japanese white

月には明るい所と暗い所があってその模様が「ウサギの餅つき」に見えたり「カニ」に見えたりする。星座とは違ってこの模様には決まった定義がないので、そのメタファーは人や国によって曖昧でばらばらだ。本作は餅つきをするウサギがだんだんとメタボールに変化していく映像だ。月の模様の曖昧さと同じように、メタボール化していくウサギたちは徐々にその境界が曖昧になり、やがてお互いの輪郭を貫通してしまう。当たり前だけれど現実世界の物質同士は当たり判定が厳密で、物体は境界を破ることができない。しかしコンピュータにとっては境界自体をプログラムで定義しない限り、簡単に貫通することができてしまう。シンプルな映像ではあるが私たちの物事に対する認識の曖昧さが、コンピュータ特有のメタボールという表現でうまく汲み取られた作品になっている。
(萩原俊矢)

平田 尚也
武蔵野美術大学
アニメーション