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コンピューターグラフィックス映像とインタラクティブ技術の国際カンファレンスSIGGRAPH2011が2011年8月7日から11日までカナダのバンクーバーで開催された。SIGGRAPHバンクーバーチャプターの熱心な誘致が実り、38回目を迎えるSIGGRAPHの夏のカンファレンスの歴史で、初めてアメリカ以外で開催された。会場には74カ国から1万5千872人の参加者が訪れ、バンクーバー市のカンファレンス参加者最多記録を塗り替えた。

主催するACM SIGGRAPHの母団体であるACMの会長アラン・チェスネイ氏はインタビューに「今回は初めてアメリカ以外で開催するので、とても大切なカンファレンスだと思っています。カンファレンスが成功をおさめ、とてもうれしいです。 来年2012年はロサンゼルスで開催しますが、これからも、カナダやメキシコ等、アメリカ以外での可能性を考えていきたいと思っています。」 と答えた。

今回のレポートでは、「アートギャラリー」と「エマージングテクノロジー」の委員長インタビュー、SIGGRAPHが近年積極的に取り組んでいるゲーム関連のイベントの中から「ゲーム論文」、そして新しいイベント「SIGGRAPH DAILIES!」、SIGGRAPHへの投稿に役立つ情報「イングリッシュレビューサービス」について紹介する。



http://www.siggraph.org/s2011/for_attendees/art-gallery

Q: 今年のテーマを「トレーシングホーム」にした理由は?


アートギャラリーでは、 毎年違ったテーマに沿って企画、選考、展示が行われています。今回のテーマ「Tracing Home」は、カンファレンス全体のテーマ「MAKE IT HOME」に沿って決められました。私自身がソーシャルメディアの研究をしているので、インターネットやSNSが普及した現在の「ホーム」という概念について考えてみました。この概念は、移民や多文化、メモリー、ノスタルジアといったことにもつながっており、 イラン系アメリカ人である私自身にとっても、深い意味のあるテーマです。アートギャラリーの委員長は大変忙しい仕事ですが、自分自身が意味を感じることができるテーマに沿って行えたことは、仕事のエネルギーになりました。

Q: 新しい試みは?

今年はギャラリー内で作品毎に設置されている説明のパネルにQRコードを表示し、Webサイトにあるより詳しい説明や、フランス語、日本語など多言語の解説にアクセスできるようにしました。

Q: 人気があった作品は?

「Open House」という作品に興味を持たれた方が多かったようです。これはフロリダで住宅バブル崩壊により空家になっている家を、バンクーバーからインターネットを経由してテレマティックに不法占拠する、という作品です。バンクーバーの会場にあるゲートをくぐると、実際にフロリダにある家のドアが開きます。その様子はカメラを通して会場から見ることができました。フロリダでは会期中、その家でアートパフォーマンスが行われ、ダンサーが登場したり、たくさんの風船を屋根に付けたりしました。その様子がギャラリーでも翌日の映像に反映され、毎日違った体験ができるようになっていました。


「Tele-present Wind」という作品にもたくさんの関心が集まりました。
アーティストの住むミネソタに生えている1本の植物が風で揺れる動きをセンサーでキャプチャし、リアルタイムでギャラリーの植物で再現している作品です。これもテレマティックな要素を使用した作品で、遠くの場所で吹いている風を、ギャラリーの中に伝えます。

大型スクリーンを使用したインタラクティブ作品「The Garden of Error and Decay」も興味深い作品です。これはツイッターでつぶやかれている話題の中で、災害やテロに関する話題を約200パターンのアイコンで表現しています。日や時間によってつぶやかれている話題が異なるのが見て取れます。鑑賞者はジョイスティックで表示されるアイコンを撃つことができ、撃たれたアイコンはその日の株式市場の動向によって消滅したり、倍増したりします。これは私達がインターネット上で災害やテロについて語るとき、よかれと思って行ったことでも、思いがけなく悪い結果に加担してしまうこと、自分の行為とその結果をコントロールできている気がしていても、実はできていないことを暗示しています。

また、12フィートの高さがある大型の風船状のオブジェクトを使った作品、「Moston」も注目を集めました。これはモスクワ出身でボストンに住むアーティストが、2つの都市、文化に住むことをテーマとした作品です。

今回の展示を実際にご覧になれなかった方も、もし秋にバンクーバーに来られることがあれば、6作品を地元のギャラリーで展示することになりましたので、そちらで鑑賞いただけます。また、SIGGRAPH2011のWebサイトにも写真で作品を紹介していますし、学会誌「Leonardo」の特別号でも作品について詳しく読むことができますので、
是非そちらもご覧いただきたいと思います。



http://www.siggraph.org/s2011/for_attendees/emerging-technologies

Q:
全体の印象は?

とても良かったと思います。全ての展示物が無事到着し、一部問題のあったものもありましたが、最終的にすべて動きました。今年はカッコイイものや楽しい感じのものが集まり、選考の時にビデオや写真でみたものより、さらに良いものでした。たとえば、日本から参加した「Poco Poco」のライブパフォーマンスはとてもおもしろかったです。
また、「Surround Haptics」という作品も、論文でどのようなものなのかは理解していましたが、実際に体験して、あらためて驚きを感じました。
「The Virtual Crepe Factory」も楽しかったですね。
「Device-Independent Imaging System for High-Fidelity Colors」も
大変美しく、よかったです。
エマージングテクノロジーは触って体験できるものが多いので、
今回ご来場になれなかった方は、是非来年ロサンゼルスに来てほしいと思います。

Q: 今年の傾向は?

今年はテレプレセンス、タッチインターフェイス、ディスプレイ技術に焦点をあてています。「Face-to-Avatar」など実際の体験とバーチャルな遠隔体験を混ぜ合わせるテレプレセンスの技術、「Fuwa Fuwa」「Touch Interface on Back of the Hand」のようなタッチインターフェイス、そして新しいディスプレイの可能性を見せてくれるディスプレイ、これは2006年に展示されたものの改良版「True 3D Display」などです。
「True 3D Display」はスターウォーズに出てくるような技術を、実際に見ることができ、とてもエキサイティングだと思いました。

フランスのINRIAから出品された「The Virtual Crepe Factory」はハプティクスデバイスを使用したデモンストレーションを行っていました。
これは6自由度のハプティクスデバイスで画面上のフライパンとカップを操作し、クレープを焼くというものでした。
Haptionのジェローム・ペレ氏は、「これはとても楽しいデモンストレーションですが、使用されているデバイスは医療や工業用に応用されるものです。液体シミュレーションGPUで計算しています。参加者の反応はとても良いですね。お互いに競争したり、あとで友達を連れてくる方も多いです。」と言われていました。



http://www.siggraph.org/s2011/for_attendees/game-papers

SIGGRAPHでは、ここ数年、ゲーム関連のイベントの充実に努めている。CoursesやTalksにおける最新のゲーム制作の公開、The Studioにおける実際のゲーム体験、Computer Animation Festivalにおけるオンラインゲームの紹介等、今年も多種多彩なゲーム関連のイベントが開催された。多くのゲーム関係者(ゲームプロダクション、ゲーム関連の研究者、ゲーム好きの方)に参加をしてもらいというスペクトルを広げたSIGGRAPHの思いが見て取れる。

なかでもゲーム関連の研究者が最も注目すべきイベントがGame Papersだ。SIGGRAPH2008までは、Papersだけだったが、2009年から3つになり、従来のPapersはその名をTechnical Papersと変え、新たにGame PapersとArt Papersが新設された。特にGame Papersは、ACM Video Game Symposium 「Sandbox」として、カーネギーメロン大ETC (Entertainment Technology Center) が中心に併催されてきたイベントの成果とも言える。

今年のGame Papersは、67件の応募があり、厳正な査読を経て選ばれた8件の発表を2セッションに分け行われた。昨年は12件であったのに8件となってしまった理由は、委員長のT.L.Taylor女史(IT-Universitetet i København教授)によると、査読結果のスコアの高い論文数が8件だけだったとのことだ。2つのセッションともに、まず発表を全部行い、纏めて会場からの質問に答えるという方式をとり、活発に議論がなされた。発表された8件のゲーム論文の概要を紹介する。

セッション1:  Analyzing Player Behavior and Experience (プレイヤの行動と経験の分析)

テーマ: Evaluating Enjoyment Within Alternate-Reality Games
著者: Andrew Macvean (Heriot-Watt University)ら
スマートフォーンなどを利用したMIXED Reality型ゲーム(AR Game)におけるプレイヤーの楽しみ方に関する検討。従来のビデオゲームのプレー分析方法が適用できないと結論している。

テーマ: Visualizing and Understanding Players' Behavior in Video Games
著者: Dinara Moura (Simon Fraser University) ら
テレビゲームにおけるプレイヤーの行動をより的確に理解するためには、プレイヤーの行動を視覚化することが重要であること、そして多数の視覚化データを分析することが必要であると述べ、そのための解析システムを構築している。

テーマ: Evaluating Gesture-Based Games With Older Adults on a Large-Screen Display
著者: Mark Rice (Institute for Infocomm Research) ら
大画面表示を利用した3つのジェスチャー・ゲーム(サッカー、蚊たたき(日本ではハエたたき)、人間テトリス)を健康な高年齢層に体験してもらい、ジェスチャーベースのゲームの評価を行っている。

テーマ: The Impact of Negative Game Reviews and User Comments on Player Experience
著者: Ian Livingston (University of Saskatchewan) ら
ゲームの開始前に、否定的なゲームレビューを聞いた場合、肯定的なレビューを聞いた場合、何も聞かなかった場合でのプレイヤーのゲームの楽しみへの影響に関する検討の試み。本論文では、各種エンターテイメントのレビューがあるWebページmetacritic: http://www.metacritic.com/gamesのGAMESの項を利用している。

セッション2:  Players and Game Worlds(プレイヤーとゲームの世界)

テーマ: All in a Day's Work: A Study of World of Warcraft NPCs Comparing Gender to Professions
著者: Kelly Bergstrom (York University) ら
有名なオンラインゲーム(World of Warcraft: http://ja.wow.wikia.com/wiki/World_of_Warcraft)におけるプレイヤーの分析(男性、女性、職業別)に関する検討。

テーマ: Designing Stories: Narrative Practices in 3D Computer Games
著者: Teun Dubbelman (Universiteit Utrecht) ら
ゲーム理論、映画理論、演劇理論からの、ストーリー性のある3DCGコンピュータゲームの制作に関する報告。

テーマ: Beyond Player Types: Gaming Achievement Goals
著者: Carrie Heeter (Michigan State University) ら
全米大学の618名に対して、オンラインアンケートにより、ゲームに関する関心度について調査した結果の報告。

テーマ: Modeling Play: Re-Casting Expertise in MMOGs
著者: Nicholas Taylor (York University) ら
大規模なマルチプレイヤーオンラインゲーム(MMOG)に関する専門知識の定性分析による定量化可能なモデルの提案。

以上のように8件の論文は、おもにゲームプレイヤーの心理的な解析の分野にかたより、ゲーム制作そのものの新規性を問う論文がなく研究者には不満の残る発表ではあった。来年は昨年並みに少なくとも12件の論文が通過し、新たなゲーム制作、プラットホームなど幅広いエンジニアサイドの研究者も満足する発表となることを望む。

なお、このレポートは極めて簡単な紹介なので、関心のある方は、ぜひ全ページが掲載されているFull Conference DVD-ROMを参照してほしい。



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