Q |
学生CGコンテストを知っていましたか? |
A |
第13回 学生CGコンテストを受賞した関根 雅人さんの『ene-geometrix.02』が凄く好きだったので知っていました。僕はシミュレーションではなく、実際に物理的なものをコントロールする光景に惹かれるので、あの作品が強く印象に残っています。
最近は現実の世界とデジタルの世界が結びついた作品が増えてきて作品の幅が広くなってきた印象があります。自分も何かやってみたくなりました。
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Q |
他に何か応募のきっかけになったことはありましたか? |
A |
僕は面白い道具の展示も好きなんですが、その道具がどんな風に使われるかが大事だと思うので、パフォーマンスが好きなんです。去年、『音響書道』というパフォーマンス作品が入っていたのがひとつのきっかけですね。僕の作品はCGでもインスタレーションでもないのですが、「学生らしいものやトレンドから外れたものを期待しています」ってHPに書いてあったので応募しようと思いました。
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Q |
いま、多摩美術大学に在籍していますが、その前は一般大学にいたそうですね。その時はどんなことを勉強していましたか?
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A |
僕は1年前は社会学に興味を持って勉強をしていました。そして「いま当たり前にあるものが歴史的に見ると全く当たり前ではない」ということを改めて知りました。近代国民国家の成立の歴史や活版印刷から始まるメディア史とか、いま常識だと思われている近代の社会の有り様ができてきたここ100年の過程について学びました。そういったことを勉強する中で、いまの世の中は1つのあり方でしかないということに面白さを感じて、そこから想像力を掻き立てられちゃったんです。
道具はそれまでよりも便利なものができた時、古いものが新しいものにとって変わられていきます。けれども、きっと今までに自分の知らない面白い発明や思想、考え方があったんじゃないか、ということを思うんです。そしてまた、みんなの価値観が変われば、世の中なんて一気に変わってしまう。そういった意味で、アートは空想の異世界で起きていることを実際にやって見せることができるものだと気づいたんです。そのことにピンと来て、アートを通して何かをやりたい、と思って美術大学に移りました。
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Q |
その後、多摩美術大学情報デザイン学科に移られてからはどうですか? |
A |
多摩美術大学は、作品制作が中心にあってその中で技術を教えてもらい、あとは魂の叫び、自由を大事にしろ、みたいな教育でしたから、欲望と衝動のままに好き勝手やりたい自分にとってはとても良かったです。
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Q |
今回のOpen Reel Ensembleは先ほどの話にあったような、いまの常識とは違う視点を考えるといったことがテーマにあるのですか? |
A |
そう言ってしまうと話が大きくなってしまうので、忘れられた技術について、がテーマだと思うんです。オープンリールは古い機械なんですが、そこに音楽表現の可能性を感じて、現在の技術や発想をドッキングさせてみようと思ったんです。磁気テープもデッキも、一部を除いてもう生産はストップしちゃったみたいなんですが、これにしかできないことや、出せない音色があってそこに心躍らされた。当時の考え方ではできなかったことを、今の技術、学生でもプログラミングが組めるという環境を生かして、道具の異なる可能性、発展性を見つけてみるという試みだと思うんです。また、そこで音楽を演奏したい、オープンリールを何台も使ったバンドを組みたい、っていう根っこの欲求もあるんです。
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Q |
これまでの電子楽器や録音装置、ゾーエトロープなどの映画前史と呼ばれる映像装置などの、忘れられた装置というものはたくさんあると思うのですが、今回オープンリールという装置を選んだ理由というのは何ですか?
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A |
うーん、それは偶然の出会いです。見た目がかっこ良くて、ずっと欲しかったところ、中学時代に知り合いがたまたま壊れかけたデッキをくれて。
それから中古品を集め始めました。それで録音して遊んだり。そんな中でこの機械の持つ魅惑にはまっていきました。
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Q |
今回受賞してよかったと思うことは? |
A |
今回展示してみて、不特定多数の方に見てもらえたことです。やっぱり生で接して、色々と言ってもらえるのは良かったです。これに尽きます。
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Q |
今後の学生CGコンテストに応募する学生にメッセージをお願いします。 |
A |
欲求の導くままにつくってください。それと個人的にはロックな感じがいいと思います。
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