The footmark of Beetle/Centipede/Stag beetle

ススをつけた紙の上に昆虫を離し、その足の動きを記録し作成された一連の静止画作品。昆虫を一つのアプリケーションのような感覚で扱っている点が面白い。たとえば、アドビ社のイラストレーターを使うとグラフィックはなめらかなベクターデータの曲線が描け、それをGIF画像として書き出せば256色という制限によって独特な粒感が与えられるように、アプリケーションやGIFなどの圧縮技術は、それ自体がもつ能力・制限によって特有の質感を生み出す。そういう質感は当たり前のものとして作品は作られるので、普通はあまり意識されることはないのかもしれない。しかし本作ではそういう質感を、ムカデやカブトムシといった昆虫から意識的に引き出して作られている。風や太陽、木の葉など自然現象からグラフィックを得ようとする手法は存在しているが、本作も昆虫という「ツール」に丁寧に向き合っていると感じた作品である。
(萩原俊矢)

ハタ ユウキ
武蔵野美術大学
フォトグラム
作品掲載サイト