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Vol.28 学生のためのCEDEC「ゲームのお仕事 業界研究フェア」をレポートVol.2

女性がゲーム業界で働くということ

『女性向けゲームのお仕事』では、株式会社コーエー ネットワーク事業部 オンラインサービス部の塚口綾子氏が、同社女性向けゲームのネオロマンスシリーズの特徴やワークフローを紹介した。塚口氏は、「遙かなる時空の中で」や「金色のコルダ」のメイン企画を担当してきた。作品への愛情やこだわり、マスターアップ直前にセリフのノイズチェックを全て1人でやらざるを得なくなった際の苦労話、入社数年目の経験不足の身で声優に駄目出しした際の「吐きそうだった」プレッシャー、などなど、これまで自らが経験してきた仕事の苦楽を語る塚口氏の話は非常に興味深く、魅力に溢れていた。受講していた多くの女子学生たちにも塚口氏の熱意が伝わったようで、真剣に耳を傾けていた。

「11年前に「遙かなる時空の中で」の企画をスタートした頃、ネオロマンスシリーズは「コーエーのゲームの棚」に置かれていた。「信長の野望」などの渋い男性キャラのパッケージに混じって、ネオロマンスシリーズのピンク色のパッケージが置かれている様子は、とても違和感があった。自分の目標は、ゲームショップに「女性向けゲームの棚」を作ることだった。その目標は達成できたので、個人的には充実した11年間だった」と語った。

    

さらに塚口氏は、女性がゲーム業界で働くことについても言及した。
塚口氏がコーエーに入社したのは10年以上前だが、その時の同期55人のうち、女性は8人だけだったそうだ。当時のコーエーは女性の数が現在よりも少なく、他に人がいないという理由で、塚口氏は入社2年目でネオロマンスシリーズのメイン企画に抜擢されてしまった。
男社会のゲーム業界で女性が働くのは、苦労やプレッシャーが尽きなかったようだが、塚口氏は自分のやりたいことを理解してくれるプロデューサーやディレクターを増やしていき、着実に足場を固めることで「女性のメイン企画は残らない(離職する)」という同社のジンクスを打ち破った。そんな努力が実り、今ではネオロマンスシリーズのファンが入社してくるようになり、女性も職場に定着する時代になった。
「ファンの延長でゲーム制作者になると敬遠されがちだが、冷静な判断ができるなら大丈夫。特定のキャラクタだけに執着するのではなく、すべてのキャラクタのセリフを書けることが求められる。いかに自分がニュートラルになれるか、結局は本人次第」と、ファンが制作者になることについても語った。
「女性に対する偏見がないとはいわない。偏見をどう受け止めるかも本人次第。笑って受け流せるようになれば、相手が可愛く見えてくる」と語り、気持ち次第で状況を変えられることを示唆した。さらに塚口氏は夫婦共働きのため、すれ違いになりがちな自身の家庭を紹介し「がむしゃらに働くのではなく、いかにゆるく仕事と付き合い、タイムマネージメントをするかが、業界の今後の課題になってくると思う。自分の生活を切り崩すような働き方では、良いものは作れない」と語り、講演を締めくくった。(下の画像は、塚口氏の講演のスライド)

ゲームやCG制作を教える大学や専門学校に行くと、最近は女性を目にする機会が多い。しかし、制作現場はまだまだ男性の方が多数派だ。塚口氏のような先人が、今回のように自身の経験を語ってくれる場が増えれば、後に続こうとする女性たちの大きな励みになるだろうと感じた。




ゲームプランナーになるためには

『ゲームプランナーのお仕事「ゲームプランナー入門〜夢や憧れを目標に変える時〜」』では、GunGurion Artworksの下田賢佑氏が、ゲームプランナーの仕事内容や、学習法、キャリアパスについて紹介した。
下田氏はスクウェア・エニックスとコーエーで開発に携った後に独立し、現在はゲームデザインやゲーム開発コンサルタントを行っている。
下田氏は、ゲームプランナーの仕事を「おもにゲームデザインを担当し、たまに企画書も書く人」と定義して、話を始めた。さらに「ゲームデザインとは、プレイヤーが触れることのできる、あらゆるインタラクティブ要素をデザインすることで、ゲームはミクロなデザインを積み上げていくことで創られる」と解説した。

下田氏はゲームプランナーが自分のイメージを短時間で効率的に具現化するためのツールとして、スクリプトの重要性を紹介した。さらにシナリオライターやレベルデザイナーにも言及した。「シナリオライターの仕事は、設定上のNG項目の周知など、周囲との調整が重要になる。また、ゲームシナリオはインタラクティブ性が強いので、小説とは異なる。読ませる、見せるものではなく、体験させるものだ。5W2Hなどの情報提供が必要で、情報デザインの世界に近い」「レベルデザイナーの仕事は、マップを作り、マップ上の全てのプレイに責任を持つことだ」など、それぞれの仕事内容について、具体的に紹介した。(下の画像は、下田氏の講演のスライド)

    

また、ゲームプランナーの学習法として、下田氏はMODの活用を提案した。MODは既存ゲームのコンテンツを改変できる、簡易拡張パックだ。MODを用いて、既存ゲームのバランスやオブジェクトを少しずつ変更していくことで、「逆回し」にゲームプランナーの仕事を学習することができる。「完成されたゲームを扱うので、ゲームに必要なデータを総覧することができる。また、簡単な事から始めるので、最初で挫折しない」と、この学習法のメリットを解説した。
ゲームプランナー志望者が提出を求められる事の多い企画書については、「就職活動用の企画書は、採用するためではなく、落とすためにある。本当に使える企画書なんて求められていない」と断言した。けれど、見るべきところは見られている。そもそも企画書になっていないものや、読み手のことを全く考えていないものは落とされる。反対に、良いものはちゃんと評価される。絵、写真、図などが多く、文章説明に頼らない、ゲームプレイヤーの物語を想像させるのが良い企画書だ、と語った。さらにお勧めの企画書の書き方として「企画書をマンガで描いてしまう」ことを勧めた。

最後に下田氏は、「面接で落ちても、自分が否定されたと思う必要はない。新卒採用が全滅でも、落ち込まなくて良い。未経験の新卒を採用することは、企業にとって割に合わない。代わりに、企業はアルバイトでの採用を望んでいる。現場は猫の手でも借りたいぐらい忙しいので、アルバイトなら未経験でも入れる職場は必ずある。まずはアルバイトからキャリアパスをスタートさせれば良い」と正規採用以外の可能性も示唆して、セッションを締めくくった。

ゲームプランナーに憧れる学生は多いと聞くが、それがどんな仕事で、どんな学習が効果的で、どうやったらなれるのかについて、具体的に把握できている学生は多くないだろう。グラフィックデザイナーやプログラマーと比較すると、ゲームプランナーについて書かれた本やWebサイトは非常に少ない。そんな状況下での下田氏の講演は、ゲームプランナーに興味を持つ学生にとって、とても良い情報提供の場になったようだ。

3日間を通して「ゲームのお仕事 業界研究フェア」に参加したが、会場は常に、CEDEC本体に負けない熱気に溢れていた。ゲーム業界の魅力を紹介し、より多くの有望な学生を取り込むことで業界を活性化したいという熱意が、多くの講演者から伝わってきた。
実際にゲーム制作に携っている講演者たちの話はどれも説得力があり、自分たちの仕事に誇りを持っていることがわかった。そういう多数の「生の声」に、学生が直に触れることは、彼らにとても良い刺激を与えてくれたのではないだろうか。今回の試みは、ゲーム業界と、業界を目指す学生に、非常に貴重で有意義な場を提供できたと考えて間違いないだろう。ぜひ、来年も開催されることを期待したい。

取材:尾形美幸
文:尾形美幸
写真:千葉惠子・尾形美幸・近藤聖子