MAZE KING

具体的な何かについて語っているようには見えず、具体的な何かが起きているようにも見えない。初めてこの作品に触れた時は、何についての物語なのかよく分からなかった。しかし、それからしばらくの間、なぜか自分の意思とは無関係に登場人物のセリフが頭の中でこだまのように繰り返し再生され続け、そこに至ってようやく悟った。これは俺のセリフで、俺の物語であると。「やらなければならないことが山ほどある。俺にはそれが分かるんだ。」人生は選択の連続である。選択を先延ばしにできる状況であったとしても、自分自身で進むべき道に疑問を感じていても、前に進まざるを得ない時が確かにある。選択をめぐる様々な葛藤や逡巡。それは、人生を「与えられたもの」からより主体的なものへと反転させた者だけが味わえる醍醐味なのだろう。遠くで「でも、やるんだよ!」と言う声が聞こえる。
(渡邉朋也)

キム・ハケン
東京藝術大学大学院
アニメーション