跡景 SEKI-EI -Time Space Continuum-

本作はストーリーやキャラクターの登場しない抽象的で淡々とした作品だが、物語性の強い映像作品が多い中でも引け劣らないほど、鑑賞者を引きこませる工夫が考えられている美しいものだと思う。草原のようなモノクロのテクスチャーがゆっくりと変化し続ける映像は、何がおこるわけでもないけれど見ていて心地が良い。演出の味付けというよりも“コク”の部分に時間を費やした作品なのだろうと感じた。それに本作はインスタレーションとして見せる工夫も面白く、2つセットで左右を比較して見られるように並んだ正方形のスクリーンの置き方によって、作品の世界をより踏み込んで体験できるようになっている。椅子に座ってゆっくり時間を掛けて鑑賞してみたいと思う作品だ。
(萩原俊矢)

無彩色の景色と無音の音色が意識の空白に流れる。映像から全ての要素を削ぎ落した後に残った「動き」。作者は、1年間の沈黙の後にこの作品を出してくれた。一切の余分のない作者の美学は、とても重い。下手な評より心を込めた感謝を送りたい。ありがとう。
(馬定延)

黒田 教裕
武蔵野美術大学大学院
インスタレーション