これまで“立体ではないもので立体を表現する”ことをテーマに作品を制作してきました。『Rokuro-2』もそのうちの1つです。この作品は、3次元CG(3DCG)を実際に手で触りたい、という願望から制作し、触る動作だけで体験できる作品を目指しました。触る動作にこだわったのは、メディアアートを体験することがどんどん難しくなっているように感じていたからです。Flashを用いたエンターテインメント的な作品はとてもおもしろいのですが、マウスやPCの操作を知らなければ楽しむことができません。そこで子供からお年寄りまで、誰にでも作品を同じように体験してもらうために、PCの知識がなくても、触るだけで楽しめる作品をつくりたいと考えました。
画像では3DCGのように見えますが、40本の光ファイバーを束にして回転させることで、3DCGのような立体の形状が得られます。観客は見るだけではなく、ろくろのように実際に手で触れて、色々な形状に変形させることができます。また、4つのカラーモードから好きな色を選んで楽しむこともできます。
インスタレーション作品の制作をはじめたきっかけを教えてください
3DCGのクリエイターを目指して、アートとコンピュータが同時に学べる大学を選択しました。入学当時、3DCGのアプリケーションソフトは、個人で購入するには大変高価なものしかなく、大学で学ぶことが一般的でした。そのときの指導教官は、3DCGとは別にプロダクト作品やインスタレーション作品などの立体的なものづくりも指導してくださり、2つを同時に学んでいました。3DCGの場合、ディスプレイに表示されている形体のパラメータを詳細に設定すれば、形状や色を変えることはできますが、マウスやキーボードを操作して形をつくることは、間接的にものごとを動かしているような気がして、つくっている実感がわきませんでした。祖父が大工で、日頃から触ってつくるという直感的な動作に慣れていたからかもしれません。次第にCGにはない“触れて動かせる”という実在感に惹かれていきました。人がものをつくるうえでは、直接触れ、触れることによるフィードバックこそが重要だと考えるようになり、インスタレーション作品の制作に至っています。
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