● ● ●

審査講評
● ● ●

静止画部門

アニメーション部門

インタラクティブ部門

--静止画部門
作品のジャンルは広がってきているものの、今年の傾向を一言で言うと、1.PHOTOSHOP/filter等を使った作品の増加そして、2. ILLUSTRATORによる手描きの作品の増加である。
1.に関しては、その制作processの性格上抽象的になる傾向が強い。また極めて構成的なパターン画像が多く、はっきりいって個別差を感じる作品は少ない。
2.に関する応募数も急激に増えている。本来手描きイラストなので、表現は極めて豊かになる傾向がある。また、3DのCGと比べオペレーションの敷居が低く細かい所に手が届くので、一枚の作品としてみた場合、絵が描ける才能を持っている人にとっては、力を発揮しやすく、個性も強く出る。しかし、従来の非コンピュータ上での表現をデジタルに置き換えただけのスタイルが大半であり、コンピュータメディアを意識させる作品を競うコンテストという観点においてはなにか違うと感じてしまう。 正統的な3DCGの作品の割合が減ってきているのは寂しく感じる。
その中で「theorist」、「まだ見ぬ森」が最優秀、優秀を獲得したのは喜ばしい。3Dだからと言う理由のみならずその表現力・独自の世界観は賞にふさわしいからである。
今後は現代日本の雰囲気を象徴するような作品また、POP CULTURE、SUB CULTUREを匂わす作品も数多く応募されることを望む。
最優秀賞: 「theorist」 雲谷 雅利
line
この作品は、脳などの臓器を使っている割には不快感がなく、うまくまとまっている。心の中のキャラクターを具現化したものとして、現実にはないものを作り出しているデザイン力のある作品であり、全体的に色調が落ち着いているところが完成度を上げている。
優秀賞: 「まだ見ぬ森」 野尻 雄太
line
光に向って見上げるような構図が美しい作品である。色調も落ち着いていて、柔かさと強さを持つ光の表現が全体を盛り上げている。高校生の作品と聞いて驚きました。素晴らしいです。
優秀賞: 「飢え」 石塚 光太
line
シンプルな構図の中に作者の言いたいことがそのまま伝わってくる作品である。これだけシンプルな構成であると指の形が非常に重要になってくるが、神経が行き届いていて、とても丁寧によく作られている。
入選:
line
「記念撮影」 紫牟田 和宏
line
作品全体の統一感、静止画としての構成力が感じられる。カラフルな色彩もうまくまとまっている。
「渦」 若生 綾
line
一見PHOTOSHOP的2Dであるが、自然の流体をビデオで撮り、3次元加工していくという立派な3D作品である。本来アニメーション目的であるが、静止画としても十分に美しい作品である。
「界」 村上 恭子
line
プログラミングによる作品特有の緻密さと美しさがある作品である。プログラミングから作品制作を行う比率が下がっている中で頑張っているという感じを受ける。
「羅漢」 新籾 知成
line
日本画の掛け軸のような構図がとてもうまい。ねらって作った他と異なる絵の比率もみごとに成功しているし、静かな絵の世界が感じられる。
「孔雀」 中山 雅紀
line
とてもきれいなフラクタル作品である。色調や形状の切り出し方にセンスが感じられる。プログラミングによる貴重な作品であろう。
「顔」 田村 智文、古澤真依子、深谷 夏海、浅野 格
line
4人のコラボレーション作品として面白い。夫々の個性が違うようでまとまっているユニークな作品に仕上がっている。
「果てしなき想像」 浅田 れい子
line
色がきれいな作品である。幾何学的であるのも係わらず、曲線を使うことで柔かさが感じられ、デジタルでなければ作ることが難しいことを思わせる。

--アニメーション部門
今年の学生コンテストは、CGテクニックとしてもさまざまなフィルタやエフェクトなどのツール群が充実してきたおかげで、映像としての表現技法は格段の進歩がみられる。技術的にもマシンパワーとしてもプロの映像表現の範疇に入っていた表現技法や造形テクニックを駆使した作品が多く見られた。しかし、そこにはこれまでの映像でよく見られたさまざまな「かっこいい」テクニックの単なる表面的は模倣であったり、つぎはぎでしかないものも多く見られた。
これらの技法や手法の模倣(試み)は学生としてCGを学び、その技法を習得していく過程では重要なことであるが、学生CGコンテストでの応募作品としてみた場合にはやはり物足りなさを感じてしまう。自分の作品としてコンテストに応募しその真価を問おうとするものであるのならば、学生らしい斬新な視点や独自の技法、未完成でも力強さを感じられるチャレンジ精神といったものを見るものにぶつけてくるような作品が期待される。そういった意味では、最優秀賞に選ばれた「ロール」といった作品は、日常の中でありふれた風景を、斬新な視点でまったくちがったものとして見せてくれたという点で、学生らしい新鮮な作品であったと思う。今後もこのような斬新な視点や、新鮮な表現の作品を期待したい。
最優秀賞: 「ROLL」 森脇大輔
line
この作品は、演出が非常にうまい。簡略化された表現や、音楽、効果音、タイトルワークも含めて総合的にバランスよくまとまっている。内容は回転するものと一緒に視点も回転するというアイディアで、町の風景や情景を必要最小限のものにまで省略化した作品である。動きの相対性の可視化ともいえるコンピュータを使うことで実現可能となる斬新な視点でこれまでに見ることの出来なかった風景、感じることの出来なかった感覚を、日常の中のありふれた風景の中でありながら、まったくちがったものとして見せてくれた学生らしい新鮮な作品である。
優秀賞: 「視点軌道〜BBQ広場〜」 武士祐介
line
表現技術の実験として、とてもユニークであり、コンピュータならではの表現であろう。ある一点を中心に同じ円周上の360度の視点から撮影した映像を画像処理することによって、注視点を変化させた映像を得ることが出来るという独自の画像処理のアルゴリズムを元に、それを実証するために制作されたこれまでの学生CGコンテストでは見られなかった映像作品である。背景となっているアルゴリズムの機能とその効果をわかりやすく映像として表現したものである。
優秀賞: 「えき」 田村匡史
line
実写の画像を元にしていながら、静止画像を切り張りしたような平面的な人物や背景が、コマ落ちのようなギクシャクした動きの中で動き回る。技術的にも表現的にも素朴だが、そこが逆に新鮮でインパクトのある作品である。日常的な風景を、作者独自の視点で描かれている。 すなわち、一人一人の個性のあるはずの人間が集団で動き回ることによって個性を失い、みな同じ行動、同じ動き、そして同じ顔になっていくという現代社会を表現し、そのなかに作者のペーソスとアイロニーを感じさせる。
入選:
line
「T展ムービー」 渡辺博孝
line
シンプルなキャラクターデザインと背景デザインの中で、ユニークで特徴のある動きのアニメーションが印象的な作品である。言葉(箱に書いてある文字)の使い方が効果的であり、キャラクターの動きにも工夫が見られる。
「アンサンブル」 小林和彦
line
サウンドと映像とのシンクロナイズをテーマとした作品、このような音楽と映像を密に連動させた作品は単調になりやすい傾向があるが、この作品ではパートに分けたり、不規則な形状を使用することでそれをうまく克服している。透明感のある映像パターンと徐々にふくらみを持たせながら展開していくサウンドとの組み合わせとその競演が楽しい。
「大怪鳥マガラ襲来」 粟津 順、山本公子
line
怪獣映画への愛情がひしひしと感じられ、様々なディテールへのこだわりがかつての怪獣映画の雰囲気をうまく出している。モーションブラーや短いカットが折りたたまれるように作りこまれたカット構成、ダイナミックなカメラアングルなど、映像としてのテクニックとそれを使い込む楽しさが伝わってくる。
「self control」 東 弘明
line
2D表現と3D表現をうまく使い分け、心象をうまく表現している。モチーフの動きとカメラアングルからくる浮遊感とそのテーマ性が独特のイメージ世界を作り上げており、作者のデザインセンスの良さが感じられる。
「キャラクターアニメーション・コレクション2000」 江橋 寛輔
line
さまざまな動きをリアルに作り込んだ作品。単にモーションキャプチャだけにだけたよるのではなく、アニメーションとしての「動きの流れ」や「ため」、「誇張」や「省略」などを十分に検討し、試行錯誤を繰り返した結果作られた努力の結晶ともいうべき作品。基本的ではあるが、奥の深いキャラクターアニメーションに正面から取り組んでいるところを評価。
「FRESH FRESH TWISTEE」 坂 三枝子
line
キャラクターのデザインやその動き、表情など丁寧に作られており、アニメーションがよく出来ている作品である。しっかりしたプロットと構成をもったストーリーは分かりやすく、ショートストーリーとしてよくまとまっている。

--インタラクティブ部門
今年のインタラクティブ部門全体からは、これまでのような「インタラクティブ=選択肢が与えられていること」という段階を抜け出した、という印象を受けることができ、とてもうれしく思った。インタラクティヴという言葉は、CGの世界においてだけではなく、実社会においても重要な意味を持つキーワードであることは確かであり、それに対する社会における認識の進歩が今年の作品にも反映されているとも感じた。
最優秀賞: 「COSMOS2」 松永 康佑
line
自作のプログラムによる作品で、意外性と迫力に富む抽象的3次元図形の変化が高く評価された。明確な意図を持って制作され、その意図を充分に反映した作品に仕上がっている作品である。この作品は、自分のコンピュータにインストゥールし、実際に遊んでみたいという誘惑にも駆られた。
優秀賞: 「The Other Self」 武藤 薫也
line
この作品も自作のプログラムによる作品であるが、作者自分が言うように「偶然の産物」であったことが、良くも悪くも特徴になっている。興味深いけれども、狙いや意図が良く伝わってこない一方で、それゆえ、見る側の想像や推測を受け容れやすく、親しみを感じる。
入選:
line
「1+1=∞」 戸田 伸一
line
デザインの基本を応用したモーショングラフィックスの作品で、色の扱いが美しく、センスを感じる。
「ふらわーつくーる」 小川 真希、藤浪 顕夫、野村 優子、斉藤 佳昭
line
日常的なストーリーと園芸知識を組み合わせて、丁寧な作りのゲームエンターテインメントに良くまとまっている。
入選は逸したが、今後の発展が期待される野心的プロジェクト「アニマ」と「エデンプロジェクト」、花火のビジュアル表現やバラエティが物足りなかったものの発想とインターフェイスデザインが光っていた「花火師」など、昨年と比べて質の高い作品が多かった。
line

静止画部門

アニメーション部門

インタラクティブ部門