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2012/09/12更新

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CG-ARTSのテキストや検定受験を推奨してくださっている理由について教えてください。

専門分野の研究をしているので、必然と論文を読むことが多くなります。ただ、論文を読むにしても土台となる基礎知識があるのとないのとでは、理解度が大きく変わってきますよね。そこで、研究室配属間もない学部4年生には「コンピュータグラフィックス」テキストを精読させています。何か困難な課題に直面したときに、自ら解決し、より多くの知識を吸収できる土台づくりのためなんです。検定受験に関しても同じようなことで、専門分野に進むまえに、一旦基礎知識の部分をオーソライズさせる目的で推奨しています。いくら目標や目的があっても、それ以前の部分が疎かであっては、半歩進むのにも時間を要します。料理に例えると、ラタトゥイユをつくろうとしたとき、下準備としてまずはいろいろな野菜を同じ大きさに切り揃えますよね?そうすることで、短時間で味もしみ込み、口にいれたときの触感も格別なものになります。下準備もせず野菜を丸ごと鍋に入れて煮込こんでは、でき上がりの差が歴然です。ですから検定受験やテキストは、本格的に物事を行う前にあらかじめしておく必要不可欠な準備、として学生たちに薦めています。


今後の先生ご自身の、またはこの業界や教育の発展について感じていることを教えてください。

リアルタイムスキンシェーダ
(半透明物体の高速描画方法。
多数のゲームタイトルに採用されています)

たくさんの経験をさせて刺激をし、その結果、良い人材は育ってきていると思います。実際に、研究室で開発した半透明物体の高速描画法がスキンシェーダとしてコーエーテクモゲームスの『戦国無双3 Z』、『真・三国無双6』などに採用されました。ただ、いまの日本には、そういった人たちの元気をもっていく場が少ないと感じています。ですから、英語の壁があるから誰でも皆という訳にはいきませんが、今後は海外に目を向けていくことが大切だと思います。なんとなく、日本は新しいものに目を向けなくても、それなりにまわっている節があるので、新しい試みを積極的に取り入れていく、ハリウッド的な思考がもっと必要かもしれません。そういった課題を産学連携して、解決していけるとよいですね。

取材:CG-ARTS 篠原たかこ・影山由夏、テキスト・写真:影山由夏

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森島 繁生 先生

早稲田大学 先進理工学部
応用物理学科 教授


早稲田大学理工学部教授/工学博士。87年東京大学大学院博士課程修了。同年成蹊大学工学部専任講師。1988年同大助教授、2001年同大教授。2004年より現職.この間、1994年から1995年トロント大学客員教授、1999年より2008年ATR客員研究員、2008年より2010年NICT客員研究員。現在、明治大学非常勤講師、 新潟大学非常勤講師,早稲田大 学セキュリティ・セイフティ研究所所長を併任。1991年電子情報通信学会業績賞、2001年インタラクションベストペーパー賞、 2009年WISSソネット賞、2010年電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞受賞。顔学会、画像電子学会、芸術科学会各理事。