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Vol.26 SIGGRAPH2009にみる日本人の活躍を追う!CGとインタラクティブ技術の祭典SIGGRAPHとは?



世界の最先端研究に触れる論文発表

世界の研究者が注目するのは最先端の研究動向がわかるテクニカルペーパー(論文発表)だ。
審査委員長であるトム・ファンクハウダー氏によると、今回発表された論文は、応募されたすべての論文のうち約2割の78本が採択され、19のセッションに分かれて発表された。レンダリング、イメージジング、アニメーションなどさまざまな領域を研究対象としてカバーしているという。

今回から「技術論文」に加えて「ゲーム論文」と「アート論文」のカテゴリが生まれた。
ゲーム論文は、昨年まで開催されていたゲームの研究開発者向けの「Sandbox Symposium」を統合したもので、選出された論文は20件で、5つのセションで発表された。
日本からは「Interactive Simulation of Flying Japanese Kites」静岡大学 岡本太一氏/奈良先端科学技術大学院大学 藤原誠氏/静岡大学三浦憲二郎氏が発表している。論文集は「Sandbox 2009: ACM SIGGRAPH Video Game Proceedings」として出版されるので参照できる。

「アート論文」は、SIGGRAPHのアート展示の公募作品と同じテーマ「BioLogic」で募集され、選出された論文は7本で、2つのセッションで発表された。
日本からは「A New System to Appreciate the Visual Characteristics of a Painting」DNPデジタルコム宮下勉氏が発表している。論文集は、「Leonardo/The Journal of the International Society of the Arts, Sciences and Technology」の増刊として出版されているので必見だ。

SIGGRAPHで何を教授し発散するのか

デザイナー、アーティスト、プログラマー、開発者、研究者、教育者、学生とさまざまな人々が各々の目的で集うSIGGRAPH。アート、デザイン、エンターテインメント、サイエンス、サウンドとその活用分野は多岐に渡り、CGに関わるこれらの創造者たちが一堂に会す場は他に類を見ない。そして、これほどお互いに刺激し合える場もないのではないか。この場に参加することで何を感じ、何を糧とするのか?それぞれの立場で得るものは違うのであろう。

出会いの機会は、SIGGRAPHの会場だけでなく連日開催されるレセプションでも得ることができる。レセプションは、SIGGRAPH全体や各プログラムによって開催されるものをはじめ、各国ローカルチャプター(地域部会)やプロダクションや企業が独自に主催するものもあり、軽食と飲み物を楽しみながら出会いの機会を得られる。



日本からも多くの研究者やアーティストが参加している。SIGGRAPH2005でCoons賞を受賞した東京大学大学院西田友是教授をはじめCG-ARTS協会のカリキュラム制作にも関わっていただいている第一線の研究者の方々や、世界的なCGアーティスト河口洋一郎氏らに会える。また、デジタルドメインやILM、ディズニーなど海外のプロダクションで働く日本人にも会える。


また、エキシビジョン(機器展示)の横には「Job Fair」というリクルートの場が設けられ、ルーカスフィルムや、ブルースカイスタジオ、ソニーピクチャーエンターテインメント、アップルやインテルなど28社がブースを構えていた。世界的な経済危機のなか、映像産業界では新たな戦力を常に捜し求めているのだ。



現存する大手GCプロダクションでは最長の歴史を持つスタジオの一つであり、過去2回アカデミー特撮賞を受賞しているリズムアンドヒューズ社から、最先端研究の情報収集のために毎年参加している加藤俊明氏にSIGGRAPHの魅力と参加する意義などを伺った。

加藤氏は、リズムアンドヒューズ社において、レンダラーの自社開発を17年前から行っており、現在稼働中のシステムだけではなく、次世代のシステムの先行開発も含めて、基本設計及びコア部分に関する実装を全て担当している。映画のクレジットにこそ登場しないが、リズムアンドヒューズが手がけるほぼ全ての仕事に深く関係する縁の下の力持ち、なくてはならない存在の人物だ。

SIGGRAPHに参加している目的として、「各プロダクションの自前レンダラー開発担当者との最新情報の交換ができること」「商業レンダラーの最新情報の取得」「映画制作用レンダラーの性能を劇的に改善できるような新しい技術の調査」の3つを挙げ、論文発表を中心に参加していると話してくれた。
また、この分野を目指す方々に向けて「この業界で働きたいと考えている人にとっては最大の情報収集の場所だと思います。こちらのプロダクションの最前線でもかなりの数の日本人が働いていますが、SIGGRAPHではその人たちから最新の仕事に関しての話がオフラインで直接聞ける可能性が高い。実は、私もアメリカで働くきっかけは、89年のSIGGRAPHで自分の映像作品をシアターに出したのが最初でした。それ以降爆発的にアメリカでのネットワークができましたから。」と語り、まずは参加して自分の目でみて、体験して、ネットワークを広げることだとメッセージをくれた。

世界中に類のない、アートからサイエンス、基礎研究からビジネス、学生から研究者が集まり意見を交換し影響しあう場。CGを先駆するプロダクションのアーティストや先端技術の開発者と出会えるSIGGRAPHに参加することを、この分野を目指す方にお薦めしたい。

取材:篠原たかこ・細川麻沙美・宮井あゆみ
文:篠原たかこ
写真:篠原たかこ・細川麻沙美

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