Revital HgS

科学における実験では、その実験結果の再現可能性が重視されるため、実験結果に不確性を与えるようなノイズは極限まで排除する必要がある。実験のために用いられる装置や器具は、ノイズが排除されたある種の「真空状態」をつくり出し、維持するためのものであるから、当然、ノイズにまみれた私たちの日常生活からは推し量れることのできない極めてソリッドで純粋なつくりになっている。本作では、そうした装置や器具に対して注がれる、ほとんどフェティシズム的とも言える眼差しを惜しげも無く開示している。そして、その眼差しをもって自然物である辰砂が実験の過程で徐々に自然物としての気配を失っていく様子捉えることで、装置や器具、およびそれらを扱う行為に美を与えるとともに、岩絵具の材料でもある辰砂の新たな芸術的可能性を引き出していると感じた。
(渡邉朋也)

石橋 友也(作者/代表者)、吉岡 裕記(共同制作者)
早稲田大学
インスタレーション