大学・企業現場リポート ディジタル最前線

Vol.8 人と人との新しい出会いと深いつながりを求めて。

日本でいち早くブログのレンタルサービスを開始


藤村剛氏誰もが簡単に自分のWebページをつくれるとあって、ここ1年で爆発的に広まってきたブログ。現在、ブログのページ開設者総数は350万人に挙がるといわれている。また、ユニークなコメントで人気のあるページのオーナーはマスコミでも話題となっている。

アメリカ生まれのブログを、大手プロバイダーなどに先駆け、いち早く日本で開発・普及してきたのが、NTTデータである。独自のブログレンタルサービスのコミュニティDoblogを2003年11月に開設。ポータルサイトでもなく、プロバイダーのように膨大な会員ベースを持っているわけでもないのに、年々会員を増やし、Doblogの現在の会員数は約4.4万人、多い日には、1日約50万PV(ページビュー)を数えるまでになった。

Doblogの開発と運営管理を行い、企業へのコンサルティングの中心となって活躍されるNTTデータのECソリューションビジネスユニット課長代理・藤村剛氏は「ブログの魅力は、自分のページを簡単にもてることはもちろんですが、ページを用いて情報発信を行うと、そこに新しいリンクやコメントがあつまります。その連鎖が共通の興味をもった人たちのページとページをつないで、人と人とのコミュニケーション、人と人とのつながりを深めてゆくことです。Doblogの4万人を越える会員の方々は会員間のつながりが強いのが特徴で、100人位の単位で同じ趣味や関心事をもつ仲良しコミュニティが形成されています。Doblogでは、会員同士のページとページがどううまくつながっていくかの仕組みづくりに重点を置いて仕組みを開発してきました。今では当たり前の機能となってしまいましたが、ページを見た人の"足跡"が残るという機能をかなり初期から採用したのはDoblogだったとおもいます。見た人と見られた人の関係を可視化することで、ページのオーナーが次は見てくれた人のページを見にゆき新しいネットワークがつくられるのです。」と、ブログによる人から人への広がりを語られる。

2005年はブログのビジネスユース元年

NTTデータは、Doblogで培ったノウハウをベースに、企業のオリジナル・コミュニティづくりをコンサルティングし、企業ブログの開設や運営の支援を行っている。

ブログプロジェクトの責任者であるECソリューションビジネスユニット長・上野山英樹氏は「会社紹介がWebサイトをネット上に持って情報発信する事はずいぶん浸透して一般化した。こうした中で、次に企業はお客様とのコミュニケーションデザインをどうするかを求めています。ブログは、双方向で、かつ毎日書き込めるというスピードが魅力であり、さらにコミュニティの運営側、ユーザー側双方の情報発信の量や機会を増やすことで、コミュニケーションの質を高めると思います。またブログを用いることで企業は情報発信のコストを下げることも可能です。今後Webにおける顧客との新しいコミュニケーションやマーケティングの手段として、ブログを活用したコミュニティビジネスが期待できます」と、ブログのビジネスユースの有効性を強調される。

藤村氏も、「2005年はブログのビジネスユース元年になると思います。企業の方たちが、通常のホームページとは異なる、プログによるコミュニティの新しく、かつ多様な可能性に気づいてきたからです。企業内のコミュニケーションツールとしてのブログやブログとソーシャルネットワークの融合、地図とブログの連携など新しい可能性がうまれつつあります。」

さまざまな企業や団体のブログによるコミュニティをサポート

実際にECソリューションビジネスユニットが手がけたコミュニティビジネスを紹介したい。

たとえば「三越コミュニティサロンブログ」は、昨年の日本橋本店の新館オープンでリアルのサロンがスタートすると同時にスタートした。商品情報などを売り場から顧客に発信すると同時に、顧客が自ら情報発信する場も提供している。藤村氏は「ブログを運営している百貨店さん側の売場担当者から、毎日さまざまな商品やイベントの情報が寄せられます。お客様は、自ら情報発信を行ったり、売場からの情報を読んだりコメント書いたりします。このブログサイトを介して顧客との接点を拡大するとともに、お客様の声を直接聞く事ができます。このような新しいコミュニケーションの手段を持つことで将来の新たなサービスに繋がるのではないかと考えているのです」。

ダイエットライフをサポートするブログとして女性に人気があるのが、キリンウェルフーズ(株)が提供する「Lieta-Cafe」だ。このサイトでは毎日の食事の内容や体重・体脂肪率などを自己管理できる。このようなある程度定量的な情報に加えてページオーナーが実践したダイエットなどに関する情報が日記的に公開されている。「一人では続けにくいダイエットをブログを介して、仲間と一緒に楽しめるのが人気の理由でしょう。またユーザの体験記に対してプロの管理栄養士がアドバイスできる仕組みを導入しました。このアドバイスがユーザをさらにやる気にさせているようです。」と藤村氏。

メイプル(株)の「B食倶楽部」はブログを用いてレストランなどの店舗情報を共有するためのコミュニティサイトだ。このサイトを訪れれば会員たちがお薦めするレストラン情報を共有できる。藤村氏は「仲間と楽しく飲んで食べて5千円位のリーズナブルな価格で、おいしく雰囲気もよいお店の情報を寄せてもらっています。このサイトの特徴は、ログインした会員だけがソーシャルネットワークを用いてさらに密なコミュニケーションを行う事が出来ることです。ログインした会員だけが書き手の顔を見ることができるようにしたのも好評です」。

WWFの地球温暖化防止キャンペーンに協賛して関連する情報発信を行ったり、環境問題に興味のある人たちに対してDoblog内で意見交換する場所を提供したのが「温DOWN計画」だ。このキャンペーンに賛同した人が自発的にブログを書いたり、各種企画にトラックバック(リンク先にリンクしたことを自動的に通知)でつながっていける。藤村氏は「開設初日に3000ヒットを数え、毎日2〜300人が訪問してくれます。この活動に興味を持っている人が一目でわかるように専用のスタイルシートを用意しています。この企画を始めたことで、環境に対して意識が高い人に加えてちょっとした興味や関心を持っている様々な声を集めることができました。テレビ、新聞などはリーチ(量)は狙えます、一方のインターネットメディアはディプス(質)を分析できます。このコミュニティではリーチを稼ぐ事が出来るメディアで多くの人に情報の概要を伝えた後でブログサイトを立ち上げました。量と質の両方を組み合わせたモデルともいえます。ブログで集まった声を集計・分析して今後報告書を出す予定です」。

みやけエコネット・プロジェクトの「みやけエコネット」は、復興が進む三宅島の地域情報を、現地で活動している人たちに発信してもらうコミュニティ。藤村氏は「このコミュニティでは地図型ブログ"エリアログ"を使って地図上の地点ごとに今の三宅島の自然の情報や生活情報や発信されるようになっています。これらの情報に対する質問や、コメントが寄せされています。ここから発信される情報は、学習用教材としても利用できるのではないかと期待しています。」と語られる。

トータルなデザイン力とコミュニケーション能力を

ECソリューションビジネスユニットとしては今後、地図をインターフェースにした新しいBlogなどさまざまな分野に対して、いまある技術や表現を収斂させるとともに、新しいブログの可能性を追求する予定だ。Webのアーキテクチャーとして残るような、新しいコミュニケーションに位置する存在にまでブログを引き上げたいという。

これからのWebデザイナーに期待するものとして、上野山氏と藤村氏は「技術と表現の進展が著しいインターネットメディアでは、コンシューマーオリエンティッドの考えだけでは、顧客満足、クライアント満足につながりません。技術者もデザイナーも常に新しいシーズを発想・構築し、それの意味や価値を相手に伝えることができる能力が求められます。作品がすべてを語るのは、アーティスト。デザイナーは、クライアント、市場、生活者、時代などを考慮しながらデザインをトータルで考え、それをどう表現し、伝えていくかということが大切です。プランニング力や表現力とともに、人に伝えるための会話などのコミュニケーション能力を磨くのが重要だと思います」。

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