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Vol.26 SIGGRAPH2009にみる日本人の活躍を追う!CGとインタラクディブ技術の祭典SIGGRAPHとは?


 
アートとデザインの作品を3つの視点で紹介

SIGGRAPH2009のアートとデザインの作品展としての側面を紹介する。毎年、展示方法はさまざまだが、今年は「バイオロジック」、「ジェネラティブファブリケーション」、「インフォメーションエステティックショーケース」という3つのテーマで構成されていた。

今年の公募作品のテーマは、「バイオロジック−デジタルライフの自然史」。10カ国からの応募総数400のうち11の作品が選ばれ展示された。
バイオロジックには「生物学的な」という意味があり、生命体を感じさせる作品や自然とテクノロジーをテーマとした作品が集められた。日本からは首都大学東京の串山久美子教授の『Fur-Fly』が紹介された。アナログとデジタルのその間を目指して制作したというこの作品は、人が手をかざすとふわふわとしたうさぎの毛で覆われた表面が、光を放ちながら凹凸に変化する生物を感じさせる。


招待作品のテーマは「ジェネラティブファブリケーション」。生成的な制作という意味で、形をあらかじめ定義するデザインや生成的なアートを指している。アートギャラリーの委員長イローナ・ビンゲント氏はこのテーマを象徴する作品として、「モニュメンタルネット(モニュメントとしての網)」という作品あげた。これは、エンジニアとアーティストとのコラボレーションで生まれた作品で、アーティストの想像のもとにエンジニアの計算によって設計され実現したもので、大きさは非常に大きく、今回展示される雛型でも外周10メートル以上、直径4メートル以上もあるという。他にも、生物学者と建築家、デザイナーと技術職人など、さまざまなコラボレーションの4ヶ国8作品が展示された。

近年トレンドになっている情報美学の世界を紹介する展示が「インフォメーションエステティックショーケース」。データや情報を美しく表現した26作品が展示された。
日本からは、第12回メディア芸術祭アート部門優秀賞の「Touch the Invisibles」が展示された。「Touch the Invisibles」は指に貼り付けたデバイスの振動が、ディスプレイの中の人影を倒した際に発生し、触ったような擬似体験をさせる。この基本コンセプトはメディア芸術祭の展示と同様だったが、人を倒せば倒すほど、筐体の中の泡が増えてゆき、またディスプレイの中にも泡形状を連想させる境界線が登場するなどの改良が施されていた。その他、時間と地理情報の表示ソフトを使い、新宿という地域が第二次世界大戦後の混乱期からどのように復活してきたかを視覚化した野口靖さんの「c-loc Software」が展示された。

昨年から変革をみせたコンピュータアニメーションフェスティバル

SIGGRAPHの中でも特に注目され、来場者も多い看板イベントとして名高いコンピュータアニメーションフェスティバル(CAF)。SIGGRAPH 2007までは、審査委員が選出した秀逸の作品を「エレクトロニックシアター」と題して大会場で上映し人気を集めていたが、昨年からこの形式が変わった。今年は「アフターヌーンシアター」として全135作品を上映するほか、月曜から木曜までの毎晩「イブニングシアター」と題して、全上映作品から選ばれた審査委員推薦とキュレーター推薦のそれぞれ13作品、計26作品が特別上映された。新しいCG技術の成果発表の場として映像作品が脚光を浴びた時期に比べると、華やかさは感じられなくなったが、世界最高峰のCG映像作品が集結していることには変わりがない。

イブニングシアター初日には、『スターウォーズ』、『ジュラシックパーク』、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』などのビジュアルエフェクトを手がけたスコット・ファーラー氏(ILM)より受賞作品が発表され大いに賑わいをみせた。

以下にノミネート作品と受賞作品を紹介する。日本の作品は惜しくも受賞/ノミネートは逃したが、日本からはオムニバス・ジャパンの古賀庸郎氏制作『CR 宇宙戦艦ヤマト2』、東京大学の河口洋一郎氏制作『Hydrodynamic Butterflies』、昨年度のメディア芸術祭アニメーション部門優秀賞の木村卓氏の『KUDAN』や第8回学生CGコンテスト佳作、第10回アニメーション部門審査委員推薦作品『雲散霧消』の早川貴泰氏の新品『Jin Kai Syu』(右画像)など11作品が上映された。
なお、最優秀賞に選ばれた『French Roast』は、来年2月に開催されるアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされる予定となっているので注目したい。

最優秀賞
 受賞作品『French Roast』The Pumpkin Factory(フランス)
ノミネート作品
  『Engel zu Fuss (Angel Afoot)』Studio Soi GmbH & Co.(ドイツ)
  『Silhouettes of Jazz』Dominik Kaser, Martin-Sebastian Senn, Mario Deuss, Mark Pauly, Niloy J. Mitra(スイス)

WTF(Well Told Fable)賞
 受賞作品『Unbelievable Four』Sukwon Shin(アメリカ)
ノミネート作品
 『friends?』Sveinbjorn J. Tryggvason(アイスランド)
 『Fernet 1,882 “Mini Cab Company”』Pickle Visual Effects & Animation (アルゼンチン)

学生作品賞
 受賞作品『Project Alpha』The Animation Workshop(デンマーク)
ノミネート作品
 『Dim Sum』Ringling College of Art & Design(アメリカ)
 『The Incident at Tower 37』Hampshire College(アメリカ)

審査員賞
 受賞作品『Dix』The Mill(アメリカ)
ノミネート作品
 『Love_Child』(台湾)
 『Anima』Supinfocom Valenciennes(フランス)



 

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