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秋田大学などがポスターで手指のモーションキャプチャーの研究発表
2007.07.26

■全身のモーションキャプチャーと同時取得が可能に

手指のモーションキャプチャー用入力装置

 秋田大学を中心とした研究グループが開発した「手指(しゅし)のモーションキャプチャー」に関する研究が、SIGGRAPHのポスターで紹介される。ポスターとは、呼び名の通り、会場に研究成果をポスターにして貼り出し、担当者がポスターの前で、研究内容について説明を行うもの。
 同グループは、昨年のSIGGRAPHでもポスターに採用されている。昨年は、ピアニストの両手の手の動きをすべてモーションキャプチャーしたデータからCGで再現することに成功。今年は、全身のモーションキャプチャーデータと手指のモーションキャプチャーデータを合成している。研究グループのメンバーの一人である、秋田大学 工学資源学部 電機電子工学科 講師の水戸部一孝氏は「これまで手作業で組み合わせていたが、自動的に合成することができるようになった」という。
 手指と身体のモーションキャプチャーデータは、同時に取り込むことができる。一人の役者に装備した手指のモーションキャプチャーと身体のモーションキャプチャーのデータを1台のパソコンで同期して入手することができる。

■小型の発信機を用いて自由な手の動き可能に
 手指のモーションキャプチャーは、磁気式(ポヒマス製)を使用している。手の動きを取り込む場合、光ファイバーを用いた装置もあるが、水戸部氏は「当初、光ファイバーを試みたが、繊細な指の動きをとることができなかった。角度からは指の再現はできないと思った」と話す。水戸部氏はその理由として、「人の骨は曲がるときに回転の中心がずれる。そのため、角度だけで計算できない。今回の方式では、骨の位置と姿勢を測り、XYZの位置座標と動きの情報を磁気式で記録できるようにしてる」。そのため、磁気式であるにもかかわらず、カリブレーションの必要がないという。
 磁気式のモーションキャプチャーの場合、金属や他の磁気の干渉を受けるといったデメリットがあるが、装置が小型化し、磁気の発信装置(トランスミッター)を手の甲の上に設置できるようになったこと、また、サンプリングレートが240Hzまで高まったことによって、トランスミッターからの測定範囲が40センチメートルの範囲しか測れないが逆に、そのために、ほとんど他の干渉を受けない。また、踊りのように何メートルも移動する場合でも、手の甲にトランスミッターが取り付けられているので、手指の動きをとらえることができる。光学式のセンサーを手の甲につけることによって、そこからの相対位置を計算して、座標を割り出すことができる。
 手の甲には16のセンサーを装着して、動きをとることができる。「通常のアニメーションで用いるには必要十分」(水戸部氏)という。上記のピアノの演奏の計測のほか、野球のピッチャーの手の動作解析などで、ピッチャーの投球時の指先の玉離れの様子なども、解析できる程度までレベルが高いと話す。
 手指の装置は磁気式だが、全身の動きのモーションキャプチャーは、光学式でも、組み合わせることができる。
 現時点で、組み合わせてとることができ、位置精度も十分なレベルで測ることができる。あとは、ニーズがあるかどうかを探っており、要望があれば、提供することができる。

■日本の伝統芸能のデジタル保存のプロジェクト
 「分解能が非常に高く、1000分の4ミリ(4ミクロン)の動きの変化を計測できる。この動きは、カメラによる撮影データからでは不可能。指の回転についても、400分の1度の回転を解析することができる。ピアノの演奏家の指の動きは、弾いているときだけではなく、鍵盤から手を浮かせたときの動きも重要。そうした細かいニュアンスを再現することが可能。優れた演奏家のデータは音楽を学ぶ生徒にとっても参考になる」
 現在、ピアノの演奏を解析したデータについての論文を執筆中という。
 手指(しゅし)用モーションキャプチャーは、総務省のSCOPE(戦略的情報通信研究開発推進制度、http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/scope/)の研究助成金による「伝統芸能を保存・継承する研究プロジェクト」の一環として秋田大学が中心となり産学で開発した技術。
 SCOPEは、情報通信技術(ICT)分野の研究開発における競争的研究資金制度。ICT分野のイノベーションを生み出すことを目指し、総務省が定めた戦略的な重点研究開発目標を実現するための独創性・新規性に富む研究開発を支援する。
 研究室のHP(http://kc6.ee.akita-u.ac.jp/)では、手指用モーションキャプチャーによって作成した動画を公開している。SCOPE構成メンバーには、 秋田大学のほか、ノースアジア大学、秋田県産業技術総合研究センター、わらび座 DAF、横浜電子工業、マザーズシステム・ジャパンなどが参加している。

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