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サンジゲンは、日本のアニメにマッチした表現を目指すところに注力し、「すべての仕事をサンジゲン内でやりぬく!」をモットーに、サンジゲンならではのリミテッドアニメーションを発信していく3DCG制作会社です。作品制作のスケジュール・予算・進捗、納品管理などを担っている制作部。直接の作り手ではない部署において、なぜ3DCGの知識を身につける研修を行うのか、そのきっかけ等々、お話をお伺いしました。

ー 制作部というと、現場の方の業務がスムースに進行できるよう、予算や進捗、納品までの管理を行う、どちらかというとサポート業務的なイメージがあり、直接3DCGとは関わりがあまりない、極端なことを言えば3DCGの知識は必要ないように思うのですが、敢えてこのような機会を設けたきっかけをお伺いできますでしょうか。

松浦裕暁(以下、松浦社長):現在は、モデリングはモデラ―が、リギングはリガー、アニメーションはアニメータ、予算・進捗などの管理は制作部が、というように作業の細分化が行われています。ですが、もともとサンジゲンでは、映像制作業務は3DCGデザイナーが行っており、作業者兼制作というかなりハードな作り方をしていました。当時の3DCGは、技術的にまだまだ未熟な部分があったので創意工夫を行いながら、出来る限りクオリティの高い映像を作りだすためには、作業者が全行程を監修し制作する必要があったんです。その一方、作業の分割が難しく、作業者の感覚的な作業物量によって、予算や制作期間、スケジュールが決まるという、作業者にしかわからないブラックボックス状態になっていました。
そういった作り方には限界もあるし、制作管理が難しくなってきたので、制作部を立ち上げ、作業の細分化を行い、制作管理を行うことで全体像を可視化し、制作工程におけるブラックボックスの部分を無くしました。

ー 確かに以前は、一人の担当者がモデリング、リギング、アニメーション等の全工程を担うことが多く見受けられましたが、各工程の専門性が増してきた昨今では、制作工程の分業化は企業としての生産性向上のために必要ですし、各自の強みを活かして活躍できる場を与えることで、スタッフの方々のモチベーションアップにもつながりますね。

松浦社長:そうですね。分業体制は、各工程に高い技術と豊富な知識が要求されますが、その分、やりがいもあるし、個々が得意な分野で存分に力を発揮してもらえることで、集団としては大きな成果を出すことができるんです。実力の100%を発揮できる環境であれば、生産性がぐんと上がります。
専門性により生産性が上がった反面、とあるアニメ作品の完成後の反省会で専門用語が飛び交うなか、用語の意味がわからないのか、ポカンとした表情をしている制作部のスタッフがいて、「こりゃいかん、何かせねば」、と思ったのが研修会を行うきっかけでした。
制作部の主な仕事は、進捗や予算管理なので、3DCGの専門用語を必ずしも知っている必要はありませんが、ベースとなる知識がなければ他部門との会話、コミュニケーションもままなりません。コミュニケーションが希薄になれば、せっかく制作工程を細分化し、ブラックボックスを無くして可視化ができたにも関わらず、それが最大限に活かれされません。
制作部は、全体を見渡すプロデュース能力が求められています。プロデュース能力の1つとして、状況把握力があります。他の部署がどういった技術で、どのように工夫し制作を行っているのかを理解することが不可欠です。状況把握を深めるには、制作部にも3DCGの基礎知識を身につけてもらうことが重要だと考えました。

ー 進捗・予算管理がメイン業務の場合、3DCGの知識が必須とは言えませんが、おっしゃるとおり基礎知識があるのとないのとでは、他部署との意思疎通の度合いが違いますね。

松浦社長:そうなんですよね。この研修で学んだ知識が、作り手との会話の糸口になるといいかな、と思ったんです。そんなとき、たまたま手にしたCG-ARTS発行の書籍「ディジタル映像表現-改訂新版-」は、基礎から応用までしっかりと書かれていて、研修にはもってこいだと。この本は、実際、プロの現場でも使われているし、もちろん各社なりの技術のアレンジなどはあるだろうけど、本に書かれている基礎技術がアレンジの土台になっていますからね。基礎を教える、知ってもらうには、とても適した本ですね。
ですが、研修を行う上でただ知識の部分だけを淡々と説明しても、何となく理解した程度で記憶には残らないので、僕自身の経験や解釈、サンジゲンらしい創意工夫の部分を、知識との補間要素として、話すようにしています。知識の上に、創造があり、工夫があり、知識を身につけているからこそ、専門家の言葉が理解でき、専門家が気づかない課題点などにも異なった視点でアイデアを提案することができるようになるのではないでしょうか。そして、会話にも説得力が生まれます。
制作スタッフには、根拠となる3DCGの知識を身につけ、知恵を働かせておもいのままに仕事を完遂する知略縦横な人物になってほしいですね。
それには、まず知識。これ絶対です。

ー お話をお伺いした後、研修会に参加しました。その様子を以下にリポートします。


研修の初回、また松浦社長直々にということもあり、スタッフの皆さんも初めは緊張した面持ちでしたが、松浦社長の経験や感じたこと、サンジゲンらしさとは、等々話が進むにつれて、緊張もほどけ、松浦社長のお話を熱心に興味深く聞き入っていました。

1回目の内容は、モデリングからスタートとなりました。3DCGにおいては、「まずは、3次元空間内の位置を表す座標系について理解することが大事である」、と松浦社長は語り始めます。「3Dソフトウェアの操作は、ソフトウェアによっても異なるけれど、座標に関する概念はどのソフトウェアにも共通している。コンピュータ上で3次元空間に物体の形状を定義するためには、点や面、プリミティブ、そのほかのモデリングの基本要素を3次元空間内に配置することである。配置する位置を数値で表現したものが座標であり、そのための物差しとなるのが座標系である。またこうした物体どうしを関連付けることで、複数の物体を1つの物体として扱ったり、編集しやすくしたりできる。」と続けました。初回の内容は、座標系から始まり、グループ化と階層構造、サブディビジョンサーフェス、スムーズシェーディング、マテリアルまでに及び、専門用語の技術的内容の丁寧な解説に加え、松浦社長がこれまで得てきた技術や知識、独自の発想や工夫を図解や映像例を見せながら、CGの概要を効果的に説明されました。

研修を終えたスタッフの方々からは、「いままでは曖昧な知識であったのが、研修を受けたことで、思い出した事もあるし、知らなかった事もあり、とても勉強になった。」、「知識の再確認もできたし、何よりも松浦社長直々にサンジゲン独自の創意工夫の部分の話を聞くことができてよかった。」、「あまり知識のない後輩が入ってきたときに、人に説明する難しさがわかった。」、「入社してから自分の知識で他のみんなについていけるのか不安だったけど、その不安が払拭された。今回の研修という機会を設けてもらえてとてもうれしかった。」等々、スタート時の緊張した表情は消え、喜色満面の笑みを浮かべていました。
スタッフの皆さんの笑顔を見た松浦社長も満面の笑みを浮かべ、「制作部のレベルをもっと上げたい。もっと底上げをしたい。これが今年の目標です。」と力強い言葉で締めくくられました。