TOP > 業界の現状と求める人材

2013/02/20更新

記事:1  2

明確なビジョンをもって、必要な技術や手順を選択し具象化する

ー 受験されてみて、ご自身の為になった問題などはありましたでしょうか。

磯野:

写真撮影の問題が出題されていましたが、我々ゲーム屋からするとカメラ関係の問題はなかなか勉強する機会がありませんので為になりました。テキストには俯瞰とかあおりとか、映像関係の話がページを割かれて記述されているので、ゲーム関係の業界を目指す人にも勉強して欲しいです。

林:

ツールのパラメータを調整して、理屈がわからずに感覚的に消化してしまうより、明確なビジョンがあって、それを実現させるために必要な技術や手順を選択し具象化できることは大切です。

水崎:

磯野さんと同じく写真撮影の問題は為になりました。レンズの絞りは数値が上がることなのか、下がることなのか、きちんと理解ができるようになると思います。実はディジタルカメラのホワイトバランス機能は、意味もわからずに使っていましたが、カメラのホワイトバランス設定を光源に合わせることで、見た目に近い色で撮影できるんだと。

磯野:

テキストを事前に読んでいたので正解できましたが、CGのゲームをやっていると、あまりライティングを気にしなくなるんです。ハイエンドゲーム機だと気にしなくてはいけないんでしょうけれど、スマートフォンのアプリではスペック的に平行光源しか選択肢がないので、ライティングを気にする必要がなくなるんです。ただ、気にする必要がないからといって必要ないわけではなく、知識としては知っている、だけどある条件下ではその技術は使えない、それじゃあどういう手を使おうか、というロジックになったほうが良いです。光源の位置や被写体への光の当て方は映像を表現する上で重要なことですよね。さらに、写真は映像の基礎となる表現手法だと思いますので、しっかり勉強して欲しいです。

ー CG-ARTS協会の検定の特徴の1つとして、知的財産権の問題を全検定に出題しています。いわゆるCGの専門領域ではありませんが、コンテンツ制作における必要不可欠な関連知識であると考えています。

磯野:

著作権が全検定で出題されているのは良いことですね。法務がある会社であれば良いですが、ない会社では、社員一人一人がきちんと理解しておかないといけないと思います。うっかりやらかしたでは済まされませんからね。もちろん法律家になるわけではないので完璧な必要はないですが、この業界を目指すのであれば、最低限ある程度は勉強しておいて欲しい必要な知識だと思います。ですから、すべての検定において著作権に関する出題をし、「学習してください、重要ですよ」という協会の意思表示はこれからも続けて欲しいです。

水崎:

あえて著作権を学ぶ機会は少ないと思いますので、試験をきっかけに勉強をしてみてはいかがでしょうか。

磯野:

著作権に関しては、テキストに整理して書かれているので一読してみてください。

林:

CGやアニメーション、ゲームソフトなどのコンテンツ制作の際に、どのような内容が法的保護の対象になっているのか、また他人の作品を利用する場合の注意点など、気をつけなければいけないことはたくさんあります。会社に限らず、個人で制作する際にも著作権は関わってくることなので、磯野さんもおっしゃっているとおり一人一人が理解しておく必要があります。

 

粘り強く挑戦することが、力になる

ー それでは具体的にどのように勉強されたのか、またこれから受験される方へのアドバイスがあれば教えてください。

林:

試験前に磯野さんに会う機会があったのですが、そのとき磯野さんが過去問題集を持ち歩いていて、これはまずいぞっ、とちょっとだけ危機感を感じました(笑)。勉強方法を聞いてみると「過去問題を解いて間違えたところをテキストで調べるといいぞ」とアドバイスをくださったので、その方法で勉強しました。CGクリエイター検定は、まあ生業としているからできるだろうと高を括っていました。実際勉強を始めたのも試験直前の3連休の初日です。CGエンジニア検定のほうは弱いところがあるだろと思いつつ、過去問題を解いてみたら、案の定できが悪くて。ですので、CGエンジニア検定は1カ月前ぐらいから磯野さん方式で勉強しました。

磯野:

まずはテキストを精読することから始めたのですが、読むだけでは覚えきれないと感じ、勉強方法を変えることにしました。過去問題を解いて、疑問に感じたところや間違ったところをテキストで調べる方法にしたんです。そのあと、問題を再度解いてみたら結構できました。結構できちゃったので、試験直前まではちょっと余裕でいたんですが、あらためて過去問題を解いてみたら散々たる結果だったので、慌ててテキストを読み直しました。とくに著作権のところは忘れていたので集中して勉強しましたね。もうその時点でCGエンジニア検定は捨てていました。

林:

捨てていたのにも関わらず、合格しちゃうんですね(笑)。いろいろな会社さんとお仕事をさせていただいているので、言葉の幅はある程度あったはずなんですが、テキストを読んでみると、初めて聞く用語もいくつかありました。

水崎:

3連休集中して勉強しました。その結果、一番よくなかったんですが(笑)。

磯野:

CG関連の仕事に従事されている方は、それでも良いかもしれませんね。

林:

僕らはベースがあるので、直前でもまあまあ大丈夫でしたけれど。じゃあ学生のとき、今の知識があったのかというと、それはなかったはずなので、これから受験を考えている方は、「過去問題を解いて、テキストで調べる」方法をお薦めします。

磯野:

あとですね、テキストに書いてあることを実践してみることもお薦めです。たとえばディジタルカメラで風景や人物などを撮影したり、ブーリアン演算でモデルを作成してみたりするとより理解が深まるのではないでしょうか。ものすごく丁寧につくられているテキストなので、テキスト通りにまずはやってみる!

林:

覚えるだけじゃなくて、ということですね。テキストは映像制作に必要な表現技術と制作技術の両方が網羅されているので、実践でこの範囲を学習するには短時間では難しいと思いますが、粘り強く挑戦してみてください。必ず力がつきます!

磯野:

テキストを端から順番にやると興味のないところで煮詰まってしまうことがあると思うので、興味があるところから始めてみると良いのでは。どの領域も密接に絡んでいるので、どこから始めても最終的には全領域網羅することになると思います。

林:

短編の映像作品を制作することも良いですね。1つの映像作品をつくるにはいろんな技術や表現が必要になりますので、試行錯誤しているうちに自然と技術も表現も身に付くはずです。ですが、CGを始めたばかりの時期は、単純におもしろいと思ったことをとことんやり抜くと良いと思います。何か1つを探求することで、ほかのこともだんだんと身に付いてきます。興味のあるところからはいって、そこから興味の範囲を広げていってください。

磯野:

とくに学生さんであれば卒業するまでに、検定全部に合格するぐらいの気合で挑戦して欲しいし、満点をとるまで受けて欲しいですね。得点が公表されないので、目標を設定しにくいかもしれませんが、とにかく反復してやり続ければ満点に近づけますから!そうすることで、知識が確実に増えますし、自分のものにできます。ですから、合格しても満点でなければ、満点をとれるまで受験し続けて下さい。あと、試験終了時間前に退出する受験者が多数見受けられましたが、時間いっぱい見直しをしたほうが良いですね。

水崎:

途中退出する受験者が確かに多いですね。本気で合格するために受験しているのかな?と疑問に感じました。

磯野:

そうですよ、計算問題のところなんか、何度も見直せば間違えなかったんじゃないんですか?水崎さん!

水崎:

そ、そうですね(笑)。

ー 総合優勝の林さんから一言お願いします。

林:

正直なところ試験を終えるまで、懐かしさがありつつもストレスを感じていました(笑)。ですが、良い刺激になったことは事実です。つい先日、新卒の方の面接をしたのですが、履歴書に書かれている資格の内容とか、合格するためにどれだけ努力したのか、など今まで以上に興味が湧きました。また、受験者の皆さんが合格するためにがんばっている姿を想像して、学生の頃の感覚とか、仕事しはじめのころの気持ちだったりとか、自分自身のことを振り返ったりと、本当に良い経験になりました。磯野さん、水崎さんという強豪に勝てて光栄です!

磯野:

いや、しかし満点をとれなかったこともそうですが、林さんに勝てなかったことが本当にくやしい(笑)。

水崎:

おなじく、くやしいです!

磯野:

じゃあ、この熱い気持ちが冷めないうちに、また対決しましょう!

林:

もうちょっと、間違えている気がしたんですけどね...。

磯野:

それが一番むかつく(笑)。

 

ひとまわり大きく成長するための検定受験

ー では最後に、この業界を目指す方へのメッセージをお願いします。

林:

とにかくCGはとても楽しい、と僕は思っています。物をつくり、見てもらい、喜んでもらい、刺激がいっぱいの仕事です。CGは幅広い知識が得られると思います。カメラやライティング、人体や動物の動き方、建築物はどうなっているのか、自分の仕事に合わせて、覚える知識が増えて、物の見方が変わってきます。アンテナが広がるし、ライフスタイルも変わってくる。『知識は荷物になりません』と言いますが、本当にその通りです。とても素敵な職業なので、どんどん目指してきてください。

磯野:

先ほども言いましたが、学生のうちは満点がとれるまで受験してみてください。問題冊子は持ち帰れるので、かならず自己採点用に解答箇所をチェックして、間違ったところはテキストを読み直したり、ネットでも何でも調べ直してください。そうしているうちに知識は確実に増え、自信につながります。満点をとるために何度も挑戦することは意味があると思います。合格不合格ではなく、知識を増やす場として検定を利用したら良いのではないでしょうか。あと途中退出してしまうのであれば、何度も言いますが見直しと、自己採点用にチェックをしたほうがいい。間違ったところはすぐに見直さないと、忘れてしまうし、覚えませんから。僕もスローモーションにジングルはいけない、ということを学びました(笑)。

水崎:

学生の皆様、最下位の水崎です(笑)。採用のとき、成績も大事かもしれませんが、興味範囲の広さや、経験値の多さを評価しています。たとえば検定落ちましたと履歴書に書いてあっても親近感を覚えるかもしれない。受けませんでした、よりも受けて落ちました、と書かれていたら、「お、こいつはチャレンジ精神はもっているな」と興味を惹かれるかもしれない。ですから合格不合格を恐れずに、受けてみるという経験をしてみてください。僕自身、受験してみて無駄な時間とは思わなかったので。初めにも言いましたが、受験のために過去問題を解いてみたり、知らない用語をテキストで調べたりする過程の努力が、自分自身をひとまわり大きく成長させるのだと思います。1つの経験として試験に挑戦してみてください。

 

今回の検定社長対決を通して、多くの貴重なご意見をいただきました。これらをしっかり受け止めながら、今後の私たちの活動に活かしていきたいと思います。ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。

CG-ARTS検定の詳細はこちら

取材:CG-ARTS 篠原たかこ・影山由夏、テキスト・写真:影山由夏

prev page
 

磯野貴志さん

株式会社リズ
代表取締役


1992年株式会社セガ・エンタープライゼス(現・セガ)にデザイナーとして入社。AM2研配属。バーチャファイター2などのプロジェクトに参加。1995年セガサターン版バーチャコップで初ディレクター。1998年株式会社リズ設立。SCEIのセカンドパーティーとしてPS2ゲームの開発に携わった後に完全独立。 以降は、セガ、サミー、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、タイトー、カプコンなど、大手パブリッシャーから直接業務委託を受けて、数多くの作品を開発。 また海外案件も積極的に受注。さらに2010年には自社開発、販売のPSP作品もリリース。 現在に至る。

水崎淳平さん

神風動画
代表


1973年生まれ。京都造形芸大を卒業後、DTPやゲーム制作、セルアニメーション業界を経て、メディアの壁を超えた作風を武器に神風動画を設立。代表作は”ジョジョの奇妙な冒険”オープニング、EXILE”BOW & ARROWS”MV、安室奈美恵”Dr.”MV、”FREEDOM” オープニング、”ドラゴンクエストIX”オープニング等。 座右の銘は「妥協は死」。

林圭一さん

有限会社ウニコ
代表


1973年、東京都出身。幼少期は秋田県で過ごす。DTP制作を経て、1998年株式会社リズにプログラマーで応募するもデザイナーとして入社。ゲーム開発におけるデザイン業務は一通り経験。2004年フリーランスとして独立後、2006年有限会社ウニコ設立。アートディレクターからディレクターにシフトしつつ、ゲーム以外でも面白そうなものには積極的に参加中。猫とバルセロナが好き。