第8回 学生CGコンテスト
審査講評

大平 智弘
審査委員長・武蔵野美術大学 教授)

大平審査委員長第8回を迎えた今年は過去最大数の応募があり、応募作品の質は昨年に比べて向上していると感じた。佳作以上の入選作個々の講評は作品ごとに付けられたコメントを読んで頂きたいので、ここでは各部門毎に総評したい。

静止画部門はやや停滞感がみられる。そのために今回は最優秀賞を該当なしとして、優秀賞を4作品とした。このような結果になったことは残念であるが、これは作品を制作する以前の心構えに問題があるのではないかと思う。作品に個性的で斬新な強い制作意図が感じられないのである。このような制作態度から人を感動させる作品が生まれるはずはない。強い制作意図があればツールの枠に止まれるわけがない。しかし、相変わらずツールのカバーする範疇で制作しているとしか思えない作品が圧倒的に多い。もちろん例外もある。が、一般にそういう傾向がみられる。このような心構えは制作時間に顕著に現われる。アニメーション作品やインタラクティブ作品の制作時間に比べて、静止画作品の制作時間は極端に短いのはそのせいではないかと思われる。
また、アート志向の作品ばかりで、それ以外の応募がすくないことも気になる点である。これはアニメーションやインタラクティブ部門にも言える。毎年指摘していることであるが、CGは制作プロセスを表わす言葉であって、CGという特別なアートのジャンルを指しているのではない。現代社会の隅々にまでパソコンが浸透している現在、マン−コンピュータ・インタフェースの観点から、コンピュータ内の情報を画像・映像で表現することはジャンルを超えて重要なことである。これに対する斬新な提案を期待したい。CGをただアートのための表現として捉えることは自らCGの将来を狭めることになるという視点を再認識して欲しい。

アニメーション部門はバラエティに富んだ力作が揃い、表現のレベルも技術レベルも向上していると感じた。入賞作の決定までの審査にもっとも時間を要した。結果はこのようになったが、最優秀から佳作までにそれほどの差がないといっていい。ただ、やはりアート志向の作品に偏っている点に物足りなさを感じる。これは静止画部門でも述べたことであるが、もっと広い分野に眼をむけて欲しい。アニメーションは静止画に比べて時間軸が入っている分だけ表現の幅が広いのだから、学生らしく過去の権威や現在の主流に捕らわれない斬新なアイデアで、もっと多様な対象・状況の表現を目指していいと思う。

インタラクティブ部門は昨年に比べて、著しく向上した部門である。今年の特徴は従来のインターネットのサイト設計やパソコンゲームといったコンピュータ内で完結する作品から、現実世界という外に飛び出したインスタレーションが多かったことである。別にコンピュータ内での作品を否定するものではないし、インスタレーションを過大評価する気もないが、今年に限って言えばインスタレーション作品に面白いものが多かったと言える。マン−マシン、マシン−マシンのインタフェースに独自の工夫を要する分だけオリジナリティが発揮されたのであろう。

今回は特別賞として、インタラクティブ部門の作品[コミュニケーショングリル・ちゃんぐ亭]を取り上げた。高度な技術をナンセンスな作品に真面目にまとめ上げた姿勢は特別賞に値する。
また、U-18賞もインタラクティブ部門の[流輝祭公式ホームページ]が獲得した。高校生らしい素朴な素材を高校生ばなれした作品に仕上げた点が評価された。学園祭のよい金字塔になっただろう。

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