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アドビ サンノゼ本社 訪問レポート
ダイナミックメディア プロダクトマネージメントディレクター
サイモン・ヘイハースト氏インタビュー
2007.09.13

●アドビ本社を訪問


 SIGGRAPHに先駆け、カリフォルニア州サンノゼにあるアドビシステムズ本社を訪ねた。

 お会いしたのは、アドビのダイナミックメディア・プロダクトマネジメントディレクター、サイモン・ヘイハースト氏。本社の会議室でAdobe Media Player、Creative Suite CS3、アドビの将来の展望などについて聞いた。ノーネクタイで会議室に入ってきたヘイハースト氏はとてもきさくなイギリス人だった。アドビとその製品について情熱的に話してくれた。

●消費者が本当に求めるテレビを実現
 インターネットの普及とブロードバンドの浸透によって、映像の世界はこれまでの放送、映画といったメディアに加えて、インターネットもその一角を担いつつある。さらにはインタラクティビティやリアルタイム性といったコンピューター、インターネットの特徴を生かした、新しい映像コミュニケーションメディアが誕生しつつある。方や、世界的に「通信と放送の融合」が進みつつある中で、メディア業界全体が大きな地殻変動のまっただ中にいる。

 そうした「地殻変動」の機動力の一つともいえるのが、インターネット上で簡単・安全に映像を配信できるようにするための各種のツールだろう。中でも、今年4月のNAB会期中にアドビが「次世代のインターネット動画ソリューション」として発表したAdobe Media Playerは、これまでのアドビ システムズ社のインターネット動画ソリューションをさらに拡張させるものとして注目される。Adobe Media Playerの大きな特徴は、インターネット上での映像配信の事業収益モデルにフォーカスを置いている点だろう。動画広告をコンテンツ再生の前、中、後など、自由に挿入できるほか、視聴者の閲覧の状態(オンライン・オフライン)によって、広告の内容を変えることもできる。SMILを用いて、再生中の動画に広告を挿入表示したり、視聴者のクリックをトリガーにして広告ウィンドウが開くといったことも可能だ。また、ダウンロードしたコンテンツの内容を変更できないようにするDRM機能によって広告を削除できないようにしたり、ダウンロードしたPC以外では再生できないといった機能も持つ。コンテンツを提供する側が、収益性を確保するための機能を持たせることで、リッチなコンテンツがそこに登場できる素地ができる。当然それによって、多くの視聴者が集まり、メディアのエコシステムが動き出し、成長することが期待される。

 Adobe Media Playerは今夏にベータ版を公開し、北米では今秋にも正式版を公開予定。日本語版は2008年初頭に公開する計画。

 Adobe Media Playerはまた、同社が提供するモバイル動画再生技術のFlash Liteなど、その他のメディア向けの動画技術や、モーショングラフィックス制作のためのAdobe Creative Suite 3 Production Premiumといった製品をはじめとしたさまざまなメディアオーサリングツールや、圧縮とライブストリーミングを可能とするAdobe Media Encoderなどと補完関係にある。

●視聴者、放送事業者、ネット制作者の誰もがメリットを享受
 今回の訪問では、Adobe Media Playerがメディアが融合していく中で、どのような役割を果たしていくかについて、また、今後クリエイターやコンテンツ開発者が期待されると思われることについて聞いた。ヘイハースト氏は視聴者、ネット制作者、放送事業者の3つの立場からの視点を説明し、「誰もがMedia Playerによってメリットを享受することができる」と説明した。

 まず、視聴者としてのメリットは、「自分が好きなコンテンツにすばやくたどりつける」だけでなく、「好みそうな番組を提案してくれる」といったインテリジェントな機能がAdobe Media Playerにはある。また、パソコン以外のメディアで高品質な映像を楽しむことも可能だ。フルスクリーン再生、ビューワーのレーティング、テレビ番組や動画のポッドキャストなど、メディアを意識せずに、自動的にダウンロードできる機能も持つ。ウェブ上で人気のある動画フォーマットをブラウザー以外で再生することも可能だ。

 次に、ネットのコンテンツ制作者にとって、大きな課題は、コンピューターのさまざまな規格の違いだ。互換性という本来ユーザーにとって重要な使い勝手の部分が比較的ないがしろにされているが、アドビは以前から他の規格とは競合しない、オープンなアプリケーションを開発してきた。これは、コンテンツ制作者にとって、一つのコンテンツを多くのメディアに展開できる点で大きなメリットだ。

 最後に、放送事業者にとって、ウェブへのアクセスを増やすことは今、番組視聴率を高め、さらには、番組に関係した商品のネット販売など副次的な収益にも結びつけるという意味で、大きな期待がかけれらている。さらに、テレビ広告と連動する形で、ネットでの広告展開もまた今後、重要な位置を占めてくることになる。Adobe Flash Media Serverはコンテンツを誰がどこで何時に何人視聴しているのかを把握できるので、広告主に対して効果的なマーケティングを提案することができる。

 Adobe Media Playerは、インターネット上で、消費者が本当に求めていた「テレビ」を提供することが実現できると確信しており、エキサイティングなことだと思っている。

●「メディアの鍵はメタデータ」
 アドビの将来の方向性について聞くと、サイモン・ヘイハースト氏は「メタデータのことしか考えていない、と言っても過言ではないほどメタデータに重点をおいている」という。現在、YouTubeで公開されているビデオの説明は平均2.2単語という。映像を提供しようとする一般の人たちは、意外とそれを説明するためのドキュメントには力をかけていない。アドビとしては、今後、コンテンツクリエーターたちがいかに効率的に、映像に伴うメタデータを作品に埋め込めるようにするかが課題と考えていると話す。

●ハネムーンベビー「CS3」
 ヘイハースト氏曰く「アドビとマクロメディアが結婚してハネムーンにでかけ、すばらしい子供を作って戻って来た」のがAdobe Creative Suite CS3だという。「CS3がもたらした大きな革新は、クリエーターの制作環境に各アプリケーション間のバリアがなくなったことだ」とし、「これによって、制作の効率化が劇的によくなる」と強調する。実際「CS3が実現するワークフローはマックユーザーに非常に魅力的なのか、マック版の売れ行きが予想を遥かに上回る勢い」だという。

 ヘイハースト氏は、また「制作の効率化の恩恵を享受することは、もっと多くのストーリーを伝えることができるようになることにつながる」とし、「制作が効率化することは人材削減という結果になるということにはならない」と述べ、あくまでもクリエイティビティ向上のメリットである点を強調した。

 ただ、「バリアのなくなったツールをすべて同様に使いこなすことは求められていない」とも話す。「もちろん一つのツールだけを習得し、その他のツールがどのように動くかわかっていなければならないが」と付け加えた。

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