SEMINOR セミナー

[SPRING]Webデザイン指導者向けセミナー 東京・大阪にて開催

BACK

2008春期CG-ARTS教育セミナー

変化の激しいWebデザイン業界。CG-ARTS協会は教育機関の指導者のみなさまを対象に、業界最新動向の紹介と今後のWebデザイン教育を考えるセミナーを、東京・大阪の各会場にて開催いたしました。今回はWebデザイナーに必要な知識とスキルをテーマに、制作プロダクションの方々に仕事への取り組み方や発想法を含め、幅広く解説いただきました。2会場で約80名の方々にご参加いただきました。ここでは東京会場での模様を中心に報告いたします。

開催地区・日程・会場

【東京】 3月26日(水) 日本電子専門学校 9号館メディアセンター(東京都新宿区百人町1-25-4)
【大阪】 3月29日(土) トライデントコンピューター専門学校 大阪(大阪市東淀川区西淡路1-3-12)

プログラム
10:00 受付開始
10:20 主催者挨拶
10:30 「経営層からみたWebデザイナーに必要な知識とスキル」
〜変化の激しいWebデザイン業界においてWebデザイナーに求められる知識・スキルは何か?
学生時代に研鑽しておくべきことは何かを紹介します〜
講師:福田 好孝氏 株式会社博報堂アイ・スタジオ 取締役常務
秋谷 寿彦氏 株式会社博報堂アイ・スタジオナレッジ&コミュニケーション推進室 室長
12:00〜
13:00

昼休憩

13:00 「Service Oriented Architectureから見るWeb新技術」
〜次々に開発されるWeb技術、学生とともに何を学ぶべきかを解説します〜
講師:酒井 雅裕氏 株式会社マイクロネット 執行役員 
北海道大学大学院情報科学研究科博士後期課程
14:40 「クリエイティブ脳力を鍛える〜デザイン発創法」
〜グラフィックデザイナーやWebデザイナーがいかにクリエイティブ脳力を磨くか?その発創法とトレーニング法を紹介します〜
講師:片桐 敏雄氏 株式会社ベーシッククリエイティブ 代表取締役社長
15:50 「Webデザイナー&CGクリエイター検定分析」
〜効果的な試験対策をしていただくために過去問題から正解率の低い問題をサンプルとした解説や、今後の展望についてお話します〜
講師:CG-ARTS協会
17:30 終了


経営層から見たWebデザイナーに必要な知識とスキル
博報堂アイ・スタジオ
取締役常務執行役員 福田 好孝 氏
ナレッジ&コミュニケーション推進室長 秋谷 寿彦 氏

■社員としての基本動作
Web業界は若い業界で、博報堂アイ・スタジオの社員も若い。そのため、驚くような行動をとる社員もいる。
そこでデザイナーとしての能力以前に、会社で仕事をするうえで社会人として守っていかなければいけないこととして「アイスタ徹底の15カ条」がある。
例えば、メールを送るだけでなくできるだけ口頭でも伝える。情報が正確に伝わったかをしっかりと確認する。
「出来ているつもり」で行なったことから起こり得るミスを無くすなど、極めて当たり前なこと15項目を文章化し、ビジュアルと共にポスターとして社内に掲げている。Webデザイナーといえども、社員としての基本動作が出来ることが質の向上に繋がると考えている。

■学生に必要な知識とスキル
学生がWebデザイナーを目指すにあたって、以下のような知識とスキルを身につけてもらいたい。

▼知識
・ソフトの機能を知っている。(Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Flash・・・)
・HTML(XHTML)、 CSS、 簡単なJavaScriptやActionScriptを知っている。
・Webサイトの機能を知っている。(ブランドサイト、企業サイト、キャンペーンサイト)
・専門用語を知っている。(グローバルナビゲーション、サイト構造など)
・オリエンから納品までのフローを知っている。
・Webサイト制作に携わる人達の役割を知っている。
・映像制作の技術やフローを知っている。
・正しいビジネスコミュニケーションを知っている。

▼スキル
・ソフトを使いこなせる。(Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Flash・・・)
・綺麗な文字組が組める。
(文字組を制するものはデザインを制する)
・想い描いたイメージをビジュアル化できる。
・ページレイアウトができる。
・簡単なページのソースを組んで公開できる。
学生のうちは現場で仕事をしていないので、現場から得られる力は身につかない。まずは上記の知識とスキルを身につけてもらい、足りない力は現場で成長しながら獲得してもらえればよい。

■制作現場で必要なスキル
ユーザビリティ・Web標準に関心を寄せている企業が増えているので、企業サイトを制作する際には、その点に配慮する必要がある。企業サイトを制作するデザイナーには以下のようなスキルが求められる。
・ユーザーが知りたい情報へ最短で行くためのルート確保(ディレクトリ)
・ページ内の効果的なビジュアル優先度の決定スキル
・配色、色、ボタンの形状などの決定スキル
・ファイル管理スキル
・XHTML、CSS、JavaScript等の構築スキル
(コーダとのコミュニケーションができるように)
・抜けの無い精度の高い更新スキル
・持久力
(制作期間が1年近くになることもある。長い)
CMやグラフィックデザインのように、Webサイトも広告の表現手法の1つと考える企業が増えているので、ブランドサイトを制作する際には、その点に配慮する必要がある。ブランドサイトを制作するデザイナーには以下のようなスキルが求められる。

・CMと同じような表現手法(動画・音・クリエイティビティ)のスキル
・話題性の構築スキル
・CMやグラフィックデザインの制作フローの知識
・Flashを使用した高度な動画表現スキル
・ActionScriptの構築スキル
(ActionScriptを知ったうえでデザインできるように、プログラマとコミュニケーションできるように)
・ビジュアル表現のコンセプト構築スキル
・瞬発力
(制作期間が2〜3ヵ月と短い)

学生は想い描いたイメージをビジュアル化できればよい。しかしプロには、クライアントから与えられた課題を解決するための絵や手法のアイディアを発想し、それをアイディアで止めず企画に発展させ、そのイメージをビジュアル化することができる力が必要。また、そのサイト構築ができる力も必要。
人をあっと言わせるためにどんな手段が一番効果的なのか、また、いくつかある選択肢の中から何を選択するべきなのかまでアイディアを掘り下げる力が求められる。場合によっては、最先端のFlash動画などを駆使することを敢えて捨てて、ローテクなHTMLやGIFアニメを使った方が効果的と判断することもある。そして、裏付けを持って企画を掘り下げたら、最後までそれを通そうとする意志と、公開日までに仕上げられる段取りが求められる。

■これからWebデザイナーになろうとする学生に期待すること
・あらゆることに敏感に・・・
・先入観に囚われず、いろんな方向からの視点を・・・
・自分が表現したものが、どう見られているのか意識して・・・
・そこに楽しさがあるか・・・
・とことんこだわり、妥協はないか・・・

■指導するにあたって大切なこと
明確な目的を達成させるために、どんな手段を取れば良いのかを考えるプロセスを踏ませる。パソコンやアプリの登場で目的と手段が逆転するケースがある。目的は表現したいことを表すことであって、Webサイトを作ることではない。Webサイトをつくることは手段。手段と目的が逆にならないように指導することが大切。
基礎を体系的に知っている学生は、入社後に伸びる。「成長ののりしろ」が大きい。教育現場では、基礎的なこと、体系的なことをしっかり学ばせて欲しい。中途半端に何らかのスキルを持っているよりは、幅広い知識をもっている方が良い。

Q & A
Q:目的と手段が逆転する、具体例とは?
A:プロにはあまりないと思うが、学生はコミュニケーションをうまく取れないことがある。自分はデザイナーだからという理由で、作品をただ見せるだけのプレゼンテーションをする場合がある。プレゼンテーションの際には、自分が表現したかったことは何なのかを説明しなければならない。
Q:コミュニケーション能力を養うための具体的な指導方法は?
A:博報堂アイ・スタジオでは研修をよく行う。研修の中で、企画やプレゼンテーションを実際に行わせ、社員同士によく話し合わせる。最初は面倒くさがる社員が多いが、実際にやらせると良かったという反響が返ってくる。
また、年に数回、自分の仕事内容のプレゼンテーションを社内でやらせ、情報を伝える能力を磨かせている。
Q:グループ作業で統一感を出すためにはどうすれば良いか?
A:個人の思いを否定してはいけない。自分の作品を作る時と、共同で作る時の切り分けが大切。共同で作る場合には、事前に十分に打ち合わせを行い、意志統一をはかる。意思統一ができるまでは作らない。作り始めてからも、定期的にオールスタッフミーティングを行う。
Q:限られた時間の中で、学生にどこまで掘り下げてプログラミングを教えれば良いか?
A:Perlまでは教えなくて良い。HTMLやCSSを理解していれば良い。ActionScriptは基本的な動きがつけられれば良い。
基本をしっかりと学んでおいてくれれば良い。足りない知識は現場に入ってから学んでもらえば良い。

Service Oriented Architectureから見るWeb新技術
〜学生とともに何を学ぶべきか〜

株式会社 マイクロネット 酒井雅裕

■Webデザインコースの学生に、Webテクノロジーを教える際に配慮して欲しいこと
・HTML、CSS、XML、Java、JavaScript、plug-in ex、Flash、CGI、PHP、Rubyなどの「基礎体力」が体系的に理解できていれば、新しく登場する技術にも対応できる。
・Web2.0以降の技術は「サービス指向」で考えるべき。どんなサービスが、誰にとって幸せか、そのサービスを必要とするマーケットの規模はどの程度か、どういう受け入れられ方をするか、といったことを考えるのが重要。
これを考えないと技術論に陥る。
今は、デザイナー1人だけでWebサイトを作成できる時代ではない。プログラマなど、他の専攻の学生と協力して作成することを学ぶべき。
・プログラマやクライアントとコミュニケーションができるだけの技術的なバックグラウンド理解(リテラシー)が必要。
・Mashupのような、短納期、サービス組み合わせ、の演習を行うべき。

クリエイティブ能力を鍛える〜デザイン発創法
株式会社ベーシッククリエイティブ 代表取締役 片桐俊雄

■クリエイティブ能力
問題解決までの最適なプロセスを設計して、最良の結果を生む力である。

■スタイライゼーション
築いて壊す、発想法。1.観察する、2.道具を替える、3.道具に制約を加える、4.シンボルを創造する。
スタイライゼーションは、物事の「起承転結」のステップをたどる発想法である。

■クリエイティブ・アイ・シンボライゼーション
ひらめきを誘発する独自の手法である。1時間の制限時間を設け、白いカードにテーマを書く、その連想を拡げ、発想を逆転させ、要素をずらし、発想を飛躍させる。そうやってアイディアをどんどん展開させ、タイムリミットがきたら、収束させ、ブラッシュアップし、完成させる。

■アイディアが生まれる感動を知る
スタイライゼーションも、クリエイティブ・アイ・シンボライゼーションも、発想の飛躍を促す。発想の飛躍が、クリエイティブの真骨頂。
この発想法を何度も繰り返し、学生にアイディアが生まれる感動をできるだけ沢山知って欲しい。
アイディアが生まれる感動を何度も体験させることで、クリエイティブの「基礎体力」をつけて欲しい。

・今は、デザイナー1人だけでWebサイトを作成できる時代ではない。プログラマなど、他の専攻の学生と協力して作成することを学ぶべき。
・プログラマやクライアントとコミュニケーションができるだけの技術的なバックグラウンド理解(リテラシー)が必要。
・Mashupのような、短納期、サービス組み合わせ、の演習を行うべき。

講師プロフィール

福田 好孝
株式会社 博報堂アイ・スタジオ 取締役常務執行役員/CPO(Chief Privacy Officer)

東京大学教育学部附属学校、電気通信大学大学院修了後、1982年 株式会社 博報堂入社。主にセールスプロモーション領域で、消費者向けプロモーション、イベント、ダイレクトマーケティング、インタラクティブマーケティング、CRM業務等に従事。オランダTBWA/NETHwork勤務、博報堂従業員組合中央執行委員歴任後、1994年 インターネット関連業務を手がけ、1998年 データベースマーケティングの研究/業務開発を行う社長直轄組織「博報堂インパクト」を設立。
デジタル領域の事業開発/業務を担う「インタラクティブカンパニー」を経て、2002年 WebソリューションやWebサイト構築を行う制作会社「株式会社 博報堂アイ・スタジオ」に出向。2000年度オンデマンドアワード大賞(ワン・トゥ・ワン・コミュニケーション部門)受賞。日本プライバシープロフェッショナル協会「CPO委員会」委員、認定CPO研修講師、宣伝会議セールスプロモーション講座講師、他。


秋谷 寿彦
株式会社 博報堂アイ・スタジオ ナレッジ&コミュニケーション推進室 室長

1988年東京学芸大学初等教育教員養成課程美術選修卒業後、松下電器産業グループ系列会社である株式会社クリエイターズグループMACへ入社。松下電器、ビクター、テイチクレコード、ユニバーサルビクターなどの製品およびアーティスト広告を多数制作。1999年ころからWebサイト制作に関わるようになり、2003年に現在の博報堂アイ・スタジオに入社し現在に至る。


酒井雅裕
株式会社マイクロネット 執行役員

1962年生。1998年より(株)マイクロネット、現在、執行役員研究企画部長。2002年度経済産業省北海道経済産業局GIS利活用型産業クラスター形成検討委員会委員。
2002-2007年文部科学省知的クラスター創成事業共同研究員。専門はWeb3D・3DCG・CAD/CAM・OOA・OOD。2007年より北海道大学大学院情報科学究科後期博士課程在籍。


片桐敏雄
株式会社ベーシッククリエイティブ 代表取締役

1972年金沢美術工芸大学/産業美術学科/商業デザイン専攻卒。
1973年(株)日本デザインセンター入社。1978年現(株)ベーシッククリエイティブ設立。現在に至る。商品や企業のマークロゴのデザインから、パッケージデザイン、広告、WEB、プロモーション企画制作までの一貫したブランディング・デザインを得意とする。デジタル次世代への変革を可能にするクリエイティブカラーマネジメント(CCMS)に取り組む。デザインビジネスの新たな展開を目指し、中小企業、個人起業家のためのブランディングを提供する。WEBサイト「竜玉堂」を立ち上げる。ロゴマークデザインのサービスを開始。メールマガジン「経営者のための『ベーシック・ブランド戦略』を配信する。
(財)日本色彩研究所認定 第306号色彩指導者
朝日広告賞一般部門グランプリ受賞('73)、朝日広告賞広告主部門賞受賞('74)、日経広告賞部門賞受賞('74)、視覚サーカス'85公募展優秀賞受賞('85)日本パッケージデザイン大賞入選('91)日経BP小スペース広告賞受賞('98)