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2015/05/27更新

 

 

1983年に創立された、世界の中でも有数の歴史と実績を誇るデジタルアニメーションスタジオ ポリゴン・ピクチュアズ。「誰もやっていないことを 圧倒的なクオリティで 世界に向けて発信していく」という理念を掲げ、国内外から集結した300名以上のクリエイターが、日々コンテンツの企画制作に力を注いでいます。

今回は、クライアントとの窓口として会社の重要な役割を担うビジネスプロデューサー陣が、よりクオリティの高い映像を提供するための能力の向上計画の一環として、CGクリエイター検定に挑戦。2013年の後期検定でベーシックを受験し、みなさん見事合格!今回は2014年後期検定でエキスパートを受験して頂きました。受験までの学習方法や受験された感想などを受験されたビジネスプロデューサーの伊東さん、中岡さん、KHさん、そしてこの試みを企画された石丸さんにインタビューいたしましたので、ご紹介します。

ー CGクリエイター検定エキスパートの受験のきっかけを教えてください。

石丸:ビジネスプロデューサーは、何か1つに特化したスキルを持っていればよいわけではなく、総合的なスキルを持っていることが大事です。クライアントのニーズを聞き出して、制作規模や内容により、費用や制作期間を見積り、作品を完成に導くための方法を考え、仕事を受注していかなくてはいけません。そのためにはCG制作を一通りできる技術と知識が必要です。ですから、プロデューサー達がどの程度の知識を持ち合わせているのかを把握するとともに、自身で自分の能力の現在地を正確に知ってもらい、これを機会にさらに勉強してもらえたら、という思いで受験に至りました。

ー 受験に向けての勉強方法を教えてください。

KH:まずは問題集を解いてみた上で、疑問に感じた個所はテキストを読み、その仕組みを理解するようにしました。

中岡:僕の場合は、ちょうど業務が忙しい時期で、勉強に避ける時間があまり無かったのですが、暗記の知識だけではなく、業務で培った経験で答えられる問題が多く出題されていたお陰で合格できたかなと思います。

伊東:ベーシックの受験の時に、エキスパート用のテキストも使って勉強していたので、今回は、過去問題を中心に解き、わからないところだけテキストを読んで復習しました。

ー 試験問題で気になった内容はありましたか。

KH:第1問(モデリング)の問題がおもしろかったですね。スキンの変形結果から『ウエイト値』を推測させる設問だったのですが、リグの担当者が『ウエイト値』の設定には、内部構造など多様に意識を向けて設定していることが、あらためてよく理解できました。

中岡:著作権の問題が出題されていましたが、知識としてきちんとおさえておく必要性を感じました。音と映像に関する出題でしたが、映像制作では音(楽曲)も取り扱うので、権利関係については覚えておくとよいですね。

KH:第7問の映像編集の問題ですが、実際の現場では、ディレクターの「演出意図」を汲み取って、イメージを具現化していきますが、そのための表現方法や手順は決して1つだけではないので、ちょっと解答に困りました。

中岡:うーん、確かに。まあ試験問題なので、恐らく一番汎用的なやり方が正しいんでしょうけどね。そうそう、第9問の映像制作に用いられるファイル形式やデータ容量に関する問題は、そりゃもう一生懸命、計算しました(笑)。感覚的にとらえがちであったのですが、あらためて理解することができました。

石丸:受験をしてみて、自分の知識レベルの立ち位置はわかった?

中岡:受験する前は、とてつもなく専門性の高い問題が多数出題されるのでは?と思っていたのですが、実際にはベーシックの延長上にきちんと沿った内容が幅広く出題されていると感じました。なので、自分の知識レベルの立ち位置、ということで考えるともう少し専門的な問題も出題されていたほうが、得意不得意なところがわかったかもしれないです。

石丸:エキスパートは楽勝だと!

中岡:そういう意味じゃありません(笑)

伊東:僕も勉強はしました。ちょっと自信がなかったので。

石丸:勉強したから受かったと思う?勉強しなくても受かったと思う?

伊東:うーん,勉強しないと受からなかったと思います。けっこう忘れているところもあったので。

KH:何となく言葉として知ってはいたけれど、それが問われていることと結びつかないものもありましたね。

伊東:そうですね、社内とか業務で普段使われている用語が、テキストでは違う表現をしているものもあって。勉強をしていくなかで、あの技法がこのことか、とあらためて気づくこともありました。

石丸:プロデューサー目線でみるとわりと幅広い内容を出題しているな、という印象を受けました。彼らが日常業務のなかで、覚えていくことの範疇よりは若干広めかな。CGクリエイター検定は、作品完成までの工程を全て一人で行うクリエイターを対象とした検定という印象。弊社は分業体制で専門に特化しているので、スタッフの役割によって必要とされるスキルが異なります。CGクリエイター検定は、「専門性に特化した知識の確認」をする検定ではないですが、現在地とか偏り具合の確認手段の1つとして活用できると思っています。プロデューサーも得意不得意があるので、補う必要がある分野があればそこを強化し、さらに土台を固める。基礎は身につけるほど、役に立つと思いますね。

ー 仕事のコミュニケーションの場で役立ったことはありますか?

KH:そうですね、現場のスタッフとの会話でも、これまで以上に自分の意図を正確に伝えることができるようになり、お互いの意見や提案の理解力が高まることで、双方間のコミュニケーションがより一層円滑に行われるようになったと思います。

伊東:まさにそんな感じ。使っているツールがクライアントと異なっていたりすると、いまいちかみ合わない、ということがあったりもしましたが、受験を通して得た知識でクライアントの要望を実現するための企画をより明確にわかり易く提示することができるようになったと感じています。

― 受験させた成果はいかがでしたか。

石丸:知識として足りない部分を埋めていくには、検定試験を受験するだけではなく、テキストを一通り読んで苦手な部分を補間していくことが大切です。先にも述べましたが、私たちプロデューサーの仕事は、クライアントが何を求めているのかを察知し、ニーズに対して解決策を提案できることが重要です。クライアントとの会話のなかで、「曖昧ではあるが、なんとなく言っていることはわかる気がする」ということがありますが、それでは相手が何を望み、自分たちは何ができるのか、双方の理解を深めることは難しいのではないでしょうか。十分な知識を備えていれば、対話力も増し、良好なコミュニケーションが取れるようになるはずです。今回の受験では、各々があらためて「自分に足りないものを自覚し学ぶ」ことができた、よい機会だったと思います。実務で忙しく、普段から勉強することはなかなか難しいと思うので、まずは試験という形で受けてもらったのは非常に良かったですね。

― この業界を目指す方へのメッセージをお願いします。

伊東:実際に手を動かし、新しいことに目を向けていくことが大事。

中岡:制作規模が大きくなるにつれて専門性も増してくるので、一から十まで一人で完結できる案件は少なくなってきています。つい自分の仕事にだけ集中していればいい、と思いがちですが、プロジェクトを円滑に進めるには、前後の工程を理解し、自分の制作意図や相手の意図をくみ取る対人力の高さが必要不可欠だと思います。そのためには、視野を広げて周辺知識を身につけていくことが重要ですね。また、弊社でも優秀な人は、常に新しいものに目を向けて、情報収集をしている人が多いです。CG業界は常に進行形であるので、日頃から関心を持つ領域を広げて、新しいツールや方法論などを柔軟に取り入れている人は、業界に入ってからも貴重な人材になっていけます。もしも自分の知識や技術に限界を感じたとしても諦めるのではなく、自分の視界を広げるチャンスと思い、色々なものを見聞きして知識や経験を積み、柔軟に自分の糧にしてください。

伊東:マルチメディア検定で問われている要素は、日常業務の一環であったりもするので、マルチメディア的な知識のベースも知っていたほうが会話の幅も広がっていいですね。

KH:専門用語、業界用語が発せられたとき、ほぼ同様の概念で共有できているか、という不安を払拭するためにも、自発的に共通言語を学び、業界内外問わず、互いに共通認識できる言葉を持つことが大切だと思います。

石丸:CG業界は華やかで楽しそうだと思っていましたが、入ってみたら…思っていた以上に楽しい(笑)。3DCGの活用幅はさることながら、俳優やミュージシャン、漫画の原作者など、いろんな価値観をもつ人と交流を深めることができ、とにかく刺激的です。そういった個性豊かな人が集まってくる場所でもあるので、CG制作だけに限らず、自分のやりたいことやできることを常に意識して、自分の世界を広げていって欲しいですね。そうしたなかで得た技術や知識は、自身の可能性を高める糧になるはずですから。何事にも臆することなく、常にチャレンジ精神を持ち続けてください。

取材:
CG-ARTS 篠原たかこ
取材・テキスト:
CG-ARTS 影山由夏
取材・写真:
CG-ARTS 黒川崇史