アニメーション制作の本に付いてくるデータを利用してもできるので、誰でもすぐ試せることも利点だ。また、効果的な復習の方法として、マインドマップを活用することは、教員、学生の両方にメリットがあることなども説明された。「学んでいる本人がマップを描いて、復習にも使える。教える側にとっては、テストなどをしなくても一目で学習者の理解度が分かる、うますぎる話に思えるほど魅力的な復習法」だという。
最後に築島氏はこのような場所で情報をシェアし、学校と業界でよりよい教育への関心を高めていくことの大切さについて述べ、シーグラフのような機会により多くの会社や学校が参加することを促した。

エデュケーターズプログラム以外に見られたゲームに関連したもののなから、「ゲームプログラミングの独習」をコンセプトに、学生や教育関係者を対象として行われたコース「テニスゲームを作ってみよう!ゲームプログラミングひとめぐり」を紹介する。

講演のなかで平山氏は、ゲーム制作の大規模化、高度化が進んでおり、初心者がゲームプログラミングの全体像を把握することは難しくなっていると述べた。この問題への対処方として、このコースで紹介されたようなゲームを1人で完成させることの有効性を語った。
講義は、CG技術の基礎と、それをどうゲームに応用していくのかを中心に、数学や物理の基礎的な解説からはじまり、具体的なコードを書くプロセスへ進み、リアルタイムの高速描画が求められるゲームならではのプログラミングの工夫などが、具体例を示しつつ紹介された。さらに、ゲームとしての面白さ、見せ方などのゲームデザイン、デザイナーに仕様書通りのデータを用意してもらうための工夫などを紹介し、チーム制作におけるコミュニケーションのコツについても言及した。ゲームプログラミングの観点からゲーム制作の工程が把握できる今回の講演は、ゲーム業界に興味を持つ学生や指導する教育者だけでなく、プランナーやデザイナーにも大変参考になる有意義な内容となった。
エデュケーターズプログラムについて: 宮井あゆみ
「ゲーム教育の論文発表」取材・文: 青木美穂 (アラスカ大学)
「ゲーム教育のワークショップ」取材・文: 青木美穂 (アラスカ大学)
「ゲーム関連のコースについて」取材:尾形美幸、文:篠原たかこ
写真:尾形美幸
Vol.32のレポートでは、ルーカスフィルムアニメーションの教育システムとデジタルキャラクターメイキングを紹介する。
また、エデュケーターズプログラムでは、専門家育成だけではなく、一般の人を対象にした教育事例も紹介したいと考え、「トーク」というセッションを設けた。今回のレポートでは紹介できないが、子供からシニア、障害を持つ人を対象にした3つの事例の発表があった。
http://www.siggraph.org/asia2009/for_attendees/educators_program/education_talks/