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Vol.28 学生のためのCEDEC「ゲームのお仕事 業界研究フェア」をレポートVol.2

前回のディジタル最前線に引き続き、「ゲームのお仕事 業界研究フェア」をレポートする。今回は3日間の講演のなかから、5個のセッションをピックアップして紹介する。

 
ゲームに関わる仕事は多種多様

初日の基調講演『ゲームのお仕事』では、株式会社モバイル&ゲームスタジオ 取締役会長の遠藤雅伸氏が、ゲームに関わる多様な仕事を紹介した。長年ゲーム開発に携わってきた遠藤氏は、ゲーム開発者と経営者、両方の視点を有している。また、東京大学やヒューマンアカデミーなどで講師も務めているため、指導者の視点も有している。

遠藤氏は、ゲームデザイン、プログラム、グラフィックス、サウンドといった、比較的学生にもなじみのある仕事だけに留まらず、チューニング、デバッグ、マーケットリサーチ、知的所有権管理、ゲーム販売店、ネットワークサービス管理、ゲーム雑誌制作、海外ローカライズなど、多種多様な仕事を紹介した。「たとえばグラフィックデザイナーの場合、自分の好きな絵だけを描いている人は、いつまでたっても給料が上がらない。いろんなことに興味を持ち、より付加価値のある仕事をこなした方が、成長できる」と語り、自分の仕事に直結する分野だけでなく、幅広い分野にチャンネルを開くことの重要性を強調した。

具体例を上げながら、詳細かつ明快に解説していく遠藤氏の話に、開始早々の講演とあって、やや緊張した面持ちの学生たちは熱心に聞き入っていた。講演は、ゲーム業界がどのような職業の人たちによって支えられているのかが総覧できる内容で、ゲーム業界に就職したいが、具体的に何の仕事を目指すべきか決めかねている学生には、非常に参考になる内容だと感じた。最後に遠藤氏は「ゲーム制作は、憧れだけでできる仕事ではない。ゲームのことだけ知っていれば良いというわけでもない。広く深い、いろんな知識が必要だ」と語り、憧れだけでは夢を実現できない現実を強調して、講演を締めくくった。

 
ゲームプログラマーはおもしろい

『プログラムのお仕事「ゲームプログラマーへの道」』では、株式会社ヘキサドライブ 代表取締役の松下正和氏と、同社取締役の齊藤康幸氏が、ゲームプログラムの魅力について語った。ヘキサドライブはプログラマーだけで構成されている会社で、プロジェクト毎に社外の他分野の専門家と協力して仕事を進めているそうだ。

齊藤氏は「企画、サウンド、デザイナーが制作した素材を組み合わせ、最終的にゲームの形に仕上げるのがプログラマーの仕事だ」と語った。さらに、プログラマーは、企画立案、制作、調整、バグチェックと、制作工程の最初から最後に至るまで必要とされるため、各セクションとのやり取りが最も多く、負荷も高い。しかし、責任が重いぶん、貢献度や満足感は高く、自分がこのゲームを支えている、という実感が持てる。また、AI、ネットワーク、物理シミュレーションなど、研究すべきジャンルは多数あり、能力の高い人はどんどん新しいことにチャレンジできると説明し、プログラマーの魅力を紹介した。松下氏は「仕事の負荷を軽減し、各セクションとのやり取りをスムーズに行い、良い仕事をするためには、コミュニケーションが非常に大切」と補足した。

齊藤氏は、未経験の学生がプログラムを学ぶ際の方法も、具体的に紹介した。プログラムをやってみたい人は、C++から始めるのが良い。まずは、自分に合う本を探して勉強し、次にVisual Studio Express Editionや、DirectX SDKといった無料環境を整え、実際にプログラムを組んでみる。最初はサンプルの改造で良い、といった具合に、順を追って一連のステップが丁寧に説明された。「プログラムを組んでみて、楽しいと思えるかどうかは、今後プログラマーを目指す上で非常に重要」という松下氏のアドバイスが印象的だった。

最後に齊藤氏は「勉強する時間も、遊ぶ時間も、社会人になると限られてしまう。時間のある学生のうちに、しっかり経験しておいて欲しい」と話した。どんなに勉強ができても、礼儀や常識を身に付けていない人は就職できない。ゲーム制作は共同作業なので、常識の有無が重視される。さらに、これだけは他人に負けないといえる、自分なりの武器も身に付けて欲しい。ライバルを意識し、個性を磨き、実績をつくり、選ばれる人になって欲しい、と付け加え講演を締めくくった。
会場は満員で、100人以上の学生がつめかけていた。ゲーム、映像業界では、プログラマーが慢性的に不足しているという話をあちこちで耳にするが、プログラマーに興味を持つ学生が非常に多いことがわかり、頼もしく感じた。今回の受講者のなかから、将来ゲーム業界で活躍するプログラマーが育ってくれることを期待したい。

 
就活成功の鍵は、自分に合った会syあを考え、探すこと

2日目の基調講演『How to 就活 for ゲーム業界』では、株式会社CRI・ミドルウェア 取締役総務部門管掌の古川憲司氏が、ゲーム業界に就職するための方法を語った。CRI・ミドルウェアは、ゲーム業界とIT業界の中間に位地する研究開発系ベンチャー企業で、各種ミドルウェアの開発や販売、サポートを行っている。ゲーム業界、IT業界で長年人事や採用に携ってきた古川氏の話は非常に説得力があり、多くの学生が熱心にメモをとっていた。

最初に古川氏は「ゲームで遊ぶことと、ゲームを創ることは『別』」だと話し、ゲームが好きだという気持ちだけでは、ゲーム業界への就職は難しいことを強調した。さらに「趣味までゲームだと逃場がなくなるので、趣味は別にあった方が良い。といっても、ゲームに全く興味がない人には、ゲーム業界に来て欲しくない」と語った。
古川氏は、パブリッシャーとディベロッパーの違い、ゲーム業界とIT業界の仕事や勤務内容の違いなどを説明し、「就職テクニック以前に、まずは業界や会社をよくよく調べて、自分に合う仕事を探すことが大切」と語った。
講演の後半は、具体的な採用の話に及んだ。「ゲーム業界に就職したいなら、得意分野を持っている人が強い。業界は満遍なく優秀な人ではなく、とんがった人、面白い人、変わった人を採用したがっている。自分の考えや意見を持っていて、それを表現できる人、それでいて他人の考えにも、ちゃんと耳を傾けられる人が良い」と、人事の本音を織り交ぜつつテンポよく解説した。さらに「面接では志望動機が最重要。自分が何をやってきて、何ができて、何をやりたいか、自己のPRを簡潔にいえるようにすべき」「自分に合った会社を考え、それを探せば就活に成功する」と語った。

重要なのは就職テクニックではなく、自分が何をやりたいのか把握することだという古川氏の言葉に、多くの学生が頷いていた。自分のやりたいことが把握できれば、自分が何を学ぶ必要があるかも、自ずとわかってくるだろう。その上で、やりたいことを実現できるベストの会社を探す。そのための努力を惜しまない。それが就活成功の鍵なのだろう。