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SIGGRAPH 基調講演(Featured Speaker)2
  EA上級副社長兼チーフ・ビジュアル&テクニカル・オフィサー グレン・アンティス氏が講演
2007.10.11

●デジタル時代の物語表現で新手法


 Featured Speakerでは、8月6日のグレン・エンティス氏のスピーチに続き、 8月7日には米国を代表する漫画家・作家であり、新しい表現方法に挑戦しているスコット・マクラウド氏が講演した。マクラウド氏は、CG時代における物語の作り方、伝え方ともに、自らが挑戦しているオンラインコミックのさまざまな試みとその可能性について、熱っぽく語り、会場から喝采を浴びた。

●ネットはコミックの可能性を広げる
 マクラウド氏がSIGGRAPH2007のスピーカーとして招かれたのは、著名なマンガ家であり、作家であるばかりでなく、デジタル時代のストーリーテリングについて挑戦的な試みをする前衛的なオンランコミック作家でもあるからだ。コミックの世界だけでなく、ゲーム、アニメーション映画の世界にも影響を与えている「グル(導師)」として評価されている。
 マクラウド氏は、スピーチの冒頭、彼がマンガ業界に入るにあたって影響を受けた人びとについて語り、アート・スピーゲルマン氏が描いたコミック「Maus」(マウス)などを紹介した。
 現在のマンガ、コミックについての位置づけとして、印刷メディアだけでなく、インターネットにも新たな機会があるとした。その中で、マクラウド氏は「コミックの関係者は、(インターネットの)3次元的世界のなかで、「永続性のある転換」「成功しうる転換」を見つけようとしている。コミック業界にとっても、テクノロジーの最前線にいることは重要である」と述べ、自らが試みているオンラインコミックの実例も示した。
 オンライン出版、電子出版は、印刷メディアである書籍のページ形態、割り付け、構成を真似たり、シミュレートしがちだが、インターネットやコンピューター・ディスプレーには、表現上には何の拘束もなく、印刷メディアにこだわるべきではないことを示した。
 マクラウド氏はまた、マンガ、コミックの歴史をひもとき、その始まりが約三千年前の古代のエジプト遺跡に描かれた壁画やヒエログリフ(ピラミッドや神殿に書かれている絵文字)にも見ることができることを写真を見せながら解説した。ストーリーテリングの基本的な手法として、絵の位置が移動することによってストーリー(時間)の流れを示しており、現代の印刷メディアのマンガのコマ割りとそう変わっていないとした。
 電子メディアの発達については、90年代初めのマルチメディア狂騒の時代からブラウザーの誕生から、インターネットの世界が爆発的に広がった経緯を説明。従来、音声・音楽、グラフィックス、テキスト、動画はそれぞれ個別のメディアが別々に扱っていたが、それがPCでも扱えるようになり、いまでは一つのメディア、一つのコンテンツの中で統合的に扱えるようになっていることを紹介した。

●ディスプレーの自由な特性を生かす
 マクラウド氏はこうした経緯を紹介した後、現在の状況について、コミック作家の立場から次のように話した。「私たちは今、さまざまな試みをオンライン上ですることができる、とても豊かな時代にいる。インターネットやコンピューター・スクリーンは、コミックにとって、新たな可能性であり、私たちは、まさに『永続性のある転換』に直面している」
 コンピューターやインターネットによって、物語を視覚的に伝える手法が進化し、商業コミックは技術革新の世界のまっただ中にあると語り「こうした技術を取り入れることにより、コミックは(時代の)最前線に躍り出て、さらに豊かな表現力を得る可能性がある」と述べた。
 「今後、ストーリーテリングの手法はさらに進化していくことだろう。物語の作り手は、いまはまだその表面をひっかき始めただけに過ぎない」
 「どんなメディアにおいても、ストーリーテリングを成功させるキーは、(作り手が)メディアを理解し、メディアの特性を把握した上で物語を創り出すこと。その上で、効果的で面白いアプローチを取ることである。ゲーム開発者が、コミックを含むほかのメディアの作家を雇って、インタラクティブな経験を作り出そうとするときも、これが重要になる」(マクラウド氏)
 実例として、氏が実験中の、オンラインコミックの新たな表現形態をデモした。マンガのコマ割りをそのまま見せるのではなく、ディスプレーの特性を引き出した表現方法だ。主な作品は<http://www.scottmccloud.com/>で見ることができる。
 オンラインコミックでは、コマ割りのページをそのまま再現する必要はなく、むしろ閲覧するディスプレーの特性を生かすべきである。
 その一つは、コミックのコマが画面の中心部をクリックすると、次々に次のコマが飛び出すように表示される形態であったり、ストーリーボードがあみだ籤を横にしたようになっていて、単に横に進むばかりではなく、縦・横にジグザグに移動しながら、ときには蛇行をしたり、クロスワードパズルのようなコマ割りでストーリーが進んでいるなど、印刷物では表現不可能なスタイルだ。
 漫画家やアーティストは今、ウェブ上で読者に何を提示できるかについて、新たな手法を発明していくことが求められており、積極的に挑戦しなければならないと語った。

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