編集長インタビュー

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編集委員長 藤代 一成教授(東北大学流体科学研究所 教授)
このテキストの制作上のコンセプトは?

ご存知の通り、コンピュータグラフィックス(以下CG)は非常に進展の早い分野ですが、この本はこの分野における基礎的な技術から最新の理論・技法までを網羅したテキストをつくろうということで企画されました。このテキスト一冊を勉強していただければ最新CGの全貌がわかる、ということを目指して編集されています。


テキストとしてのポイントは?

最新の事柄まで必要なことをカバーしつつ、それらをコンパクトにまとめたテキストということですね。従来の本では新しく登場してきた概念として簡単にしかふれられていなかったような内容も、アルゴリズムレベルからきちんと説明しています。最新のソフトウェア、ハードウェアの説明だけでなく、電子透かし、詳細度制御、平滑化など新しい時代のキーワードも説明しています。


今まで説明されてこなかった新しい事例の説明が載っているということですが、具体的にどんな内容が掲載されていますか?

たとえばモデリングの章ではポリゴン曲面。アルゴリズムも含めて相応なページ数を費やして書かれています。レンダリングの章ではフォトンマップ法などもそうですね。フォトンマップ法は、これからもっと普及していくはずで、それを見越した記述になっています。他にもイメージベーストレンダリング、ノンフォトリアリスティックレンダリング、ビジュアライゼーション(可視化)などを扱う第7章「視覚に訴えるグラフィックス」では、新しいCGの流れをうまくまとめられたと考えています。


編集上で注意した点はありますか?

全編フルカラー、多くの図版、傍注の効果的な活用のほかに、表現の精確性ということがあります。一例をあげれば、レンダリングの主要な手法にレイトレーシングとラジオシティというものがあります。レイトレーシングの基礎になっているのは「光学」における光の放射量で、ラジオシティで扱っているのは「照明工学」における測光量なんです。今までのCGの本と言うのは、この二つを区別なく書いていたものが多いんですね。この本では両分野の用語の対比もきちんと表(テキスト156ページに掲載)でまとめて違いが見通せるようにしています。ここまで徹底している本は、私が知る限りではこれが初めてで、ある意味この表だけでも目を通す価値があると思っています。


想定されているこの本の読者はどんな方々ですか?

まずビジュアルエンジニアを目指されてる方ですね。最新の技法も含めて、CGの理論やシステムを効果的に習得する際に役立つ本になっていると思っています。またコンテンツクリエイターの方にとっては、ご自分のイメージやアイディアを映像化する技法にどのようなものがあるかが網羅されていますので、事典としての使い方もできるのではないかと思っています。他にも、教育者の方、研究者の卵としてスタートされたような方など、幅広い方々に参考にしていただけるものと考えています。


学生の方だけでなく実務に携わる方も利用できますか?

実務に携わっている方々は、ご自分が日ごろから利用されている技法の詳細をなかなか勉強する機会がないと思うんですよ。この本はわかりやすい語り口で、アルゴリズムが誕生してきた背景、アルゴリズムの一番肝心なところ、関連する数式を掲載しています。まずこれを突破口としてより深く勉強されれば、より効果的な技法の使い方というものがご自分の新しい武器となり、短時間で効果的な絵を作っていかなければならないという状況にも対応できるのではないかと思います。


最後に一言コメントをお願いします。

実際にページをめくっていただければわかりますけれども、この本にはSIGGRAPH等で発表された最新の事例ももちろん含んでいますし、それにまさるとも劣らない日本発の力作もたくさん収蔵されています。私はこの本を最新CGを俯瞰できる標準テキストとして皆さんに推薦したいと思っています。