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現場の第一線で活躍する制作会社の代表の皆さんに、実際にCG-ARTSの検定を受験いただいて、制作現場において検定の内容は役立つのか、検定の合格を目標に知識を学ぶことは意味があるのかなど、ご自身の体験を通して感じた率直な思いをインタビューしました。

今回ご協力いただいたのは、「自分たちの理想とする開発者集団を自分たちの手でつくろう」という信念のもとにゲーム開発を手掛けている株式会社リズの磯野社長。『人間の持つ5感に心を加えた6感(HEXA)を躍動(DRIVE)させるようなコンテンツ』を作ることに挑戦し続ける株式会社ヘキサドライブの奥田マネージャー。「お客様の喜びと満足のため みんなの幸せのため 新しい楽しさを創造する」という企業理念を堅持し、コンピュータ・エンタテインメント業界の先駆者たらんという心意気のもと、スマートフォンアプリとVRコンテンツを中心に開発を進めている株式会社ヴァンガードの杉山社長。1999年にコンシューマーの開発会社として設立して以降、高い技術力を武器に様々なプラットフォームでゲームの開発をしてきた株式会社ランド・ホーの須藤取締役。
真剣勝負で挑んだ「CGエンジニア検定エキスパート受験対決」の結果はいかに!

自分の立ち位置を知る

ー 皆さん、合否結果が気になると思いますので、さっそく発表します。9割以上の正答率が杉山さん、続いて8割以上が奥田さん、7割以上が須藤さん、磯野さんという結果になりました。結果を受けての感想や勉強方法などについてお聞かせください。

株式会社ヴァンガード 杉山社長
株式会社リズ 磯野社長
株式会社ヘキサドライブ 奥田マネージャー
株式会社ランド・ホー 須藤取締役

杉山智則氏(以下、杉山):一番というのはうれしいですね!実際、かなり勉強しました。本当に勉強しがいがありました。テキストブックと問題集を勉強すると、どのあたりが出題されるか掴みやすいですしね。

磯野貴志氏(以下、磯野):試験日の1ヵ月前からテキストは何となく手に取ってはいたんですが、テキストを読んでいると不思議と眠くなるんですよね(笑)だから、結局は前日に慌てて猛勉強したんですが、どうにも専門外のところはテキストを読んでも頭に入ってこなくて…。これはまずいと思い、問題集を一通り解きました。そうすると出題の傾向がみえてきて、攻略できるぞっ、て思えました。行列の変換などは、ネットで調べながら勉強しましたし、何よりも問題集の解説がとっても役に立ちました。解説を読むことで、わからなかったところが理解できました。

奥田仁一郎氏(以下、奥田):勉強を始めたのは試験の2週間前からですね。おもに土日をつかって。テキストを斜め読みしたあと、あたまから一字一句理解しながら読み進めました。ただ、自宅ソファで読んでいたので、磯野さんと同じく、いつの間にか寝てしまっていることもありましたけど(笑)。テキストで一通り内容を把握し終えたあと、前回の問題と問題集を1回ずつ解きました。

須藤順一氏(以下、須藤):前日に慌てて勉強しました。モデリングは昔やっていたので自信はありましたが、可視化の問題は範囲外でした。

杉山:私はまず1ヵ月ぐらいでテキストを一通り読んでノートに重要語句などを書き出したあと、問題集を解きました。解らないところはテキストを読み返し、間違えたところをノートに書き留めることを2回しました。ノートは問題集の解答用と、覚えるべきものをまとめたものを各1冊用意しました。問題集は2回解きましたが、2回目はほとんど間違えませんでしたね。一日1時間程度勉強しましたが、久しぶりでとても楽しかったです。

磯野:杉山さんはもともとすごいと思っていたけど、やっぱりすごい。ノートに書いて、きちんと理解して覚えるということが、ほんとうにすごいです!感服しました。

奥田:僕だったら、途中で嫌になっちゃうな。

杉山:いやいや、数日の勉強で受かるほうがすごいよね。

奥田:一応、自分の土俵ですから受からないと(笑)

須藤:私はまず前回の試験問題を解いてみたのですが、意外と知らないことが多かったので、テキストを一通り読んでから、試験前日に問題集を解きました。7、8割は正解していたので、少しホッとしましたが、ほぼ一夜漬け状態でしたね(笑)あ、でも知的財産権の問題のことがすっかり抜けていて。。。。勉強し忘れました。

奥田:知的財産権ですが、テキストの本編ではなくアペンディクスに載っていたので、出題はされないのかと思って勉強しませんでした。ちょっとトラップにかかった感じですね(笑)

磯野:僕は以前にもCG-ARTSの試験を受けているので、出題されるのはわかっていましたが、テキストの構成からすると、出題はなさそうに思えちゃいますよね。でも、出題は必ずされるので、しっかり勉強しましょうね。

須藤:モデリングは、仕事で携わっていたので難なく解けましたが、もし、知識ゼロから独学で挑戦しようとすると、少々難易度が高いかもしれないですね。

奥田:世代によっては、相当しんどそうな内容だと思いました。僕は3Dが業界に進出してきたころから技術の進歩と一緒に仕事をしてきたので知識としてあるけれど、ゼロからスタートする人がこれらを全部、習得するには時間を要すると思います。

須藤:我々の時代は、ライブラリもなくて、自分たちでプログラムを一から組んでいたので土台となる仕組みもわかりますが、今は、ここまで知らなくてもある程度、何となくできてしまうことがあると思います。そういう意味では、CGエンジニア検定は基礎知識というかCG技術のベースを問う問題も出題されるので、世代によっては難しいと感じる試験かもしれませんね。

奥田:僕はゲーム業界を目指して数学科に進みましたが、数学が何にどう役立つかは教えてもらえませんでした。だから学生時代に、数学はCGに役に立つよ、3Dのために使えるんだよ、と教えてもらえるといいですね。そうすれば、数学に興味がない学生でも興味を持てるかもしれない。

磯野:僕は美大を卒業したんですが、三角関数は、3Dを勉強して始めて面白いと思いました。

杉山:私は、コンピュータをやりたくて、数理科学科に進みました。

須藤:コンピュータのハードウェアに興味があったので電子工学科に進んだのですが、ゲームも大好きだったので、ゲーム業界に進みました。

ー 以上のお話から皆さんのご経歴やこの業界に進んだ動機はさまざまですが、今回、受験をされた動機などをお聞かせいただけますでしょうか。

杉山:今の業界やニーズに合っているか、試験内容が実際どうなのかを知りたいし、せっかくの機会なので、よしっやってやるぞ、という感じでした。

奥田:本当は受けたくないというか躊躇しました(笑)ですがCGエンジニア検定ということで自分の土俵でもあるし、力試しをしてみるかな、と。

磯野:CG-ARTSさんのイベントやセミナーでのトークをするときに、検定そのものを知らないと語れないし、伝わらないな、と思い、前回(CGクリエイター検定)は受験しました。ただ、今回は純粋に今の自分がどれだけの力を持ち合わせているのか、自分の立ち位置はどうなのか、を知りたくて受けることに決めました。

須藤:正直、あまり深く考えずに受けてみることにしましたが、どういった内容の問題が出題されているのか興味がありました。

ー 試験問題について、印象に残っていることなどありましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

奥田:共通問題は、マークシート用紙の解答欄の位置がわかりにくかったです。

杉山:そうでしたね。私もうっかり共通問題の解答を第2問からマークしてしまったので、最後の問題の解答欄が無くなってしまい、すごく焦りました。試験時間中に気づいて、書き直せたからよかったですが。

須藤:僕は、大丈夫でしたよ!

磯野:僕も大丈夫でしたよ。受験票や問題冊子、マークシート用紙に記載されている注意事項はものすごくきちんと読みましたからね。大事です。それよりも、試験そのものじゃないんですけど、筆箱も時計も持っていなかったので、前日に慌てて準備しました。そっちのほうが、実は焦ったかな(笑)。共通問題の知的財産権は、しっかり抑えたほうがいいですね。範囲がそれほど広くはないので、きちと勉強すれば点の取れる問題だと思います。

杉山:そうですね。知的財産権の問題は、抑えやすいですね。

奥田:用語を問う問題は、記憶力だよりになるので、苦手でした。

磯野:普段のよび方と異なっている用語の問題は、解答に迷いました。たとえば、鮮鋭化ならシャープネスと表記してもらうほうがわかりやすいですね。同義の用語でも業界によっては、よび方が異なっていたりするので、どれか1つに合わせることは難しいかもしれませんが。

須藤:勉強する前は知らない用語などもありましたが、予習をしたおかげでその辺はクリアできました。

磯野:集合演算の問題は、和、差、積の演算記号を忘れていましたが、設問文にきちんと書かれていたので、解答できました。本来は覚えておくべきことですが、演算記号の説明のように、不必要なところで受験者を悩ませないような工夫が問題全体にされている印象を受けました。

杉山:問題の本質とは違いますが、正解答がウばかり連発したりすると、不安になりました(笑)

(一同笑)

奥田:光源の位置関係からレンダリング結果を問う問題が出題されていましたが、過去にはあまり出題例がない新しい問題でしたね。良い問題だと思いました。あと、跳ね返りながら閉領域を動く点の軌跡を推測するアニメーションの問題も、良い問題ですね。初期位置、初速度、反発係数を与えて、限られた時間のなかで点が移動するんですが、初期位置と初速度だけならば単純なグラフになり簡単ですが、跳ね返りが入ることで若干複雑になる。でも、ゆっくり丁寧に考えれば答えを出せる問題ですね。

杉山:画像処理の問題ですが、これは安定的に得点を取りやすい問題ですね。

須藤:画像処理は仕事ではあまり使わないので、この領域は過去問題で勉強しました。可視化の問題は、全然わからなかったです。

磯野:ゲーム業界ではあまりやらないことかもしれないですね。専門外ということで、ちょっときつかったです。でも、システムの問題は、わりと最近のことが問われていたので、簡単でした。

杉山:実は意外と知らなかったこともあって、テキストを読んで覚えました。最初にも話しましたが、マークミスをしていたので、書き直しの時間も残しておかなくちゃいけないし、最後の問題ということで慌てて解きました。

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